Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


君は海に似ている。 *20話*

主な登場人物
小早川 波・・・海の大好きな女性。美人で頭がいい。5歳で両親をなくす。
小泉 夏木・・・明るくて元気な女性。明るい人がタイプ。
橘 カイト・・・クラスで1番明るい男性。昔から好きな女性がいる。一途。
城野 雄…イケメンで、王子様のような20歳。波を魅了した男性。
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第二十章 『 一番憎んでいたもの 』

…夏輝からの視点

「 …? 」

突然カイトに呼び止められた…。
さっきとは違ったような真面目な声で…

「 何? 」

尋ねると、カイトは気まずそうな顔をし、人差し指で頬を掻く。
この仕草…前もどこかで見た…

決して、いい光景ではなかった時に──

「 …その 」

気まずそう…言いたいことがあったら、すぐに頬に触れる癖…。
変わってないみたいだね、カイト。

「 …何?言いたいことがあるなら言えば? 」

両腕を組み、また睨みつけた。
カイトが言い辛い雰囲気をわざと作ったのだ──。

「 え、いや、その… 」

案の定、カイトは冷や汗をかきはじめた。
何を言うのか…予想はついている。

…でも、聞かなければ、ただの私の想像で終われるの。

「 …何もないなら行くね。 」

わざとその場から逃げるかのように、カイトに背を向けた──

すると──

…ガシッ

「 …えっ? 」

突然力強く掴まれた腕…。
手の形が残りそうなくらい力強い握り方…

「 いっ、痛いってば!!放してっ!? 」

怒鳴り散らすかのように、必死に腕を振り払った。
だが、カイトの力は予想以上に強くて、ビクともしなかった。

「 …カ、カイト 」

私も断念して、振り払っていた腕をゆっくりと下におろしていった──。
それと同時に、カイトも私の腕から手を外した。

…案の定、手形がついていた。

「 ったぁ…。形ついちゃったじゃない!!!! 」

腰に両手を当て、怒鳴った。
いつもなら、冗談っぽく笑うカイトも今回はそうはいかない。

深いため息を溢し、私の両肩を握った。

「 ィタッ…。さっきから何っ… 」

「 夏木 」

「 っ… 」

最後まで言葉を発する前に、止められた。
いつもと雰囲気がまったく違うカイト…。

顔つきも、声も、私の肩を掴む手までも違うように感じた。

「 … 」

手から伝わる悔しさ…。
それは私の肩の痛みから痛いほど伝わる。

…これは、波のための感情。

「 っ… 」

そう考えるだけで、いやになった…。

「 放してっ!!! 」

…パシィッ!!!!

「 …あっ 」

つい、カイトの頬を平手うちしてしまった…。
カイトは右頬に手を当て、黙り込んでしまった…。

力強く握っていた肩の手も次第に外れていた。

「 …じ、じゃあ。行くから。 」

私はその場から逃げ出すかのように、教室に向かった…。
右頬を押さえ、放心状態に陥っているカイトを置き去りにして──

皆、何も分かっていない。
一番、今傷ついているのは私だ…。

まるで呪文のように何度もこの言葉を心で唱えながら、
私は今の自分を必死に支えてきた。

『 偽善者 』だとか『 クズ 』だとか言われてもしかたないのかもしれない。
「 波のほうがかわいそう 」みたいな感じで相談に乗った日もあったから…。

でも、その時もずっと思っていた。

「 あなたは贅沢すぎる。カイトにあんなに想われてるというのに… 」

それなのに、波はのこのこと違う男との話を私にしていた。
そんな姿を見るだけで、拳が吹き飛びそうになっていた。

「 …ごめんなさい、波 」

人気のない廊下で、壁にもたれかかりながら呟いた。
いつの間にか、私の枯れた頬には一筋の涙が零れ落ちていた…。

「 ごめんなさいっ、波っ… 」

そして、その場に崩れ落ちた──

「 ごめんなさいっ…波っ!!あなたを一番恨んでたのは…私だった… 」

拳を爪の跡が出来るほど力強く握り締め、涙を流した。

一番…支えになろうと必死に見せていた私が、
一番…あなたを恨んでいる相手でした。

※実話ではありません(続く)




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