ストロベリーラブ *25話*
- カテゴリ:自作小説
- 2013/08/01 19:45:08
✿主な登場人物✿
斉藤苺華…特に何もない平凡な女子。この春、初めて恋という存在を知る事になる。
日村一樹…同じクラスになった。苺華の心を奪う。クールに見えるがそうでもない。
長谷川香理奈…かつて苺華と仲が良かった女子。今回のクラスで偶然再会を果たした。
宮木功…イケメンだが、バカ。香理奈の心を奪ってしまった。玲奈と怪しい関係……?
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第二十五章 『 凍てつく想い 』
…翌日
「 ふわあ… 」
昨日は色々ありすぎて、眠れなかった…。
いまだに頭がボーッとしている。
「 今何時だろう…? 」
通行路をトボトボと歩きながら、iPhoneを取り出す。
ただいまの時刻は、午前7時…。
「 …よかった、無事間に合いそう。 」
そう呟き、ポケットにiPhoneを直した。
…コツコツコツコツ
ローファーの音を鳴らしながら、待ち合わせ場所に向かう。
今日は香理奈…笑ってくれてるといいな…。
宮木君のことは忘れて…。
「 あっ、香理奈… 」
待ち合わせ場所にある花壇から少しだけ頭が見える。
すぐに分かる、香理奈の姿だ。
私は駆け足で、香理奈のほうへ向かった。
「 香理… 」
その瞬間…目に入った香理奈の姿は信じられない物だった…
「 …うぅ…グスッ…うぅぅ… 」
涙を太股に何粒も落とし、必死に手の甲でそれをぬぐう姿…。
手にはあのうさぎのカバーがついたiPhoneがある。
その姿を見れば、予想はできる。
原因は玲奈ちゃんと宮木君。
そして、それは…iPhoneになにか送られてきたか、見ちゃったかどっちかだろうな。
「 …うぅ…なんでよぉ…グスッ… 」
その泣き姿を見ていられなくなった私は、後ろの花壇に隠れた。
香理奈にバレないように…息を殺しながら…。
「 …グスッ…うぅぅ…宮木…君… 」
今私に見えるのは、花壇のレンガと、そこに咲くコスモス。
そして…僅かに出ている香理奈の頭部。
「 …宮木君…うぅ… 」
宮木君の名前を寝言のように何度も呟きながら、涙を啜る( すする )。
私には…何もしてあげる事ができないのかな…。
昨日、香理奈が私にしてくれたみたいに…何か…してあげられないの…?
「 …あれ?苺華 」
「 ぅわっ… 」
目の前に現れたのは、日村。
私は慌てて日村をしゃがました。
「 な、何だよっ… 」
「 シーッ!!! 」
人差し指を口元で立て、”静かに”とサインした。
日村は首をかしげ、不思議そうに私を見つめた。
そんな視線を導くかのように、私は香理奈のほうへ指を指した。
「 長谷川じゃねぇか…。何が悪いんだ? 」
小声で尋ねた日村。
私は日村の耳元で、こう答えた。
「 …泣いてるの。 」
「 えっ…!? 」
日村は小声で驚き、再び香理奈を見た。
僅かに見える頭部の先が泣いている衝撃で揺れる。
その度、日村は不安気な顔を浮かべる。
もちろん、私だってそうだ。
「 …どうにかしてあげられないかな? 」
「 …今は何もできねぇよ。とりあえず、行こうぜ。 」
私は頷き、日村と一緒に香理奈のほうへ歩いた。
まるで、今ついたと言わんばかりの態度を取って…。
「 …あ。苺華 」
「 あ、えと…遅れてごめんね。 」
必死に手の甲で涙をぬぐい、まるで泣いてなかったかのように振舞う香理奈。
でも、もし泣いていると分かってなくても、すぐに分かるくらいの涙の跡が残っている。
頬には涙が乾いた跡があり、化粧も崩れている。
手の甲にも、涙の乾いた跡があるし、スカートも涙でぬれている。
ずっと座っていたら、下に落とすとスカートに落ちるもんなぁ。
「 …香理奈 」
やっぱり、まだ最後まではさらけ出せないんだな。
私が…もっと頼れる存在だったら…ここで香理奈の錘を取ってあげれたのに。
「 …苺華。 」
「 えっ? 」
突然、口を開いた日村…。
私の腕を握って私にしか聞こえないようにこう呟いた。
「 …今は何も考えるな。後で俺も相談に乗るから。 」
「 日村…。 」
私は日村の言葉を信じ、香理奈の手を握ってこう言った。
「 香理奈、早く学校に行かなきゃ遅れるよ!! 」
まるで、涙の跡には気づいていないかのように装った。
香理奈は少し、安心したような顔を浮かべ、笑った。
「 そうだね、行こうか。 」
「 うん!! ほら、日村も行くよー 」
「 おう。 」
日村と、私と、香理奈で始めて通学をした。
もし…香理奈と二人きりの通学だったら色々考えこんで、
ずっと黙り込み、気まずい空気になってただろう。
…本当に日村がいてくれて、よかった。
「 …ん? 」
「 あ、いや!!なんでもない!!/// 」
つい、日村の横顔に見入ってしまった…。
日村って、女の子にあんま近づくタイプじゃないからモテたりはしないけど…
日村の顔って本当に整ってる。女の子に近づくタイプじゃなくてよかったぁ…。
「 なんかついてる? 」
「 あ、いえ。別にっ!! 」
また横顔に見入ってしまっていた。
無意識の内にやってしまってる…気をつけなきゃやばいかも。
「 …… 」
香理奈…やっぱり元気ないなぁ。
ずっと黙り込んでるし…。
「 …… 」
ずっとiPhoneを見つめている。
覗けば、元凶がわかるかもしれないが、それはダメだよね。
…学校到着。
「 あー!!着いた着いたぁ!! 」
わざと、大声でそう言った。
香理奈の元気を底上げするためだ。
…けど
「 …はあああ。 」
深いため息を零し続けている香理奈。
いまだにiPhoneは手放さず、ジィーッと見つめている。
「 香理奈、ほら。一回iPhone閉まってっ? 」
「 …いやだ。 」
「 もー!!香理奈、ダメだよ。そんな事ばっかしてちゃ── 」
「 ほっといてよ!!! 」
「 えっ…? 」
「 …あっ 」
突然、声を荒げた香理奈…。
その瞬間、一斉に皆が黙り込んだ…
周りの視線がこっちに向く。
「 …っ 」
…タッ
「 あっ、香理奈!!! 」
香理奈は全速力でどこかへ行ってしまった。
その背中を私は追いかけようと手を伸ばした…
けど…
…ガシッ
「 ひっ、日村っ!!!! 」
私の腕を握って、首を横に振る日村。
これは、”行くな”という合図なんだろう──。
「 どうして!? 香理奈があんなにっ… 」
「 今、お前が行くべきじゃない。 」
「 …へっ? 」
日村の遠まわしな言葉…。
鈍い私でもすぐに分かってしまった言葉の裏側。
「 今、お前が行くべじゃない。 」
その言葉の意味が…私の心をゆっくりと責めていく。
まるで…心にナイフがじっくりと刺されていくようだ…。
「 日…村… 」
次第に日村は腕を放し、私を見た。
「 …っ 」
その日村の視線が耐えられなかった。
とても…優しい目をしている…。
「 うぅ… 」
…タッ
私はその場から立ち去った。
逃げるかのように、一生懸命走った。
「 今、お前が行くべきじゃない。 」
そんなの、分かってる、分かってるよ…。
だって、ああいう風になってしまったのは私のせい。
私が、iPhoneを取り上げようとなんてしたから…香理奈は…
「 っ… 」
一気に階段を上りきり、私は屋上に着いた。
小さな段差のある場所に座り込み、鞄をポカッと置く。
「 はあああああ…何やってるんだろ、私… 」
両手で顔を覆い、ひざに顔を埋め込む。
すると──
「 何が? 」
「 へっ? 」
※実話ではありません(続く)
気になりますmm