ストロベリーラブ 【 45章 】
- カテゴリ:自作小説
- 2013/08/20 00:55:02
✿主な登場人物✿
斉藤苺華…特に何もない平凡な女子。この春、初めて恋という存在を知る事になる。
日村一輝…同じクラスになった。苺華の心を奪う。クールに見えるがそうでもない。
長谷川香理奈…かつて苺華と仲が良かった女子。今回のクラスで偶然再会を果たした。
宮木功…イケメンだが、バカ。香理奈の心を奪ってしまった。玲奈と怪しい関係……?
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第四十五章 『 掠れた届かない声 』
「 お疲れ様でしたー 」
立ち上がる度になる机の音と共に、私達は立ち上がる。
香理奈の青ざめた顔を見つめながら、「 大丈夫? 」と問いかける。
だが、返答はなし。香理奈は目だけを泳がしている…。
そうとう重症なのが理解できた。
一つ前の席にいる玲奈ちゃんは涼しい顔をして、教材を片付けている。
私には何一つ理解できないほど、玲奈ちゃんは清々しそうだった。
そして、クルッとこちらのほうに振り返り、ニコッと微笑んだ。
「 お姉ちゃんと同じ塾だなんて最高っ。頭良くなれちゃーうっ♡ 」
その微笑みは、ただただ憎しみの感情しか込められていないように見えた。
玲奈ちゃんは、香理奈と上位を争うほどの頭の良さ…。
時には、玲奈ちゃんが勝つことだった普通にあったのだ──。
なのに…この言い方…。
私は拳を握り締め、玲奈ちゃんを睨みつける。
すると、玲奈ちゃんは突然、「 クスッ 」と笑った…。
「 美しい友情…、だとでも思ってるのかしら? 」
その時の声は、今までの可愛い女の子の声とは別物だった。
まるで、悪魔に支配されたかのような…ドスの利いた声。
その声に、香理奈も酷く驚いている様子。
目を丸くしながら、体を固めている──。もちろん…私だって同じ反応だ。
だが、そんなのはおかまいなしに話を続けていく…
「 本当に馬鹿馬鹿しいわ。私に勝ったつもりでいるみたいだし…ね? 」
フンッと両腕を組み、見下すかのように香理奈を見る。
その目は鬼その者で、もう…理性を失ってるかのようにも見えた。
それをきっと香理奈も気づいているはずだ。
「 …勝ったとか、そんなん別に考えてないよ 」
冷静に答える香理奈。
だが、そんな物、玲奈ちゃんには通用しない。
また「 ハッ 」と鼻で笑いながら、見下すかのように見る。
「 アンタさァ…そのまま幸せになれると思わないでね? 」
その一言だけを残し、鞄を背負って帰ってしまった。
玲奈ちゃんは、最悪な置き土産を置いていった。
香理奈は悔しそうに拳を握り締めながら、唇をかみ締めている。
妹なだけに、やっぱり強くは突き放せない。…妹想いな香理奈なら余計に。
…これは姉妹の問題だから、何もしてあげられないな。
「 香理奈、帰ろう 」
「 …うん 」
そっと香理奈の手を取りながら、いつもの帰り道を通っていった…。
今の私にできる事は、これだけ。
ちっぽけだけど、香理奈の元気が少しでも出れば…いいな。
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時間はすぐに経ち、1日が過ぎた。
あれから、香理奈はどんな風に家で過ごしたんだろう?
昨日、「 泊まれ 」って言ったのに聞かなかった…。
これは、香理奈のプライドなのか、それとも…遠慮なのか…。
どっちにせよ、いいことではないのは確かだ。
心配でたまらない私は、iPhoneをポケットから取り出した。
番号を香理奈に合わせ、ベルを鳴らす。
…ピルルルル…ガチャッ
「 あ、もしもし? 香理奈… 」
『 …苺華か。何? 』
その時の香理奈の声は、掠れていた。
きっと昨日の夜…泣き明かしたに違いない。
もう、居ても立っても居られなくなった私は、電話に向かって叫んだ。
「 なんで!?おかしいじゃん!!なんで香理奈が泣いてるの!? 」
それはまるで、玲奈ちゃんに怒鳴るように…。
香理奈は今悲しんでいるのはわかっているのに、口が止まらない。
「 おかしい 」「 こんなの間違ってる 」「 何してるの 」
そんな言葉を何度も、何度も並べ、香理奈に叩きつけるように言った。
すると──
『 苺華に何がわかるの!?妹いないくせにっ…!!! 』
「 えっ… 」
…ガチャッ。
香理奈との連絡は途絶えた…。
最後の香理奈の声は、最初以上に掠れていた。
私が…留めを刺したといっても、過言ではないような気がした。
香理奈の最後の掠れた声…。あれはきっと私が怒鳴ってる間に泣いたからだ。
どうして気づいてあげられなかったんだろう。
頼ってほしいと願っているのに、どうしてこんなに追い込んでしまったんだろう。
「 …ごめん、香理奈っ 」
iPhoneを握り締めながら、壁に靠れ、頬を濡らす。
こんな姿…こんな声…香理奈には届くはずもなかった。
※実話ではありません(続く)
続き気になります
香里奈ちゃんも苺華ちゃんもガンバレ!