ストロベリーラブ *26話*
- カテゴリ:自作小説
- 2013/08/02 15:45:12
✿主な登場人物✿
斉藤苺華…特に何もない平凡な女子。この春、初めて恋という存在を知る事になる。
日村一樹…同じクラスになった。苺華の心を奪う。クールに見えるがそうでもない。
長谷川香理奈…かつて苺華と仲が良かった女子。今回のクラスで偶然再会を果たした。
宮木功…イケメンだが、バカ。香理奈の心を奪ってしまった。玲奈と怪しい関係……?
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第二十六章 『 幼い頃の記憶 』
「 …え? 」
突然上から聞こえた男子の声。
私は、慌てて見上げた。
「 う、うわぁっ… 」
私の目に入ったのは、金髪に染めて、顔を澄ましている男子の姿。
雰囲気が少し怖くて、私は一歩ズサッと引いてしまった。
「 そんなにビビらなくてもよくね? 」
そう言って、「 よっ 」と声を上げて下に降りてきた。
微かに香るレモンの香りと、歩く度に揺れる金色の髪──
…どこかで見たことあるような。
「 …あ、あの 」
「 ん? 」
「 近すぎ…ません…? 」
気づかば、彼の顔が真近にあった…。
あともう少し近づけば、唇が重なりそうなくらいだった。
「 近すぎない? 」その言葉を聞いた彼は鼻で笑った。
「 そうかな?もう少し近づいてもいいくらいじゃない? 」
「 …は? きゃあっ…!! 」
突然、唇を重ねようとしてきた彼。
壁に私を追い詰め、両手で逃げないように囲む。
「 …な、何の真似ですか?突然キスしようとするなんてっ… 」
「 なんでそんな引くの? 」
「 当たり前じゃないですかっ!!! 」
「 …昔、約束したのに? 」
「 …え? 」
悲しい声でそう呟き、力強く囲んでいた両手をゆっくりはずした。
私はホッとして、胸に手を当て、拳を握る。
…そして、沈黙がはじめる。
今の彼の言葉…意味深だった…。
『 昔約束したのに? 』…これって…どういう意味…?
「 …まっ、覚えてないならいいやー。 」
「 ま、待って!! 」
寂しそうな彼の背中に、私は手を伸ばした。
彼は背を向けたまま、頭だけこちらに向けた──。
「 …あ、あの。えと。 」
「 …何? 」
「 …何か見せてくれたら思い出すかもしれない!!何か…見せて… 」
「 …… 」
少し黙り込んだ彼は、数秒経ってから、体をこちらに向けた。
胸ポケットをゴソゴソと探って、一枚の写真を私に差し出した。
「 これは…? 」
尋ねると、彼は少し照れくさそうに、人差し指で頬をかきながらこう言った。
「 …写真だよ。 」
「 写真… 」
そう言われて、裏側を向けられた写真を表側に向けた。
「 こ、これって… 」
その写真に写っていたのは、幼い頃の私…。
ぴょこんと出た髪に、小さな手でピース。それに、満面の笑顔。
…こんな笑顔、今はできないんだろうな。
「 …思い出したか? 」
その問いかけに、私は黙って首を横に振る。
でも、この写真は間違いなく幼い頃の私だった…。
「 で、でも…。これは、私…ですね。 」
「 …そうだよ。 」
少し、不審に思う。
この人と幼い頃過ごした記憶はないのに、こんな写真まで持ってるなんて…
幼い頃、こんな格好いい友達いたっけ?
「 あの、名前聞いてもいい…ですか? 」
そう尋ねると、彼は一瞬微笑んで──
「 きゃ…!! 」
頭が彼の唇に引き寄せられた。
おでこに突然来た温かい温もり──。
…ドキッ
「 ハハッ、驚いた? 」
そう言って、微笑む彼…。
このクシャッとした笑顔と、唐突的な行動…
やっぱり、どこかで…
…ドキッ
「 …/// 」
この…気持ち…。どこか懐かしい…。
「 じゃあ、思い出したらまた来てよ。俺、いつでもここにいるからさ。 」
「 …は、はい。 」
そう言って、彼は屋上を離れた。
彼がいなくなって、私はさっきの額のキスを思い出してしまった。
額を押さえ、顔を真っ赤になっていく…
「 ~~//// 」
今さっきの額のキス…前もされた記憶があるような…
もう少しで思い出せそうなんだけど、思い出せない。
でも…これだけはわかる気がする…
彼は昔、私にとって特別な存在だった──。
「 …名前、なんて言うんだろう。 」
今日、部屋のタンスの中でも探してみようかな。
もしかしたら、あの子との思い出…タンスの中に残ってるかも…。
…帰宅後。
…ガチャ。
「 ただいまぁー 」
家に帰り、急いでタンスの中を探った。
タンスの中から少し子供染みた字で【思い出の箱】と書かれていた。
「 これかな… 」
ゆっくり箱をあけると、中には一冊のアルバムと、綺麗なネックレスが入っていた。
「 …あ。 」
ネックレスを見た瞬間…私は一気に記憶がフラッシュバックした。
十字架の金色のネックレス…。今日、彼の首にも着いていた…。
…名前、思い出した。
「 …高城…竜生… 」
静かな部屋で、ポツリと呟いた彼の名前──。
全て…思い出した…。
彼は…私にとって、私にとって初めての、愛しい人だった。
初恋相手…しかも、相当深い想いの初恋相手だった──。
「 …私ってばかだなぁ。 」
十字架のネックレスを握り締め、私は体を崩した。
そして、ポタポタと床に涙を落とした…。
「 うぅ…グスッ… 」
最悪な私…。彼のこと忘れて…酷い女…。
きっと相当傷つけてしまっただろう。
どうして…忘れてしまっていたの…?
あの頃は…彼を連れて行く引越しトラックを走れなくなるまで追いかけたのに…
十字架のネックレスも肌身離さず持っていたのに…。
いつから…彼の存在が私の頭から消えていってしまったのだろう…。
大事に持っていた十字架のネックレスもいつからこんな箱に閉まっていたんだろう?
「 ごめんなさい…竜生… 」
十字架のネックレスを力強く握り締めて、ブルブル震えた。
もう…絶対に離さない…。
そんな事を思いながら、十字架のネックレスを首につけた。
首下にぶら下がった黄金の十字架をギュッと握り締め、目を瞑った。
「 …竜生ごめん。 」
ただその言葉を何度も呟いて──
※実話ではありません(続く)
日村君のライバルになるかな??