Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


愛してました 【 短編小説 】

私は君を心から愛していました。


…この想い、届いてた?
きっと届いてなかったよね、それくらい分かってたよ。
君の笑顔がこっちに向いてない事も、視線が向いてない事も…知ってた。

でも、私は君をブレることなく見てたよ…。
…もう、疲れちゃったけどね。

********

いつも通りの朝…iPhoneのアラームを消し、大きく欠伸をする。
洗いたてのいい匂いがする枕をバネにするように、体を起こす。

クローゼットに手を掛け、水色セーラーの制服を着用する。
かけたばかりのストレートパーマのショートを少し梳く。

そして、その他の身支度をこなし、7時30分になった。
もう、そろそろお決まりのものが来るはずだ。

…ピルルルル

ほらね、やっぱり。

私はiPhoneへ手を伸ばし、メールを確認。
コクリ、と一人で頷き、玄関へ向かった。

「 お母さん行って来るねー 」

台所で仕事をこなす母のほうへ向き、言った。
母の返事はいつもないが、私はしつこく言うことなく、外に出た。

メールの内容通り、家の前にはある人が立っていた──。

「 あっ!!彩夏っ!! 」

私の幼馴染で親友の花村梨花。
ストレートで綺麗な髪、そして整った顔、スラッとした体。

そんな幼馴染と比べ、私、安藤彩夏は何もない平凡女。
先日、やっとストレートパーマをあてれただけだ。

そんな私の髪を見た梨花は、微笑みながら、

「 ストパ当てたんだーっ 」

と、言った。私は頷き、手で梳きながら、

「 そうなんだー!!クセッ毛だったからさぁー 」

と、答えた。
そんな返答に彼女は、「 そっか 」と答えた。

そして、いつも通り学校に向かった──。

********

学校に到着した。
そんな校門の先には、見慣れた背中が…

「 …ねぇ、あれ。雅也じゃない? 」

梨花が指差す先にいたのは、私のもう一人の幼馴染、武田雅也。
あまり目立たないタイプだけど、私は一番知ってる…彼の優しさを。

でも──

「 行こうかっ!! 」

「 えっ、う、うんっ… 」

私達は共に彼のほうへ向かい、梨花はドーンッと背中を押した。
それと同時にビクッと体を震わせた雅也。

「 …うわあ、ビックリしたぁ。お前かよっ 」

冷や汗を流しながら、苦笑いで答える。
そんな雅也の姿を見ながら、嬉しそうにVサインを示しながら

「 へっへーんっ、梨花ちゃんでしたーっ☆ 」

と、答える梨花。
その姿は、きっと全世界の男を魅了するだろうと思った。
可愛い仕草、満点の笑顔、細くて綺麗な指で作られたVサイン…。

すべてが負けている…。

「 …? どうした?彩夏。 」

「 えっ? 」

ボーッとしている私を心配するかのように尋ねる。
私も梨花と同じようにVサインを作り、

「 大丈夫だよっ!! 」

と、無理に笑顔を作って答えた。
無理している事に気づいてもくれず、雅也は微笑み、

「 ならいいんだけど 」

と、答えた。
そして、梨花は雅也の服の袖をギュッと握って、

「 行こかっ!! 」

と、言って教室のほうへ向かっていった。
少し進んだ後、立ち止まっている私ほうへくるりと振り返り、

「 彩夏ーっ? 行かないのっ? 」

と、尋ねた。何も気づいていない、無邪気な笑顔で…。
私はまるでそれを返すかのように、必死に笑顔を作り、ついていった。

実は、私は昔から幼馴染の雅也が好きだ。
きっと誰よりも、誰よりも…一番彼に愛を注いできた。
彼を一番に好きになったのも私って言う自信があるくらい、幼い頃から好きだった。

今でも大好き。心が一切ブレたことさえもない。
ずっと彼をまっすぐ見てきた。

だけど彼は…

「 あははっ、梨花ってばおもしれぇなぁー 」

「 言っとくけど、これマジの話だからねーっ!! 」

彼は、私を見てなどいない。
彼が本当に見せたい笑顔は私には向いていない。…いや、向いたことさえない。

彼が本当に笑顔を見せてるのは私じゃなくて…梨花だ。
そんなの幼い頃から分かっていたこと。

ランドセルを背負い、笑い合っていたあの日から…もうずっと分かってた。
彼が彼女にしか見せない照れくさそうな笑顔も…私は遠くから見てきた。

悲しい目をしながら見ている私に気づいても、微笑むだけで、
「 どうしたの? 」とか「 大丈夫? 」の一言も掛けてくれなかった。
彼は、私の悲しみや想いには気づいた事もなかった。

…それもしょうがないことなのかもしれないけどね。

*********

帰宅後…、私のiPhoneが光った。
いつもはならない着信音。

彼から来たときだけにしかならないメロディーが鳴り響いた。
相手は一瞬で誰だかわかった。

【 雅也 】

iPhone画面に浮かび上がる名前。
すぐに電話に出た。

「 も、もしもし… 」

緊張で、声が少し震えた。
だが、それに気づく事もなく彼は少し怯えたような声で、

『 お前の家の前にいるから来てくれない? 頼むわ 』

「 え 」

その一言だけを残し、電話を切った彼。
どんな用件かはわからないが、会えるならそれでいい。

そんな事を思いながら、すぐに外に出た。

*********

家の前には、寂しく立ち竦む彼の姿が。

「 …雅也 」

「 お、彩夏ー。ちょっと相談乗ってくれぇー 」

嫌な予感がした…。
彼の無邪気でそして、どこか照れくさそうな笑顔…。

胸がザワめく。

「 …何? 」

彼はゆっくり口を開き始めた。

「 …俺、実は梨花が好きなんだよね。 」

平気な顔をして、私に打ち明ける。
そんなのわかってたはずなのに、少し体がよろめく。

だが、彼は続けた。

「 だからさ、ちょっと明日2人で登校できるよう、仕向けてくれない? 」

彼の照れくさそうな笑顔は歪むことなく私を見ている。

ここで…「 嫌だ 」なんていえるの…?
「 嫌だ 」なんていって、終わる恋なのだろうか?

…そんなワケない。

「 いいよ!!明日ね!! 」

私はいつものように彼にVサインを示し、”大丈夫”と返答した。
それは、まるで自分への暗示のようにも思えた。

「 マジ?ありがとー!!じゃっ 」

嬉しそうにガッツポーズをしながら、背を向けて帰っていった。
私は彼の背が微かに見えるくらいになった頃…、涙を流した。

こんなに泣くのは今日だけ。
明日からは強くなるから、今日だけ泣かせて。

そんな事を思いながら──。


私は君を心から愛していました。

…この想い、届いてた?
きっと届いてなかったよね、それくらい分かってたよ。
君の笑顔がこっちに向いてない事も、視線が向いてない事も…知ってた。

でも、私は君をブレることなく見てたよ…。
…もう、疲れちゃったけどね。

※実話ではありません。

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2013/08/26 17:12
切ない…ッ。゜(つД`)゜。

こういうのって、ライバルの子が嫌いになっちゃいそうで怖い
…ライバルってのも、自分しか思ってないんだろうなぁ。
相手にやましい気持とかがないのがまた辛いよね…



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