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■近代文藝之研究|講話|英國劇と道徳問題(2)

■近代文藝之研究|講話|英國劇と道徳問題 (2)

それで茲にお話しまするのは、二ツとも先づ喜劇といつて宜い、で然もイブセン式である所が、英吉利劇の面白味のある所であります。加之こゝにお話する二ツの劇は道徳問題を中心にして居るものとはいへ、自から異つた反對の道徳觀念を現はして居ります、一は其道徳問題の解決の工合が寧ろ快樂派的であるし、一は其解決が道徳的である、即ち尤も對照するに趣味のある二つの劇であると思ひます。それで一つの劇は、兩三年前に倫敦のへーマーケット座で演つて非常の喝采を搏したもので、外題は「カズン・ケート」(従姉のケート)といひます。作者は當時英吉利の若手の劇作者として賣出した一人でデーヴヰスといふ人であります。
で此劇は都合三幕で成立つて居りますが、其筋の大略を申しますと、序幕がアミーといふ若い女の家の體であります、で此アミーの父は既に彼女が幼き時に亡き人となりまして、現在は母と弟と自身との三人暮しの家であります。それで此幕でアミーといふ女の性格が現はしてあります。



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*註1:茲に
「茲」の俗字体(か?)。Unicode にも文字種がないようなので作字してみた。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/koko.jpg

*註2:所が・ある所
「所」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tokoro.jpg

*註3:加之
訓みは「しかのみならず」。

*註4:道徳
「道」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
「徳」の旧字体。「心」の上に「一」が入る。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/toku.jpg

*註5:兩三年前
「前」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/zen_mae.jpg

*註6:喝采
「喝」の旧字体。旁が「曷」。
「采」の正字体。「爪」+「木」。

*註7:作者・劇作者
「者」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/mono.jpg

*註8:「カズン・ケート」(従姉のケート)
原本には『「カズン・ケート」(姪のケート)』とあるが誤植と思われるので改めた。

*註9:デーヴヰス
ユベール・ヘンリー・デイヴィス(Hubert Henry Davies/1869年~1917年)のこと。イギリスの劇作家。
なお「時評」の「演劇の第二種第三種(5)」では「デヴヰ[#「ヰ」は拗音小文字表記]ース」となっている。

*註10:都合
「都」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/to_miyako.jpg

*註11:アミーの父
「父」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hu_chichi.jpg

*註12:既に
「既」の正字体。「白」+「ヒ」+「旡」。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sudeni.jpg

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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1




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