ストロベリーラブ *38話*
- カテゴリ:自作小説
- 2013/08/13 15:43:19
✿主な登場人物✿
斉藤苺華…特に何もない平凡な女子。この春、初めて恋という存在を知る事になる。
日村一樹…同じクラスになった。苺華の心を奪う。クールに見えるがそうでもない。
長谷川香理奈…かつて苺華と仲が良かった女子。今回のクラスで偶然再会を果たした。
宮木功…イケメンだが、バカ。香理奈の心を奪ってしまった。玲奈と怪しい関係……?
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第三十八章 『 騒ぐ胸 』
あれから私は全速力で家まで走っていた。
家に着くと、息を荒くし、胸元を掴む。
…ドクンッ、ドクンッ
心臓の音が鳴る度に、頭に浮かぶ竜生の顔…。
思い出の一ページが次々とめくられていくようだ──
「 もうっ…やめてよっ… 」
両耳を塞ぎ、その場にしゃがみこんだ。
『 分かりやすいなぁー。苺華は。 』
「 やめてよっ!!! 」
そう叫ぶ私。
ついにおかしくなったのか、幻聴まで聞こえてくる。
両手をガタガタと震わせ、涙を必死に止める。
唇をかみ締め、必死に泣かないように頑張っていた──
泣けば私はズルくなる。
そんなの一番私が良く分かってる…。
だからこそ、泣けない、泣いてはいけない。
竜生を振り回したのも私、一輝を振り回したのも私。
そんな私がボロボロないてたら、きっと…悪女になってしまう…。
「 泣いちゃダメ、泣いちゃダメ… 」
その言葉はまるで、自分に呪文を唱えてるようだった。
「 …とりあえず、家の中に入ろう。 」
しゃがみ込んでいた体をフラッと立ち上がらせ、ドアノブに手を掛けた。
クイッと回し、中に足を入れた。
******
そんなこんなで時刻はもう7時を回っていた。
つい机の上で転寝をしていた私は、クイッと顔をあげた。
「 …ん、もうこんな時間? 」
7時回った時計の針をジーッと見つめ、呟く。
いつもなら起きなきゃと思い、すぐに体を起こすが、今日はそんな気分じゃない。
…もう少し、眠って何も思い出さないようにしたい。
ただただその気持ちだけが、浮かび上がる。
目を覚ませば、浮かぶのは竜生の複雑な笑顔と、一輝の顔だけ。
「 も~、なんで起きちゃったんだろうっ… 」
両手で顔を覆い、視界を真っ暗にした。
何も見えないように…何も思い出さないように…。
でも、意識があれば絶対に思い出してしまう。
( …私って卑怯だなぁ )
不意にそう思う。
寝て、思い出さないようにして、視界を真っ暗にして、何も見えないようにして、
…これじゃあただただ逃げてるだけ。
「 …分かってるのに 」
ポツリと呟く。
分かってる…分かってるのに…
──なのに
やっぱり逃げ道を探している、情けない私がいる。
…チャリッ
机の上でキラリと光る十字架のネックレス…。
持ち上げると、”チャリ”と音が鳴った。
「 …輝いてるなぁ 」
小さく呟いた。
でも、その十字架は私に向けられてるようで痛かった。
あの頃の誓いが、まるで訴えられてるようで…痛かった。
「 …グスッ 」
ダメダメ、絶対に泣いちゃダメッ…。
心で何度も呟きながら、拳を強く、強く、握り締めた。
******
…翌日
「 はあああ… 」
深い深いため息を溢した──。
拳を握り締め、唇をかみ締めた。
今日はものすごく学校行きたくないなぁ…。
そんな事を思いながら、トボトボ歩いていく──。
静かな一本道には、私の”コツコツコツ”というローファーの音だけが響く。
…コツコツコツ
今日はその音が無償に私の耳に届く。
おかしいほどに、この音が私を悲しくさせる。
「 …っ 」
爪の跡が出来るほど、強い力で拳を握る。
俯きながら、自分の足が進むのをただただ見ていた──
( 道の途中で一輝と会ったらどうしよ…どんな顔しよう… )
風邪で寝込んで、一輝に薬貰って…
あ、お礼言っとくの忘れてた…
でも、今会ったら私はどんな顔になるかなっ…私。
( …ううん、やめよう )
首を横に振り、考えるのをやめた。
考えててはよけい変な態度になってしまう…一輝を誤解させてしまうし。
竜生の事は…キッパリ断らなきゃいけない。
それは、竜生のためでもあり、自分のためでもあるんだから。
あの小鹿みたいな子には悪いけど…本当の事を教えてあげなくちゃ。
「 よしっ 」
決意を固め、私は足を早く進ませた──
******
数分後、学校に到着した──。
教室の前で立ち竦み、ドアに手をかけた。
( 大丈夫、大丈夫っ… )
自分に暗示をかけ、ガラッと扉を開けた。
…ガラッ
周りを見渡すと、竜生の姿も、一輝の姿も見当たらなかった。
見当たるのは、いつも早めにくる生徒と、あの小鹿のような女の子。
「 …あ 」
その子を見つけ、私は駆け寄り、声を掛けた。
「 ね、ねぇっ… 」
声を掛けたと同時に、クルッと振り返る。
「 …な、何? 」
肩を小さく縮めながら、目を泳がせる。
私はペコッとお辞儀をして、口を開いた。
「 ごめんっ!!昨日の事なんだけどっ── 」
「 あぁ、そのことならもういいよっ。 」
「 …え? 」
言葉と聞き、顔をあげて首を傾げた。
見上げたその時の彼女の顔は、パアッとものすごく明るくなっていた。
「 … 」
なんだか嫌な予感がした。
次、彼女の口からでる言葉は…
「 私こそごめんなさいっ…。昨日は問い詰めたりなんかして… 」
「 え、いや…その… 」
「 でも、私昨日の言葉聞いて安心したんだぁ 」
両手を合わせ、パアッと顔を明るくさせている。
両頬を真っピンクにさせながら、笑っていた。
「 …安心…した…? 」
その言葉を聞いて、胸の奥で激しい波が起こる。
彼女の顔はもう女の顔だ…。
「 …まさか、あなたは 」
…ガラッ!!!
「 あっ、日村君っ… 」
「 …一輝 」
※実話ではありません(続く)
↓✿斉藤苺華✿
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=37680926
↓✿長谷川香理奈✿
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=37681130
何か大変な展開ですね・・・