Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


ストロベリーラブ 【 47章 】

主な登場人物
斉藤苺華…特に何もない平凡な女子。この春、初めて恋という存在を知る事になる。
日村一輝…同じクラスになった。苺華の心を奪う。クールに見えるがそうでもない。
長谷川香理奈…かつて苺華と仲が良かった女子。今回のクラスで偶然再会を果たした。
宮木功…イケメンだが、バカ。香理奈の心を奪ってしまった。玲奈と怪しい関係……?
────────────────────────────────────
第四十七章 『 一輝の偉大さ 』

( もしかして玲奈ちゃんは… )

正直、今の私の考えはどうかしてると思う。
本当に、馬鹿気てるし、玲奈ちゃんに限ってそんなミスを…。

いや、でも…この流れは…

「 長谷川玲奈と、私の弟、北山和也は恋人関係にあったのよ。 」

冷静さを保ちながら、私に打ち明けた先生。
でも私にはしっかりと、痛いほど伝わってくる。先生の辛さ。

先生は、まるで自分を痛めつけるかのように続けた──

「 でもある日…和也は死んだ。マンションから飛び降りたの。 」

「 えっ…? 」

一瞬、視界が曇った。
先生の言ってる意味が理解できない。

私はただただ体を固め、目は死んだ魚のようになった。
気づけば両手は震え、唇を震わせていた。
頬はいつの間にか、濡れていた。

先生に目を向けれない。
先生の目が見れない。

私は今、どんな発言をしてあげるべきなんだろう──?

「 フフッ、突然で驚いたのね。気を遣わなくて大丈夫よ。 」

先生はガタッと立ち上がり、コーヒーを淹れた。
その背中は、いつもとまったく変わりのない背中だった。

どうしてそんな背中ができるの?
どうして涙を流さずに私と話せるの?

そんな事を考えていると、先生はコト…と私の前にコーヒーを置いた。
ポワポワと天井に舞う湯気だけが、悲しく浮いている。

突然、静かに閉ざされた保健室…。
そして、スゥッと先生の息を吸う音が聞えた──。

先生が話す──

そう確信した私は、息を呑んだ。
そして、私の予想通り、先生は話し始めた──

「 私はね、玲奈が和也が自殺するように仕向けたんだと思ってる。 」

「 …え? 」

「 まあ…。詳しい事はまだ分からないわ。でも、私はそう考えてるだけよ。 」

まるでその答えを隠すようにも見えた返答。
でも、私はそれ以上、聞くことができなかった…。

きっと、先生には言えない何かがあるんだ。
この先、言えない理由が…きっと。

先生はガタッと立ち上がり、私を見下ろした。

「 もう帰りなさい。これ以上は話せないわ。 」

その言葉と共に、私も立ち上がり教室に帰って行った。
ついさっき私の耳に入った新事実…。

玲奈ちゃんが…自殺に追い込んだ可能性がある北山和也さん。
こんなの…絶対に香理奈には言えない。絶対に、言えないっ…!!!!
でも、真実に近づくには香理奈の助言が…必要かも…

心の中で葛藤を繰り返し、教室のドアを開けた。

*********

あれからもう、時間が過ぎ、放課後になった…。
帰り道に、保健室が目に留まる。

頭に浮かぶのは、あの話と北山先生の姿──。
まだ保健室には明かりがついている。
今頃、コーヒーを片手に資料を読んでいる頃だろう…。

今の私に何もできない。
先生の悲しみに触れることさえ…できない。

それを分かってるからこそ、私はまるで逃げるかのように帰った。
一人の保健室でもしかすると先生は…泣いてたのかもしれない。

全速力で走り、着いたのはいつもの一本道。
香理奈の家までの…一本道。

気づけば私は、香理奈の家の前に棒立ちしていた──。
心の中で、「 何かヒントがほしい 」と呟きながら。

今の香理奈にこんなの言っちゃダメだってわかってるのに…
手が…止まらない。

…ピーンポーン♪

私の人差し指はいつの間にか、インターホンを鳴らしていた。
そして…出てきたのは…

…ガチャッ

「 あれっ? 苺華ちゃーん? 」

艶を出し、綺麗な黒髪をなびかせながら出てきたのは玲奈ちゃん。
あの話を聞いた後だから、私はつい体を震えさせてしまった。

そんな姿を不思議そうに見つめる。
そしてまるでリスのように小さく首を傾げ、私を見つめる。

その大きい黒い瞳は、しっかりと私の震えた姿を映していた。
今にも腰が抜けそうだ。足も竦んで一歩も前に進まない。

すると玲奈ちゃんはニコッと笑いながら私に近づいた。
私の両手をギュッと握りながらこう言った。

「 苺華ちゃん…。今日、保健室行ったらしいね。 」

…ドクンッ!!!!

体が動かなかった。今すぐ逃げなきゃマズイって分かってるのに。
鼓動が早くなっていくのが自分でもわかる。

玲奈ちゃんは笑みを浮かべたまま続ける…

「 保健室の北山先生…なんか話してたんじゃない?例えば、私の過去とかさぁ… 」

「 し、知らないっ!!!!! 」

…パシィィィッ!!!!

不意に私は玲奈ちゃんの頬を叩き、その場を去った。
きっと不自然と思われてる…。

…どうしよう、バレてたんだ。
どうしよう、どうしよう、殺されちゃうかもしれない…。

自殺まで追い込んだっていうのが事実なら私だって…

…ピルルルル

すると、私のポケットでiPhoneが鳴り響く。
スルッ…とポケットに手を入れ、取り出した。

発信者の名前は【 一輝 】とあった。
本当にナイスタイミング。

私はすぐに電話に出た。

『 あぁー、もしもし? 一輝だけど 』

その声を聞いた瞬間、落ち着いてしまって脱力した。
両膝は地面に着き、涙がポタポタと落ちる。

口を押さえ、必死にバレないように頑張った。

「 ぅ…うん、な、に? 」

泣いていたからやっぱり少し鼻声になっていた…。
だが、一輝にはバレなかった。

その後、30分ほど話した──。
一輝の声のトーンで落ち着き、私は元気を取り戻した。

「 ありがとう 」と告げ、電話を切った。

空を見上げると、もう薄暗くなっていた。
地面についた膝を掃い、足を家に向かわせた…。

厄介なこと、心配なこと、いっぱい出てきたけど…
一輝がいたら大丈夫な気がする。

だから…神様、お願い。
一輝だけは…奪わないでください…。

両手を合わせながら空に願った──。

※実話ではありません(続く)


アバター
2013/08/24 00:05
かずきくんだけは・・・

ってかんじいいですねー!!

アバター
2013/08/23 17:32
一輝君優しいもんね^^

玲奈ちゃんこの後も何かしそうです・・・・ 



月別アーカイブ

2019

2017

2016

2015

2014

2013

2012

2011

2010

2009


Copyright © 2025 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.