君は海に似ている。 *16話*
- カテゴリ:自作小説
- 2013/08/01 22:17:46
✿主な登場人物✿
小早川 波・・・海の大好きな女性。美人で頭がいい。5歳で両親をなくす。
小泉 夏木・・・明るくて元気な女性。明るい人がタイプ。
橘 カイト・・・クラスで1番明るい男性。昔から好きな女性がいる。一途。
小早川 波・・・海の大好きな女性。美人で頭がいい。5歳で両親をなくす。
小泉 夏木・・・明るくて元気な女性。明るい人がタイプ。
橘 カイト・・・クラスで1番明るい男性。昔から好きな女性がいる。一途。
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第十六章 『 少年のような寝顔 』
…ガチャ。
「 どうぞ 」
「 ど、どうも… 」
私は玄関に足を踏み入れ、そこで棒立ちしてしまった…。
玄関には男物の靴しかなかったから…
「 あ、あの…ご家族は…? 」
「 へ?家族?ああ、いないよ。一人暮らしだからー 」
軽々しく口にし、扉を閉める彼。
彼は何も意識していない様子──。
「 あ、あの…。本当にいいんですか? 」
「 何が? 」
「 だ、だって…城野…さん一人暮らしで… 」
「 え? ああ、大丈夫だよ。 」
彼はまたあの幼さない笑顔を私に向けた。
「 …お邪魔します。 」
玄関で靴を脱ぎ、部屋の中へ入っていった。
リビングのほうへ歩いていくと、もうすでに彼はソファに座っていた。
「 あ。ごめん!!お客さんに座らせなきゃねー。 」
そう言って、ソファから退き、地べたに座った。
隣に座らそうとかは…考えなかったのかな…
咄嗟に浮かんでしまった。
私ってば、何を期待してたんだろう…
「 ありがとうございます… 」
一礼して、私はソファに腰を下ろした。
TVを見て、笑っている彼。
…やっぱり変だよね。一つ屋根の下に女がいるのに…
意識一つ感じていないような…。
「 …あの、城野さんっておいくつなんですか? 」
私はまるで自分からズケズケと入り込むようにして尋ねた。
突然の私からの質問に少し驚きながらも、答えた。
「 え?20歳だけど? 」
「 に…20歳…ですか… 」
そう聞くと、一気に城野さんが大人っぽく見えた。
ぶつかった時は、私と同じくらいの年だと思うほど童顔だから…。
「 どうかした? あ、まさか自分と同じ年とか思った? 」
「 え、いやその… 」
「 あははっ!!そんな慌てなくても大丈夫!!よく言われるからー!! 」
そう言って、優しい微笑みで返してくれた。
また…胸の辺りをキュッと締め付ける…。
「 そうだ…。君の名前、聞いてなかったね。 」
何かを思い出したかのように、尋ねてきた城野さん。
私はペコッと一礼して、答えた。
「 小早川波です… 」
「 小早川さんね。よろしく。 」
「 よ、よろしくです。 」
差し出された手を握り、握手をした──。
…しかし、私は一つ引っかかった。
それは、もちろん『 小早川さん 』という呼び名だ。
もっと…ほかにあっただろうに。『 波ちゃん 』とかさ…。
そんな呼び方…なんか寂しい。
「 じゃあ小早川さん、俺部屋に移動しとくから、その間シャワー浴びといで。 」
「 えええっ!?/// 」
「 え? あ!!ごめんごめん、そういうつもりで言ったんじゃないんだけど…/// 」
「 え、いや、あの…その…えと… 」
やばいやばい、急に混乱してきてしまった…。
顔がどんどん熱くなってく…やばい…
「 そ、そのぉ… 」
「 大丈夫だよ、覗きなんてしないから!! 」
「 え 」
「 ね?心配することないって!!鍵も掛けれるからさっ 」
そう言って、また微笑んだ。
彼は、まさか余程の鈍感なんだろうか…?
「 あ、あと着替えか。んー、どうしよ。 」
そう言って、クローゼットを探る。
「 あ、いいのあったぞー!! 」
おくのおくから取り出してきたのは、大きな犬の絵がのったTシャツ。
「 恥ずかしいけど…これくらいしかないや。 」
そう言って、ズボンと一緒に私に差し出した。
「 …ありがとうございます。 」
「 どういたしましてっ。じゃあ、俺は部屋にいるから。 」
そう言って、部屋の中に入っていった。
…これも一種の気遣いなんだろうなぁ。
「 … 」
私は貸してもらった着替えを見つめた。
これは…城野さんが着ていた服なんだ…。
「 …ふふっ 」
なんだか、こんな気持ち初めてだ。
カイトが着た服を着ても、ドキドキしなかったのに。
…ガチャ。
シャワールームに入り、シャワーを浴びた。
シャワーはおよそ30分かかった。
「 …ふぅ。 」
お風呂から出て、着替えを済ました私は城野さんの部屋へ行った。
…コンコン。
しっかり3回ノックをし、数回呼んだ。
そして…
…ガチャ。
「 ん…、あ。小早川さん…シャワー終わったんだね。 」
「 え、は、はい…。え、えと…大丈夫ですか? 」
「 え?ああ、平気平気。ちょっと眠っちゃってただけー… 」
「 あの、遠慮せず寝てください…。私が勝手に── 」
「 いや、いいんだよ。じゃあちょっと料理用意するから待ってて。 」
そう言って部屋から出て、私のために料理をしてくれた。
いつもはコンビニ弁当で済ましてるのに…私のため料理をしてくれてるの…かな。
私はソファに座って、そんな事を考えていた。
フライパンを片手に料理している彼の背はすごくかっこよかった。
「 …ほら。できたよ。 」
私の前に出てきたのは、皿に盛られた野菜炒め。
すごくいい匂いがしていた。
「 あー、おいしそー!! 」
「 ありがとう。うまくできたかはわかんないけどねっ 」
「 いえいえ、そんな…。いただきまっ… 」
口に運ぼうとした瞬間…彼は座ったまま寝ていた。
うつむき、「 グゥグゥ 」と少しだけ鼻をならしながら…
その姿はもう、少年と同じだった。
「 …城野…さん… 」
我慢できなかった。
はじめて、こんな気持ちになった…
「 …ごめんなさい。 」
私はそっと城野さんの肩に触れ、城野さんの唇に唇を重ねた。
初めてのkissだった…。
「 っ…/// 」
一瞬だし、寝てたし、気づかないだろう。
そう思って、離れた瞬間──
「 えっ… 」
私は口に両手をあて、体を崩した。
私が離れた時…城野さんの目はくっきりと開き、私を見ていたから。
※実話ではありません(続く)