Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


君は海に似ている。 *16話*

主な登場人物
小早川 波・・・海の大好きな女性。美人で頭がいい。5歳で両親をなくす。
小泉 夏木・・・明るくて元気な女性。明るい人がタイプ。
橘 カイト・・・クラスで1番明るい男性。昔から好きな女性がいる。一途。
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第十六章 『 少年のような寝顔 』

…ガチャ。

「 どうぞ 」

「 ど、どうも… 」

私は玄関に足を踏み入れ、そこで棒立ちしてしまった…。
玄関には男物の靴しかなかったから…

「 あ、あの…ご家族は…? 」

「 へ?家族?ああ、いないよ。一人暮らしだからー 」

軽々しく口にし、扉を閉める彼。
彼は何も意識していない様子──。

「 あ、あの…。本当にいいんですか? 」

「 何が? 」

「 だ、だって…城野…さん一人暮らしで… 」

「 え? ああ、大丈夫だよ。 」

彼はまたあの幼さない笑顔を私に向けた。

「 …お邪魔します。 」

玄関で靴を脱ぎ、部屋の中へ入っていった。
リビングのほうへ歩いていくと、もうすでに彼はソファに座っていた。

「 あ。ごめん!!お客さんに座らせなきゃねー。 」

そう言って、ソファから退き、地べたに座った。

隣に座らそうとかは…考えなかったのかな…

咄嗟に浮かんでしまった。
私ってば、何を期待してたんだろう…

「 ありがとうございます… 」

一礼して、私はソファに腰を下ろした。

TVを見て、笑っている彼。

…やっぱり変だよね。一つ屋根の下に女がいるのに…
意識一つ感じていないような…。

「 …あの、城野さんっておいくつなんですか? 」

私はまるで自分からズケズケと入り込むようにして尋ねた。
突然の私からの質問に少し驚きながらも、答えた。

「 え?20歳だけど? 」

「 に…20歳…ですか… 」

そう聞くと、一気に城野さんが大人っぽく見えた。
ぶつかった時は、私と同じくらいの年だと思うほど童顔だから…。

「 どうかした? あ、まさか自分と同じ年とか思った? 」

「 え、いやその… 」

「 あははっ!!そんな慌てなくても大丈夫!!よく言われるからー!! 」

そう言って、優しい微笑みで返してくれた。
また…胸の辺りをキュッと締め付ける…。

「 そうだ…。君の名前、聞いてなかったね。 」

何かを思い出したかのように、尋ねてきた城野さん。
私はペコッと一礼して、答えた。

「 小早川波です… 」

「 小早川さんね。よろしく。 」

「 よ、よろしくです。 」

差し出された手を握り、握手をした──。

…しかし、私は一つ引っかかった。
それは、もちろん『 小早川さん 』という呼び名だ。
もっと…ほかにあっただろうに。『 波ちゃん 』とかさ…。

そんな呼び方…なんか寂しい。

「 じゃあ小早川さん、俺部屋に移動しとくから、その間シャワー浴びといで。 」

「 えええっ!?/// 」

「 え? あ!!ごめんごめん、そういうつもりで言ったんじゃないんだけど…/// 」

「 え、いや、あの…その…えと… 」

やばいやばい、急に混乱してきてしまった…。
顔がどんどん熱くなってく…やばい…

「 そ、そのぉ… 」

「 大丈夫だよ、覗きなんてしないから!! 」

「 え 」

「 ね?心配することないって!!鍵も掛けれるからさっ 」

そう言って、また微笑んだ。
彼は、まさか余程の鈍感なんだろうか…?

「 あ、あと着替えか。んー、どうしよ。 」

そう言って、クローゼットを探る。

「 あ、いいのあったぞー!! 」

おくのおくから取り出してきたのは、大きな犬の絵がのったTシャツ。

「 恥ずかしいけど…これくらいしかないや。 」

そう言って、ズボンと一緒に私に差し出した。

「 …ありがとうございます。 」

「 どういたしましてっ。じゃあ、俺は部屋にいるから。 」

そう言って、部屋の中に入っていった。
…これも一種の気遣いなんだろうなぁ。

「 … 」

私は貸してもらった着替えを見つめた。
これは…城野さんが着ていた服なんだ…。

「 …ふふっ 」

なんだか、こんな気持ち初めてだ。
カイトが着た服を着ても、ドキドキしなかったのに。

…ガチャ。

シャワールームに入り、シャワーを浴びた。
シャワーはおよそ30分かかった。

「 …ふぅ。 」

お風呂から出て、着替えを済ました私は城野さんの部屋へ行った。

…コンコン。

しっかり3回ノックをし、数回呼んだ。

そして…

…ガチャ。

「 ん…、あ。小早川さん…シャワー終わったんだね。 」

「 え、は、はい…。え、えと…大丈夫ですか? 」

「 え?ああ、平気平気。ちょっと眠っちゃってただけー… 」

「 あの、遠慮せず寝てください…。私が勝手に── 」

「 いや、いいんだよ。じゃあちょっと料理用意するから待ってて。 」

そう言って部屋から出て、私のために料理をしてくれた。

いつもはコンビニ弁当で済ましてるのに…私のため料理をしてくれてるの…かな。

私はソファに座って、そんな事を考えていた。
フライパンを片手に料理している彼の背はすごくかっこよかった。

「 …ほら。できたよ。 」

私の前に出てきたのは、皿に盛られた野菜炒め。
すごくいい匂いがしていた。

「 あー、おいしそー!! 」

「 ありがとう。うまくできたかはわかんないけどねっ 」

「 いえいえ、そんな…。いただきまっ… 」

口に運ぼうとした瞬間…彼は座ったまま寝ていた。
うつむき、「 グゥグゥ 」と少しだけ鼻をならしながら…
その姿はもう、少年と同じだった。

「 …城野…さん… 」

我慢できなかった。
はじめて、こんな気持ちになった…

「 …ごめんなさい。 」

私はそっと城野さんの肩に触れ、城野さんの唇に唇を重ねた。
初めてのkissだった…。

「 っ…/// 」

一瞬だし、寝てたし、気づかないだろう。

そう思って、離れた瞬間──

「 えっ… 」

私は口に両手をあて、体を崩した。
私が離れた時…城野さんの目はくっきりと開き、私を見ていたから。

※実話ではありません(続く)





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