Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


ストロベリーラブ *38話*

主な登場人物
斉藤苺華…特に何もない平凡な女子。この春、初めて恋という存在を知る事になる。
日村一樹…同じクラスになった。苺華の心を奪う。クールに見えるがそうでもない。
長谷川香理奈…かつて苺華と仲が良かった女子。今回のクラスで偶然再会を果たした。
宮木功…イケメンだが、バカ。香理奈の心を奪ってしまった。玲奈と怪しい関係……?
────────────────────────────────────
第三十八章 『 騒ぐ胸 』

あれから私は全速力で家まで走っていた。

家に着くと、息を荒くし、胸元を掴む。

…ドクンッ、ドクンッ

心臓の音が鳴る度に、頭に浮かぶ竜生の顔…。
思い出の一ページが次々とめくられていくようだ──

「 もうっ…やめてよっ… 」

両耳を塞ぎ、その場にしゃがみこんだ。

『 分かりやすいなぁー。苺華は。 

「 やめてよっ!!! 」

そう叫ぶ私。
ついにおかしくなったのか、幻聴まで聞こえてくる。

両手をガタガタと震わせ、涙を必死に止める。
唇をかみ締め、必死に泣かないように頑張っていた──

泣けば私はズルくなる。

そんなの一番私が良く分かってる…。
だからこそ、泣けない、泣いてはいけない。

竜生を振り回したのも私、一輝を振り回したのも私。
そんな私がボロボロないてたら、きっと…悪女になってしまう…。

「 泣いちゃダメ、泣いちゃダメ… 」

その言葉はまるで、自分に呪文を唱えてるようだった。

「 …とりあえず、家の中に入ろう。 」

しゃがみ込んでいた体をフラッと立ち上がらせ、ドアノブに手を掛けた。
クイッと回し、中に足を入れた。

****** 

そんなこんなで時刻はもう7時を回っていた。
つい机の上で転寝をしていた私は、クイッと顔をあげた。

「 …ん、もうこんな時間? 」

7時回った時計の針をジーッと見つめ、呟く。
いつもなら起きなきゃと思い、すぐに体を起こすが、今日はそんな気分じゃない。

…もう少し、眠って何も思い出さないようにしたい。

ただただその気持ちだけが、浮かび上がる。
目を覚ませば、浮かぶのは竜生の複雑な笑顔と、一輝の顔だけ。

「 も~、なんで起きちゃったんだろうっ… 」

両手で顔を覆い、視界を真っ暗にした。
何も見えないように…何も思い出さないように…。

でも、意識があれば絶対に思い出してしまう。

( …私って卑怯だなぁ )

不意にそう思う。

寝て、思い出さないようにして、視界を真っ暗にして、何も見えないようにして、

…これじゃあただただ逃げてるだけ。

「 …分かってるのに 」

ポツリと呟く。

分かってる…分かってるのに…

──なのに
やっぱり逃げ道を探している、情けない私がいる。

…チャリッ

机の上でキラリと光る十字架のネックレス…。
持ち上げると、”チャリ”と音が鳴った。

「 …輝いてるなぁ 」

小さく呟いた。

でも、その十字架は私に向けられてるようで痛かった。
あの頃の誓いが、まるで訴えられてるようで…痛かった。

「 …グスッ 」

ダメダメ、絶対に泣いちゃダメッ…。

心で何度も呟きながら、拳を強く、強く、握り締めた。

******

…翌日

「 はあああ… 」

深い深いため息を溢した──。
拳を握り締め、唇をかみ締めた。

今日はものすごく学校行きたくないなぁ…。

そんな事を思いながら、トボトボ歩いていく──。
静かな一本道には、私の”コツコツコツ”というローファーの音だけが響く。

…コツコツコツ

今日はその音が無償に私の耳に届く。
おかしいほどに、この音が私を悲しくさせる。

「 …っ 」

爪の跡が出来るほど、強い力で拳を握る。
俯きながら、自分の足が進むのをただただ見ていた──

( 道の途中で一輝と会ったらどうしよ…どんな顔しよう… )

風邪で寝込んで、一輝に薬貰って…
あ、お礼言っとくの忘れてた…

でも、今会ったら私はどんな顔になるかなっ…私。

( …ううん、やめよう )

首を横に振り、考えるのをやめた。

考えててはよけい変な態度になってしまう…一輝を誤解させてしまうし。
竜生の事は…キッパリ断らなきゃいけない。
それは、竜生のためでもあり、自分のためでもあるんだから。

あの小鹿みたいな子には悪いけど…本当の事を教えてあげなくちゃ。

「 よしっ 」

決意を固め、私は足を早く進ませた──

******

数分後、学校に到着した──。
教室の前で立ち竦み、ドアに手をかけた。

( 大丈夫、大丈夫っ… )

自分に暗示をかけ、ガラッと扉を開けた。

…ガラッ

周りを見渡すと、竜生の姿も、一輝の姿も見当たらなかった。
見当たるのは、いつも早めにくる生徒と、あの小鹿のような女の子。

「 …あ 」

その子を見つけ、私は駆け寄り、声を掛けた。

「 ね、ねぇっ… 」

声を掛けたと同時に、クルッと振り返る。

「 …な、何? 」

肩を小さく縮めながら、目を泳がせる。
私はペコッとお辞儀をして、口を開いた。

「 ごめんっ!!昨日の事なんだけどっ── 」

「 あぁ、そのことならもういいよっ。 」

「 …え? 」

言葉と聞き、顔をあげて首を傾げた。
見上げたその時の彼女の顔は、パアッとものすごく明るくなっていた。

「 … 」

なんだか嫌な予感がした。
次、彼女の口からでる言葉は…

「 私こそごめんなさいっ…。昨日は問い詰めたりなんかして… 」

「 え、いや…その… 」

「 でも、私昨日の言葉聞いて安心したんだぁ 」

両手を合わせ、パアッと顔を明るくさせている。
両頬を真っピンクにさせながら、笑っていた。

「 …安心…した…? 」

その言葉を聞いて、胸の奥で激しい波が起こる。

彼女の顔はもう女の顔だ…。

「 …まさか、あなたは 」

…ガラッ!!!

「 あっ、日村君っ… 」

「 …一輝 」

※実話ではありません(続く)

斉藤苺華
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=37680926
長谷川香理奈
http://www.pixiv.net/member_illust.php?mode=medium&illust_id=37681130


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2013/08/16 15:07
やっぱり一輝くんのこと好きなのかな・・・
何か大変な展開ですね・・・



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