Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


雨降る夕方に… 【 短編小説 】

雨に打たれて帰った今日。

晴れて、真っ赤に夕日が染まっていく大地。
雨に涙を隠しながら歩いて帰ったあの帰り道が、嘘のようです。

*******

「 大丈夫だから。 」

君が笑って言う。
「 大丈夫 」というのは、大きな資料を運ぶ事。
私が日直だから、運ぶと言っているのに、聞いてくれない。
「 私が運ぶ 」と言っても、帰ってくるのは「 大丈夫 」の一言だけだ。

だが、すごく心配なのだ。
彼はすごく細くて、小柄だから…。
絶対、分けて持っていったほうがいいと思う…。

「 やっぱ持つ… 」

「 じゃあ、代わりに黒板消しといてよ。それならいいでしょ? 」

そう言って、優しく微笑む君。
その笑顔にまた心が一歩、動かされる──。

重そうに資料を持つ彼の背中を、ジィッと見つめる。
案外たくましくて、大きな背中は私に向いていた。

いつか…いつか背中じゃなくて…顔を向けてほしい。

顔を赤らめながら、そう思った。

「 美菜~、何してるの? 」

ニコッとしながら近づいて来たのは、立花菫。
私の親友で、学校では一緒に行動している女の子。
私と同じくらい小柄で、優秀。明るくて楽しい子。

「 黒板、消そうかなって思ってさ。 」

そう呟きながら、黒板消しを手に取る。

すると、

「 …あっ 」

もう一つの黒板消しが宙に浮いた。
そして、それはある女の子の手の中にあった。

それは、

「 香澄… 」

京野香澄。美人で笑顔が可愛く、スポーツも万能な優秀女子。
誰にでも優しくて、私にだっていい笑顔を向けて助けてくれる。

そんな女の子が今黒板消しを手にとって、こちらに笑顔を向けている。
そして、颯爽と黒板を消していく…

私はスッと手を伸べ、

「 いいよ、やるから!! 」

と、言ったが彼女は微笑んだまま、「 いいよいいよ 」と返した。
こんな優しさに溢れた笑顔…男だったらイチコロだろうなぁ。
そんなことを考えてしまう。

彼女が女子と話してるとこを見ると、そう思ってしまう。
高くて、可愛い女の子らしい声。私みたいな声とは大違い。

歌だってあの子のほうが上手い。
スポーツだってあの子のほうが、上手い。
勉強だって、あの子のほうがいい。
顔だって、あの子のほうが、断然上。
器用さだって、人間関係だって、きっと…

男だって、あの子のほうが…

「 ──ちゃん? …美菜ちゃんっ? 」

「 へっ? 」

香澄は私の顔を覗き込むようにして、見ている。
それに驚き、一歩引き下がる私を見て、笑いながら、

「 消し終わったよ。 」

と、言った。
その笑顔がまた胸に突き刺さる。

私は苦笑いで、

「 ありがと、お疲れ様…。 」

と、お辞儀をした。
それに返すように、片手を激しく振りながら、

「 いいよ、いいよ。 じゃあねっ 」

と、言ってその場を去っていった。
彼女が行った先は、仲のいい女子軍団の中。
その中でも彼女は優しいほうで、別にケバケバしているワケでもない。
誰にだって、差別する事なく話すし、笑顔だって配る。

あの中で、一番話しやすい子…。
私みたいな、地味な女にだって笑顔を絶やさず向けてくれる。

いつも最高の笑顔で「 美菜ちゃん 」って呼んでくれる。
私はそれにいつだって苦笑いでしか返せない。

…当たり前、仕方がないのだ。
だって、彼女は私の──

「 あ、日向ー!!! 」

恋敵なのだから。

「 ? 呼んだ? 」

資料を運び終わった、日向翔が帰ってきた。
帰ってきたら、ありがとうって言うつもりだったのに…あれじゃ無理だな。

日向ってば、照れたような顔で香澄のとこに行っちゃって…
私のほうなんて見向きもしてくれない。
その笑顔…私には絶対見せないもんね。

「 日向ってばさー、面白いんだよ!!昨日LINEでさー 」

「 オイ、それは… 」

からかうように発言する香澄に対し、恥ずかしそうに発言を隠す日向。
なんだかその姿は、カップルのように見えて嫌になった。

「 …っ 」

私は目を伏せ、教室を出た。
その後ろからついてくるかのように、菫が来た。

「 …どうしたの? 大丈夫? もう予鈴なっちゃうけど… 」

眉をゆがめながら、不安そうに私を見る。
また、私は苦笑いで、

「 大丈夫っ!!! 」

と、Vサインを返した。
嘘ばっか。大丈夫なワケない。

…でも、菫にはなんかいえない。
心配かけたくないし、心配されちゃ…ダメなんだよ。

そう言いながら、私はトイレに駆け込み、蹲った。
彼の笑顔を想像しながら…泣いた。

*******

大雨の放課後。
傘を忘れた私は、菫と別れた後、雨に打たれて帰った。
雨に涙を隠しながら、空を見上げて…

一歩一歩、歩くその足がどこに向けっているのかさえ分からない。
この恋はどこに向かっているのかわからない。
自分の感情という名の船に乗り込んで、身を任せていいのだろうか…?

今、すごく叫びたい気分。今、ものすごく叫びたい…

君の名前を──

********

翌日…雨に打たれたせいで少し風邪気味の私。
教室の扉を開き覗くと、中にはマスクしている人達が。

( 皆も昨日のんで風邪気味なんだな。 )

そう思い、席に着く。
そして、机の中を覗くと、

「 何だこれ… 」

小さく、コンパクトに折りたたまれたメモが。
ゆっくり開くと、

『 話したいことがあるので、体育館裏まで来てください。 』

との一言が。
そして、指定場所に行くと…日向が立っていた。

そして…

「 好きです。 」

告白された。
ありえないと思っていた想い…

私は涙を流しながら、「 私も 」と答えた。

END

アバター
2013/09/06 23:47
かわいいこが恋敵だと頑張る気なくしますよねー、
私も頑張る気なくす寸前ですww
アバター
2013/09/05 22:17
お気に入りからの訪問です。今回も、すごく素敵な作品ですね。
美人で運動も歌も勉強もできて、ついでに優しい女の子が敵だったら私だったら諦めてしまいますね・・・。

STPです。



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