ただ、月のみが2人の果て無き愛を見ていた
- カテゴリ:自作小説
- 2009/08/10 03:42:38
僕は、一体なにをしているのだろう?
30mほどのそびえ立つビルを見上げながら、恭介は考えていた。
角を曲がり、彼女と出会ったのが、ほんの数分前・・・。
角を曲がって、くるりと180度回ってもどるのはかなり怪しい。
だからといって、そのまま大富豪ビルに飛び込む理由も僕にはない。
どうするどうする? 思考はまとまらず、かなり慌てている。
どっちに行けばいいのか判らず、立ち止まることも出来ず。
素っ頓狂な声で、彼女に話しかけてしまった。
「あーー、やあ・・・」
およそ、どこの世界でも通じないであろう挨拶を、彼女にした。
傍から見ていれば、さぞ奇妙なシーンに映ったことだろう。
彼女は、目を真ん丸くして多少驚いたようだったが、すぐに視線をビルに投げかけた。
このビルの屋上から俯瞰で見る景色は、さぞ素晴らしいものだろう。
恭介は想い出していた、遠い日の約束を・・・。
(そうだったな、彼女を、屋上まで導いてやるって約束だったな)
思い立った恭介は、彼女の手を取ると、ビルを登りはじめた。
彼女を気遣い軽やかにとは、いかないけれども、確実に少しづつ
力強い足音とか細い足音が、タウンにこだました。
やがて、直角に鳴っていた足音は、平面へと辿り着く。
そうここが、終着点。旅の終わりだ。
二人は、しばらくの間、下を行き交う人々を無言で眺めていた。
まるで屋上だけ時が、止まったように・・・。静寂だけが2人を見つめていた。
少し、視線を上げると海が見えていた。
恭介は、上着の内ポケットに、違和感を感じ、現実へと引き戻された。
そう、それは何度も彼女に出そうとおもって諦めた、少ししわくちゃになったラヴレター。
不意に、その手紙を握ると、彼女が声をあげた。
「見て!」
海を見ると、暗くなった海面には、ちぢれ麺のような細い波が遥か水平線まで連なっていた。
そしてさっきまで空と海の区別のつかなかった水平線のあたりが白くぼんやりとかすみ始めた。
「月が、昇るわ」
2人は並んで、水平線を凝視した。少しずつ空の下の方が明るくなり、やがて水平線の一点に銀の道が現れた。
するとその瞬間、水平線から波打ち際まで、細波を煌かせて、海面に月光が走る。
恭介は思った、こんな光景を、また見ることがあるのだろうか?と
「・・・綺麗」
放心したように彼女はつぶやいた。
恭介はラブレターを握り締めたまま、彼女は登り行く月を見つめながら
お互い、運命という言葉を知った。
写真協力:ikaさん みかんさん
神秘的な時間を共有した、2人。きっと幸せになれたでしょうね~
自分でも、見えたということはメグさんも、結構感受性が豊かなんだと思いますよ。
かけがえのない繋がりを持ったのでしょう・・・
描写がとてもきれいで
私にも一瞬見えた気がしました
運命ってあると思います・・・
やはり、告白よりも強力な結びつきをもたらすと思います。神秘的な光景を共有するということは。
いつか北海道でオーロラを一緒に見て、奇跡的な時間をだれかと共有したいですw
大富豪ビルは大好きなスポットです。是非登ってみてくださいね。
運命の輪が 重なる瞬間なのでしょうか・・・
あの上から 本当に水平線が見えそうな気がします✿
登ってみたくなりましたw
クリアお疲れ様です。
テーマは奇跡的な時間を共有して結ばれた2人ですw
クリア^^
ヒロインにもわざわざお越しいただいて光栄です。
まさかこんな話になるとは写真を撮っていたときは思いも寄りませんでしたが・・・。
尚、文中のikaさんの発言等が、いやに若く感じるのは、初めてのラブレターということで
年齢設定を中学生前後としているためです。 賞は、なんでもどうぞ。
一応、タウンの風景を絡めてみましたが、基本的に小説として捉えてもらえればいいとおもいます。
もちろん、壁のぼりにロマンスを求めては居ませんwたまたま、いい感じの写真がとれたので
それに付随した物語を書いてみました。 枕草子詳しいですね。
気に入ってもらえて、嬉しいですね。差し上げても構わないのですが
ブログに使ったりするのはやめたほうが、いいですよ。
皆さんが読みたいのは、みかんさんの言葉であって
僕の言葉ではないですから、心の中に拝借くらいが丁度いいかもしれません。
ラブレターは渡すことは出来なかったんですけど
奇跡的な体験を共有することにより結ばれる2人という話になっちゃいました。
これはこれで、アリですよねw
昨日の出来事が芥川賞ものの文学に!
なるほど、私はそんなものを見ていたのですね。
いや、まさにそうだったんです。さすが恭介さんです。
前後賞有り難うございます。
なににしよかな〜悩むなー
私があちこち建物に登るのは、登るのが面白いから、そこに建物があるから、なんですけどね。
恭介さんの場合はロマンと結びついてるのね。
海から登る日なら見ましたよ。横浜で春の頃、ロマンティックな夜が明けて、、
春は、あけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、少し明りて、紫だちたる雲の、細くたなびきたる。
でございましたわ。
とてもロマンチック♪
気に入ったフレーズなんか、ちょっと拝借ってわけにはいかないですかね?(*^_^*)
読んでるうちにそんなきがしてきましたwww
不思議~
海から昇る月…見たいですね…