ストロベリーラブ 【 47章 】
- カテゴリ:自作小説
- 2013/08/23 17:21:02
✿主な登場人物✿
斉藤苺華…特に何もない平凡な女子。この春、初めて恋という存在を知る事になる。
日村一輝…同じクラスになった。苺華の心を奪う。クールに見えるがそうでもない。
長谷川香理奈…かつて苺華と仲が良かった女子。今回のクラスで偶然再会を果たした。
宮木功…イケメンだが、バカ。香理奈の心を奪ってしまった。玲奈と怪しい関係……?
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第四十七章 『 一輝の偉大さ 』
( もしかして玲奈ちゃんは… )
正直、今の私の考えはどうかしてると思う。
本当に、馬鹿気てるし、玲奈ちゃんに限ってそんなミスを…。
いや、でも…この流れは…
「 長谷川玲奈と、私の弟、北山和也は恋人関係にあったのよ。 」
冷静さを保ちながら、私に打ち明けた先生。
でも私にはしっかりと、痛いほど伝わってくる。先生の辛さ。
先生は、まるで自分を痛めつけるかのように続けた──
「 でもある日…和也は死んだ。マンションから飛び降りたの。 」
「 えっ…? 」
一瞬、視界が曇った。
先生の言ってる意味が理解できない。
私はただただ体を固め、目は死んだ魚のようになった。
気づけば両手は震え、唇を震わせていた。
頬はいつの間にか、濡れていた。
先生に目を向けれない。
先生の目が見れない。
私は今、どんな発言をしてあげるべきなんだろう──?
「 フフッ、突然で驚いたのね。気を遣わなくて大丈夫よ。 」
先生はガタッと立ち上がり、コーヒーを淹れた。
その背中は、いつもとまったく変わりのない背中だった。
どうしてそんな背中ができるの?
どうして涙を流さずに私と話せるの?
そんな事を考えていると、先生はコト…と私の前にコーヒーを置いた。
ポワポワと天井に舞う湯気だけが、悲しく浮いている。
突然、静かに閉ざされた保健室…。
そして、スゥッと先生の息を吸う音が聞えた──。
先生が話す──
そう確信した私は、息を呑んだ。
そして、私の予想通り、先生は話し始めた──
「 私はね、玲奈が和也が自殺するように仕向けたんだと思ってる。 」
「 …え? 」
「 まあ…。詳しい事はまだ分からないわ。でも、私はそう考えてるだけよ。 」
まるでその答えを隠すようにも見えた返答。
でも、私はそれ以上、聞くことができなかった…。
きっと、先生には言えない何かがあるんだ。
この先、言えない理由が…きっと。
先生はガタッと立ち上がり、私を見下ろした。
「 もう帰りなさい。これ以上は話せないわ。 」
その言葉と共に、私も立ち上がり教室に帰って行った。
ついさっき私の耳に入った新事実…。
玲奈ちゃんが…自殺に追い込んだ可能性がある北山和也さん。
こんなの…絶対に香理奈には言えない。絶対に、言えないっ…!!!!
でも、真実に近づくには香理奈の助言が…必要かも…
心の中で葛藤を繰り返し、教室のドアを開けた。
*********
あれからもう、時間が過ぎ、放課後になった…。
帰り道に、保健室が目に留まる。
頭に浮かぶのは、あの話と北山先生の姿──。
まだ保健室には明かりがついている。
今頃、コーヒーを片手に資料を読んでいる頃だろう…。
今の私に何もできない。
先生の悲しみに触れることさえ…できない。
それを分かってるからこそ、私はまるで逃げるかのように帰った。
一人の保健室でもしかすると先生は…泣いてたのかもしれない。
全速力で走り、着いたのはいつもの一本道。
香理奈の家までの…一本道。
気づけば私は、香理奈の家の前に棒立ちしていた──。
心の中で、「 何かヒントがほしい 」と呟きながら。
今の香理奈にこんなの言っちゃダメだってわかってるのに…
手が…止まらない。
…ピーンポーン♪
私の人差し指はいつの間にか、インターホンを鳴らしていた。
そして…出てきたのは…
…ガチャッ
「 あれっ? 苺華ちゃーん? 」
艶を出し、綺麗な黒髪をなびかせながら出てきたのは玲奈ちゃん。
あの話を聞いた後だから、私はつい体を震えさせてしまった。
そんな姿を不思議そうに見つめる。
そしてまるでリスのように小さく首を傾げ、私を見つめる。
その大きい黒い瞳は、しっかりと私の震えた姿を映していた。
今にも腰が抜けそうだ。足も竦んで一歩も前に進まない。
すると玲奈ちゃんはニコッと笑いながら私に近づいた。
私の両手をギュッと握りながらこう言った。
「 苺華ちゃん…。今日、保健室行ったらしいね。 」
…ドクンッ!!!!
体が動かなかった。今すぐ逃げなきゃマズイって分かってるのに。
鼓動が早くなっていくのが自分でもわかる。
玲奈ちゃんは笑みを浮かべたまま続ける…
「 保健室の北山先生…なんか話してたんじゃない?例えば、私の過去とかさぁ… 」
「 し、知らないっ!!!!! 」
…パシィィィッ!!!!
不意に私は玲奈ちゃんの頬を叩き、その場を去った。
きっと不自然と思われてる…。
…どうしよう、バレてたんだ。
どうしよう、どうしよう、殺されちゃうかもしれない…。
自殺まで追い込んだっていうのが事実なら私だって…
…ピルルルル
すると、私のポケットでiPhoneが鳴り響く。
スルッ…とポケットに手を入れ、取り出した。
発信者の名前は【 一輝 】とあった。
本当にナイスタイミング。
私はすぐに電話に出た。
『 あぁー、もしもし? 一輝だけど 』
その声を聞いた瞬間、落ち着いてしまって脱力した。
両膝は地面に着き、涙がポタポタと落ちる。
口を押さえ、必死にバレないように頑張った。
「 ぅ…うん、な、に? 」
泣いていたからやっぱり少し鼻声になっていた…。
だが、一輝にはバレなかった。
その後、30分ほど話した──。
一輝の声のトーンで落ち着き、私は元気を取り戻した。
「 ありがとう 」と告げ、電話を切った。
空を見上げると、もう薄暗くなっていた。
地面についた膝を掃い、足を家に向かわせた…。
厄介なこと、心配なこと、いっぱい出てきたけど…
一輝がいたら大丈夫な気がする。
だから…神様、お願い。
一輝だけは…奪わないでください…。
両手を合わせながら空に願った──。
※実話ではありません(続く)
ってかんじいいですねー!!
玲奈ちゃんこの後も何かしそうです・・・・