Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


一匹狼の女 【 短編小説 】


私は独り。ずっと独りで生きてきた。
周りの大人や女子に縛られず…独りでね。

孤独…? そんなの感じた事ないわ。
だって、私は「 生まれながらの生涯孤独… 」ですものね。

孤独…なんて感情…、忘れてしまったわ。

********

キーンコーンカーンコーン♪

今日もいつも通りチャイムが鳴り響く。
それと同時に行動する女子や男子達。
私は少しだけ遅れて、行動を始める──。

次は昼ごはんの時間…
女子は一つのグループに集まり、食事をする。

だが、私は違う…。
一人で屋上に向かい、一人で食事をする。

この現状…私はちっとも嫌じゃなかった。
嫌がる女子がほとんどなのだろうけど、私は嫌じゃない。

…ガチャ

いつも通りの風、いつも通りの風景を眺めながら屋上のベンチに腰を下ろす。

だが、そんな時だった──

「 アハハハッ!! 楽勝すぎて笑いが止まらないっ!! 」

「 ねー!! はみごってこんな楽しかったっけぇ? 」

女子5人組みぐらいの前2人が楽しそうに話している。
まあ、会話の内容は非常にグロテスクなものだけど。

そんな5人組の後ろのほうに目をやると、
案の定、一人でお弁当を手に棒立ちしている子の姿が…。

髪は胸くらいまでのロングで、真っ黒の髪。
綺麗な髪が羨ましくて皆、嫉妬したのかな…?
身長も高めだし、スラッとしてるし、いじめられる要素とかどこにも…ない。

名前なんて言ったっけ…。
たしか…笹本夕香、だったっかしら。

「 …グスッ 」

笹本さんは鼻をならしながら近くの椅子に腰を下ろす。
一人で弁当を開き、口に運ぶ。

私は立ち上がり、彼女のほうへ足を運んだ。
私を不思議そうな目で見上げる。

「 …何? 」

首を傾げながら、尋ねる。

私は腕を組み、

「 あのままでいいの? 」

と、尋ねながら顎であの5人組を示した。
だが、笹本さんはニコッと笑顔を作りながら、

「 別に…いいんだ。前からはみられてるのは知ってたし…。 」

と、答えた。
そして、また寂しそうにおかずを口に運ぶ。

こんな私にだって見える…。
彼女の孤独、辛さ、寂しさ、悲しさが…。

「 どうして… 」

「 え? 」

「 どうしてあなたは、あんな人達についていこうと思うの? 別に独りでいいじゃない。 」

彼女の姿を見ていて、つい出た発言。
私の口から出たとは自分でも考えづらい言葉だった。

だが、笹本さんは、

「 …ありがとうね。 」

と言っただけでその後は何も言わなかった。
彼女の微かに濡れている頬を見つめながら、思う。

つくづく独りがいいんだ…と。
愛情なんて所詮こんなものなのかと。

彼女の寂しさは痛いほど伝わる。
こんな想いするくらいなら…独りのほうがいいじゃない。
彼女の考えてることがまったく理解できないわ。

私は彼女の”ありがとう”という言葉に、

「 …いえ、私は何もしてないわ。 」

と答え、その場を去っていった。
私が去った後、ゆっくり屋上に耳を澄ますと、泣き声が聞えた。

そこまでして欲しいのか…あの子達との友情が…。
そこまでして手に入れなければならないのか…友情という物を…。

彼女の鳴き声を耳に入れながら、教室に戻っていった。

*******

…ガラッ

教室に入ると、そこにはあの5人組みの女子がいた。
大きな声で話している…。

「 キャハハッ!! アイツの顔マジ傑作だったわー!! 」

グループのリーダー的存在、岸本七海が笑いながらそう言う。
それに釣られるかのようにして、笑うグループの女子。

そして、もう一人は腹を抱えながら、

「 あー、ヤバイ!! 七海のやり方がグロすぎてヤバイー!! 」

と、言っている。
見ていてつい吹き出してしまいそうになる。

そして、

…ガラッ

笹本さんが食事を終え、帰って来た。
頬には泣いた跡が残っており、目は腫れている。
こんな姿で戻ってきたらまた笑われるだけなのに…。

案の定、リーダーの岸本がガタッと音を鳴らしながら立ち上がり、
笹本さんの前に両腕を組みながら立った。

「 あっれぇー? 夕香…泣いたのぉっ!? 」

わざとらしく、少しニヤついたような顔で言う。
その声は教室中に響き渡る。

そんな声を聞いて、笑う奴も居れば、何もできなく、目を逸らしている奴もいる。
見ていて腹が立つ。

ガタッと椅子を鳴らし、立ち上がった。
周りの視線が私のほうへ向く。

…だが、私はそんなの気にせず岸本の前に立つ。

「 …な、何? 」

一歩引きながらも、私を睨み、威嚇する岸本。

そして、睨み返しながら、

「 …そんな事して楽しいの? 」

「 え 」

「 ああやって笹本さんの反応に笑い転げてるみたいだけど… 」

フンッと顎を高く挙げ、岸本を見下しながら、

「 アンタ達の行為、反応のほうがよっぽど笑い物よ。 」

といった。すると岸本達は顔を真っ赤にさせながらサルのように騒ぎ出した。
だが、騒ぐ言葉も全て同じ。「 はぁ!? 」「 ふざけんな!! 」とかばかり。
見ていて本当に笑ってしまう。

「 私達に皆賛成なのよ!!! 」

と、偉そうな態度で言う。
だが、私はもう知っている…

「 周りを見なさい。 」

岸本が周りに目をやった瞬間…
彼女の体は凍てついた。

彼女の無残な姿を見ながらクスクス笑う生徒達。
その姿は、誰も別々の行動などしていない。全員、岸本グループを笑っている。

…というか、ずっと溜まってたものがやっと出せたというような雰囲気だ。

「 …何よ!! 」

そう言ってグループが出て行く。

そして…、笹本さんが私を見てこう呟いた。

「 ありがとう… 」

「 !! 」

そんな姿を見たら、友情や愛情は良いものなのかもしれないと思えたのだった。

END

アバター
2013/09/08 19:38
友情ですねー


ずばずば言える人ってかっこいいですよね
アバター
2013/09/07 20:46
すっきりするねー
こういうの好きだ!
ついつい脳内ドラマ再生しちゃったw
アバター
2013/09/06 22:15
友情物語って素敵ですよね!!

ところで、aichaさんは、この物語に出てくる笹本さんの名前をどうして「夕香」という名前に
したのですか?気になる理由は聞けないんですけど・・・でも、かわいい名前ですよね。



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