ストロベリーラブ 【 40章 】
- カテゴリ:自作小説
- 2013/08/14 13:24:32
✿主な登場人物✿
斉藤苺華…特に何もない平凡な女子。この春、初めて恋という存在を知る事になる。
日村一輝…同じクラスになった。苺華の心を奪う。クールに見えるがそうでもない。
長谷川香理奈…かつて苺華と仲が良かった女子。今回のクラスで偶然再会を果たした。
宮木功…イケメンだが、バカ。香理奈の心を奪ってしまった。玲奈と怪しい関係……?
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第四十章 『 届いて欲しい気持ち 』
始業式で初めて君と出会った時…
初めての感覚を味わった。
心がポワッと温かくなって、胸の辺りがキュってなって…
もどかしくて、なかなか思い通りにできなくて…
話しかけたいと思っていても、そうそううまく声を掛けられない…
そんな感じだった…。
一輝も…そうだった…?
今は、どうなの…?私の事…どう思ってるの…?
「 苺華…? 」
「 んっ? ああ、ごめん。なんでもないのっ 」
まるで何事もなかったかのように、接する私。
そんな私を不思議そうに見つめる竜生。
そんな目が少し痛々しかった。
まるで私を哀れむような…そんな目だったから。
動揺を隠せない私は、目を逸らし、竜生を視界から外した。
その次に視界に映ったのは、あの二人だった。
仲良さそうに、ニコニコ笑い合って話し合ってる──
( さっきあんな感じになったっていうのに…平気なんだ、一輝は。 )
そんな事を思いながら、二人を見つめていた。
後ろから来る竜生の視線が突き刺さろうと、関係なく──
今すぐ誤解を解いてしまいたいっ…
その想いだけが、私の体を支配していた。
でも、支配されてるからといって、この手を伸ばすわけでもない。
ただただ見て、届け、届けと念じることしかできない。
…本当に情けなかった。
そんな時、竜生が私の隣に並んだ。
「 …な、何 」
顔を見上げながら、尋ねた。
すると竜生はフッと鼻で笑いながら言った。
「 俺、超能力あるのかなァ。お前の心読めてしまうっ。 」
その時の表情は楽しげに見えるが、やっぱり複雑な笑顔だった。
パッと目を逸らし、見ないように頑張る。
私は、彼の言葉を返すように言った。
「 そ、そんなの分からないでしょっ 」
今の私の顔はすごく分かりやすい顔だろう。
私にポーカーフェイスのスキルなんてないんだから隠せるわけがない。
特に、竜生は幼馴染の私の事をよく知ってるだろう。
きっと…一輝よりも…。
だから、私が今…何を考えてるのかも本当に分かるんだろう。
そんな事を考えていると、ボスッと頭の上に何かを置かれた。
目だけを上にやると、そこには竜生の手があった。
その時の竜生の顔はすごく優しくて、微笑みを浮かべていた。
どうしてそんな顔ができるんだろう…
今、私が何を考えているのか、分かるはずなのに…どうして?
心で何度も、何度も竜生に直接問いただすかのように言った。
でも、そんな心の声までは届くはずもない。
「 …じゃあ俺行くわっ 」
そう言って、”よしよし”と頭を撫でてその場を去った。
それはまるで、”気にするな”、”元気だせ”と言ってるようだった…
寂しそうで、強がっている背中を見つめながら撫でられた頭に触れる。
私は今、何を考えているんだろう…。
あの背中がすごく…格好良く見えてる…。
ダメだ、自分が弱ってるからと言ってそんな…
人に縋るかのような気持ちを作ってはいけない。
こんな気持ちで好きになっても、きっと竜生は喜ばない。
私は首を左右に振り、気持ちを立て直した。
( 私は私なりに、頑張って一輝の誤解を解かなくては… )
もう1度、一輝のほうへ顔をやり、考えた。
どうやれば誤解を解けるか…。
**********
あーだこーだで考えてるうちにもう放課後になってしまった。
結局、一輝とは一言も話さないまま、一日が過ぎた。
チャンスはいくらでもあったはずなのに手を伸ばせなかった。
( 何をやってるんだ、私は。 )
両手で顔を覆い、深いため息を溢す。
窓の外を眺めると、門からドンドン出てくるカップルの大群。
そんなカップル達を眺めながらまた深いため息を溢した。
少し前までは一輝と私だってあんなふうだった。
そんな馬鹿げた見栄を張りながらも、そんなカップルが羨ましく見えた。
”一刻も早く誤解を解かなくちゃ…。”そう思った。
机の上に肘を置き、また一つため息を溢し、立ち上がった。
身だしなみを整え、前髪をそろえた。
一刻も争う時なのに何してるんだろう。
そんな事を頭に浮かばせながらも、キチンと身だしなみを整える。
スカートの埃や、リボンのズレを直し、一輝を探しに向かった。
***********
階段を上り、下がり、いろんな場所を探してもいない。
教室も見回ったけど、どこにも一輝の姿がないのだ。
汗を流しながら、私は懸命に走った。
そんな時──
グラウンドで伸びる二つの影が見えた。
「 …あっ 」
思わず声を出してしまった。
その影の正体とは、あの二人だったから…。
二人の近くにある水道に隠れ、身を消した。息も殺した。
盗み聞きなんてよくないけど…こうするしかないっ…。
口を押さえ、ゆっくり耳を澄ます。
そんな中、口火を切ったのはあの子だった。
「 あのぅ…お話の件なんですけどっ… 」
少し声を震わせている。緊張しているみたいだ。
そして、声を震わせたまま、続けた──
「 あの、1度だけ聞いてくださいっ!!! 」
その声を聞いた瞬間、私は何かを感じ取った。
声だけだったけど、今からこの子がいう事がわかる。
これは…
「 好きです…日村君… 」
やっぱり、告白だったか。
片手で顔を覆い、聞こえないようにため息を溢す。
一輝はなんていうのだろうか。
それだけが今、聞きたい。
「 …俺は 」
スゥッと息を吸って、一輝が口を開き始めた──
私も覚悟を決め、体を震わせながら耳を澄ました…
「 藤原の事、好きだよ。 」
…ドクンッ!!!!!ドクンッ!!!!!!
私の心の中で、何かが壊れる音がした…。
鈍器で殴られたような、そんな鈍い音だった。
私は口を押さえ、その場を慌てて去っていった──
※実話ではありません(続く)
心変わりですか・・・?
苺華ちゃんかわいそう・・・
続き気になり過ぎます!!