ストロベリーラブ 【 51章 】
- カテゴリ:自作小説
- 2013/08/31 13:48:02
✿主な登場人物✿
斉藤苺華…特に何もない平凡な女子。この春、初めて恋という存在を知る事になる。
日村一輝…同じクラスになった。苺華の心を奪う。クールに見えるがそうでもない。
長谷川香理奈…かつて苺華と仲が良かった女子。今回のクラスで偶然再会を果たした。
宮木功…イケメンだが、バカ。香理奈の心を奪ってしまった。
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第五十一章 『 苺華の知らない香理奈 』
呼吸器をつけた香理奈の姿を目に映しながら、椅子に腰を下ろす。
目の前には、寂しげに香理奈を見つめる竜馬。
さっきの玲奈ちゃんとの会話の原因は、すべてこの男にあるんだ。
玲奈ちゃんがあんな風になっちゃったのも、目の前のこの男の…せい…。
まあ、でもこの人は玲奈ちゃんの心を奪ってしまっただけ。
悲しい事にも、無意識に…。でも、この人は香理奈が好きで…
それで玲奈ちゃんの歯車は狂った…。
なんて残酷な関係なんだろう…。
「 ね、ねぇ… 」
少し寂しげな声で語りかけてきた。
パッと彼のほうに目をやり、首を傾げる。
そして彼は苦笑で、
「 君は香理奈の新しい友達…? 」
と、尋ねる。
軽く首を縦に振り、「 はい 」と答える。
その返答に少し首を傾げ、顎に触れながら、
「 そうなんだぁ… 」
と、呟く。
その態度に疑問を感じた私は、眉間にシワを寄せながら、
「 何ですか? 」
と、尋ねた。
すると彼は片手を激しく振りながら、「 なんでもない!! 」と言った。
私の頭にはいくつもの「 ? 」が浮かんだ。
そして…、
「 ん… 」
香理奈の手がピクリと動き、ゆっくり瞼が開いていった。
香理奈の両目は左右に動き、ゆっくり私のほうへ顔をやる…。
呼吸器越しに見える香理奈の口元をよく見ると、
「 …ここ、どこ? 」
と、言っていた。
私は香理奈の手を握りながら、「 病院だよ 」と答える。
香理奈は目を大きく開き、ガバッと起き上がった。
「 え!? 病院っ!? 」
そう大きな声で叫び、フッと隣に顔をやる。
そこに座っていたのは、香理奈の幼馴染と名乗る竜馬さんの姿…
香理奈は竜馬さんを見た瞬間、硬直し、目を大きく開いた。
黒目は細くなり、体がブルブルと震え始めている──
これで少し分かった。
香理奈にとって竜馬さんがどういう存在なのか…
「 …すみません、竜馬さん。悪いんですけど先生を… 」
ここから離れさしたいがために、竜馬さんに頼む。
彼はコクリと頷き、病室から去った。
私は香理奈の手を握ったまま、
「 どうしたのよ… 」
と、囁く。
だが、香理奈は一向に話そうとしない。
というか、話せそうな雰囲気じゃない…。
彼の姿を見てからというもの、香理奈の口元は一切動かなくなった。
手の震えも止まらないし、さっき竜馬さんの居た椅子から目を離さない。
彼と香理奈の関係…は…
…ガラッ
「 長谷川さん、様態が良くなったようですね。 」
先生が入って来た。
だが香理奈は先生の質問に答えず、ただ竜馬さんの居たほうを見ている。
私が代わりに、「 はい 」と答える。
先生はため息を溢し、
「 呼吸も全て正常ですね。退院しても大丈夫でしょうね。 」
と、呟いた。
「 ありがとうございます 」と浅くお辞儀をし、香理奈の手を握りなおす。
先生が出て行くと、竜馬さんはすぐに香理奈に駆け寄った。
ギュッと手を握り、
「 やっと会いに来れたよ…。香理奈 」
と、微笑んだ。
だが香理奈はものすごい勢いで手を払い、彼を睨む。
…私の知らない香理奈が見えた。
「 香理奈… 」
竜馬さんは、香理奈の名前を寂しく呟き、払われた手を見つめる。
香理奈はただただ竜馬さんを見つめながら震えを増していく…
私は慌てて竜馬さんの手を引っ張り、
「 少しお話願えますか… 」
と、耳元で囁いた。
彼はコクリと小さく頷き、病室を後にした。
私も香理奈に手を振り、病室を後にした。
関係を探るような真似はしちゃいけないのかもしれないけど…
こうするしか、ない。
香理奈の不安を取り除いてあげたい…
※実話ではありません(続く)