ストロベリーラブ *37話*
- カテゴリ:自作小説
- 2013/08/12 20:11:31
✿主な登場人物✿
斉藤苺華…特に何もない平凡な女子。この春、初めて恋という存在を知る事になる。
日村一樹…同じクラスになった。苺華の心を奪う。クールに見えるがそうでもない。
長谷川香理奈…かつて苺華と仲が良かった女子。今回のクラスで偶然再会を果たした。
宮木功…イケメンだが、バカ。香理奈の心を奪ってしまった。玲奈と怪しい関係……?
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第三十七章 『 複雑 』
「 …どれどれ 」
iPhoneを覗き込み、内容を目に通した。
そこに書かれていたのは──
『 宮木君、全て話してくれたよ。苺華、ありがとう。 』
その本文を読み、ホッと胸を撫で下ろす。
ずっと気が気でなかったから…本当に良かった。
「 …ふぅ 」
「 あ、あのぅっ… 」
「 ? 」
振り向くと、さっきの小柄な女の子が立っていた。
「 はい? 」
女の子は体を震わせ、顔を赤くしながらこう言った。
「 あの…日村…君…は? 」
「 えっ? 日村ぁ…? 」
香理奈の事を気にしすぎて一輝の事を少し忘れていた。
そういえば、今日は見当たらないなぁ。
「 ごめん、わからない。 」
「 そっ、そっかぁ… 」
シュンッ…と俯く彼女。
小鹿のように肩を竦め、背中を向けた。
「 あ、待って 」
そんな彼女を呼びとめ、駆け寄った。
首を小さく傾げ、尋ねるように目で訴える彼女。
「 も、もし…一輝の事に伝えたい事があるなら言っとくよ? 」
ニコッと笑顔でそう言った。
だが、彼女は「 えっ? 」という口を作り、目を丸くしている。
「 どうしたの…? 」
首を傾げ、尋ねると彼女はキラッと涙を溢して
「 なんでもないです!!! 」
と言って、その場を走り去っていった。
彼女の背中を見つめ、首を傾げた私──。
( あの行動にはどんな意味が? )
そんな疑問を抱えながらも、椅子に座った。
にしても、あの子なんていう名前なんだろうか…。
一輝の事探してたみたいだし、一輝とはどういう関係なんだろう。
それに…一輝が休んでる原因も少し気になるしね…。
…キーンコーンカーンコーン♪
「 あ、授業始まる… 」
ポツリと呟き、前の教科のセットを机に直した。
( 次はちゃんと授業に集中しよっ… )
そんな事を心で呟き、数学のセットを取り出した。
*****
放課後…
私は人気のない4階まで上がり、電話を掛けた。
相手はもちろん、一輝。
…プルルルル
「 …… 」
何故か緊張している…。
緊張なんてすることないのになんで…
…ガチャッ
「 あっ、出た。 」
『 ゴホッ、そりゃ出るだろ…ゴホッ 』
ガラガラの声と、今にも消えそうな小さな声で呟く。
すぐに、一輝がどんな状況だか理解した。
「 風邪か、今日休んだ理由。 」
そう呟くと、一輝は咳を繰り返し、答えた。
『 ああ、ごめんごめん。心配掛けたなぁ 』
「 本当にね 」
そう答え、フッと笑った。
「 お大事にね。 」
『 ん? あぁ。 』
そして、電話を切った──。
これ以上、電話を長引かせていては、しんどいだけだ。
一輝に迷惑掛けたくないし…
「 さーてっ、帰りますかっ。 」
人気のない4階で、私の声が廊下に木霊する。
大きく伸びをし、iPhoneをポケットに直した。
その瞬間──
「 ねえっ… 」
後ろから聞こえた女の子の声。
振り返ると、そこにはさっきの女の子が立っていた。
「 あ、ああ…。どうしたの? 」
正直、驚いた。
人気なんてなかったのに、こんな近くにいたなんて。
驚いた私を見ながら、涙目で私を見つめている…
「 な、何? 」
もう半泣き状態で、一言キツイ言葉を言えば、すぐにおお泣きしてしまいそうだ。
私、そんな酷く追い詰めたっけ…? なんだろう、なんかいやな予感がっ…
「 …ずき君とは…けい…なの…? 」
「 えっ? ごめんっ、聞こえなっ… 」
「 一輝君とはどういう関係なのぉっ!? 」
号泣しながら、訴えるように叫んだ。
「 え゛ 」と言って、ズサッと一歩引く私にまた一歩近づいて来た。
「 ねえっ…どういう… 」
ウルッと目を丸くさせ、頬を涙でぬらせながら迫ってくる。
もう私にはキツすぎるお仕置きだった。
突然どういう関係なのってこの状況で聞かれたら答えにくい。
「 …どういうって 」
いまのこの子に”恋人”なんて言ったら、余計泣くんだろうなっ…
どうしればいいんだろう、こんな時に一輝だったらどうするんだろうっ…
「 ねえってばぁっ… 」
「 ま、待って!!! 」
ドンドン迫り、ついには壁に追い込まれた。
もうしょうがない、適当な言い訳でもっ───
「 教えてやるよ。 」
「 えぇっ? 」
目の前の階段から聞こえた落ち着いたトーンの声。
すぐに誰だかわかった。
「 …竜生っ 」
ポケットに手を突っ込みながら、澄ましている。
ゆっくりとこっちに近づいてくる。
「 あ、高城…君… 」
女の子が振り返り、ポツリと呟く。
チラッと竜生は私を見て、フッと鼻で笑った。
「 お前、斉藤泣かしたのかァ? 」
「 な、泣かしてないよぉ!! た、ただ聞いてただけ… 」
人差し指で顎に触れながら、ポツリと呟く。
その仕草は何かを隠すようにも見えた。
「 …? 」
少し、疑問に感じた。
彼女…やっぱり一輝のことっ…
「 …で、さっきの質問の答え教えてくれるのっ? 」
「 ん? ああ。いいぜ。 」
ニヤッと笑いながら、答えた竜生。
「 ま、待ってっ!!! 」
冷や汗を流しながら、竜生のほうへ手を伸ばす。
竜生はチラリと私を見た。
それは、”任せとけ”という意味に見えた。
「 っ… 」
その先から、私は何もいえなくなった。
伸ばしていた手も下ろし、その場に立ちすくんだ。
フゥとため息を溢し、改めて女の子のほうへ向いた。
ニコッと笑顔を作り、口を開いた。
「 …それはね 」
答えると同時に私の隣に並び、ガッと私の肩に腕を回した。
焦りながら、竜生のほうを見て、小声で言った。
「 ちょっ、何っ!? 」
悪魔で、彼女には聞こえないように言った。
ニヤニヤと嫌な笑顔を作り、スゥッと息を吸って答えた。
「 コイツは、日村とはなんの関係もねぇ。 」
「 …っ 」
複雑な心境だったが、いまの状況では仕方ない。
そう思った矢先──
「 コイツは俺の女だっ 」
「 …え 」
一瞬固まった。
すぐに状況が飲み込めなかったのだ。
「 …え 」
私と同じように、目を丸くしている女の子。
だが、すぐにパアッと顔を明るくさせ、口を押さえながら
「 わあっ、そうだったんだっ!! 」
と、言ってその場を去っていった…。
数秒間…肩を組まれたまま、立ちすくむ私。
そして、ハッと気づいた。
「 ちょっ、何してくれたのよっ!!!! 」
バッと、腕を強引に外し、距離をとった。
両手を組み、キッと睨んだ。
片手で顔を覆い、はああっと深いため息を溢した。
手の隙間からチラリと目を見せた。
「 …なんで? そんな拒むことないじゃん。 」
少し悲しそうな声を溢した。
「 …え、えとっ。でも今のはさあ!!! 」
「 何? 」
ギロッと睨み、私の発言を止めた。
「 …ご、ごめん。 」
何も言えなくなり、耳に髪を掛けた。
そんな私を見て、クスッと笑った。
「 分かりやすいなぁー。苺華は 」
そう言ったときの笑顔はとても複雑だった。
目を細め、顔を引きつらせている。
「 アハハッ… 」
「 そ、その…ありがとうっ 」
ペコッとお辞儀をして、その場から逃げるように去った。
もう、竜生の複雑な笑顔を見たくなかった。
※実話ではありません(続く)
あの女の子はなんなんでしょうか??
続き気になります