君は海に似ている。 *15話*
- カテゴリ:自作小説
- 2013/08/01 17:47:01
✿主な登場人物✿
小早川 波・・・海の大好きな女性。美人で頭がいい。5歳で両親をなくす。
小泉 夏木・・・明るくて元気な女性。明るい人がタイプ。
橘 カイト・・・クラスで1番明るい男性。昔から好きな女性がいる。一途。
小早川 波・・・海の大好きな女性。美人で頭がいい。5歳で両親をなくす。
小泉 夏木・・・明るくて元気な女性。明るい人がタイプ。
橘 カイト・・・クラスで1番明るい男性。昔から好きな女性がいる。一途。
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第十五章 『 3人の友情に突き刺さったナイフ。 』
「 夏…木… 」
カイトが悲しそうに呟く。
肩を何度も上下させながら、泣きじゃくる夏木。
この場で…一番楽なのは、私なのかもしれない。
夏木の姿を見て、改めてそう感じた。
カイトの潤んだ目、夏木のボロボロな姿…。
そして…一人だけ無傷の私…。
私、何やってるんだろう?
「 カイ…ト…うっ…グスッ… 」
夏木の震えた声は、また私の胸に突き刺さる。
まるで…責められてるように感じた。
「 …っ 」
早く、この場から立ち去りたい…。
そんな気持ちになってしまっていた。
逃げちゃダメだと分かっている。それは分かっているけど…
体が…いう事を聞かない…
…タッ
「 あっ、波っ!!! 」
カイトの呼び止める声と背に、私は全速力で走った。
どこでもいい…あの2人が視界に入らない場所なら…どこでもいいっ…
どこか…どこかっ…!!!
…ドンッ!!!
「 きゃっ… 」
「 ィッ…!! 」
…何? 肩にすごい衝撃が…
「 あっ、ごめん!!大丈夫っ? 」
…フワッ
「 …え? 」
突然私の顔に差し出された右手…。
大きくて、何もかも包み込んでくれそうな大きな…手。
足元をたどって、私はその姿を見上げた。
そこにあったのは、不安気に私を見つめる男子の姿。
私と同じくらいの年なんだろうと思う…。
「 …え、えと。大丈夫? 」
彼をジーッと見つめていた私を不思議そうに見つめ、また尋ねてくる。
私は慌てて彼の右手を握った。
「 よっ…と。 」
彼は優しく私を片手で持ち上げてくれた。
なんて、頼もしい人なんだろう…。
「 いやー、本当に大丈夫? 」
また、不安気に尋ねてきた…。
優しいんだな、この人。
「 …大丈夫です。 」
「 ならよかったぁ!! 」
顔をクシャッと崩して笑う彼…。
無邪気すぎるくらい幼さを感じさせる…。
私の心が少し揺れ動く。
「 …… 」
「 ん?どうしたの? 」
「 あっ、いえ!!なんでもないですっ/// 」
つい見入ってしまった彼の瞳。
綺麗すぎるくらい、透き通っていて、今にも吸い込まれそうだ。
十分すぎるくらい整った顔に、声…。
「 …じゃあ俺はこれで 」
「 あ、あの!!!! 」
「 …? 」
私は彼を引き止めるかのように、声を上げた
背を向けたまま、顔だけこちらに向ける彼──。
私は、胸に手を当てて…言った。
「 あの…、よければ、お名前教えてもらってもいいですか? 」
初対面の人に、自分から名前を聞くのは初めてだった。
オマケに、ついさっき会って、ぶつかった人だ。
そんな私でも、彼は優しい笑みで答えてくれた。
「 城野雄( じょうの ゆう )です。 」
「 …城野…さん… 」
名前を聞いただけだというのに、顔がポッと熱くなる。
頬はピンク色に染まり、胸に当てていた拳はいつの間にか力強くなっていた。
「 …では。 」
彼は微笑んだまま、一礼をし、かえっていった…。
私はその背中が見えなくなるまで、見つめていた──。
まさか…一目惚れをしてしまったのだろうか…?
この熱くて、苦しい想い…。
ずっと封じていた感情に似ている。
「 …城野雄さん 」
私はもう一度、彼の名前を呟いた。
その度、顔が赤くなるのは自分でも分かっていた…。
「 あ、そうだ…。 」
私は、時刻を確認するためにポケットからiPhoneを取り出した。
画面にはたくさんの件数を表した着信履歴と、メール履歴。
相手は様々だ。
『 母 』『 カイト 』『 夏木 』
予想できる3人ではあった。
「 …もう9時50分か 」
私、何分走ってたんだろう…。
彼とぶつかったのが何分だったんだろうなぁ。
「 …そろそろ帰らなきゃやばいかなぁ 」
…でも、帰りたくない。
帰ったら…殺されるかもしれないし…。
かと言って、漫画喫茶に寝泊りするってのもなぁ…。
行くまでの道には、あの公園があるし。
「 …しかたない。どこか探そう。 」
私は泊まらしてくれそうな友達の名前をiPhoneで見ながら、
トボトボと、薄暗い道を歩いていた──。
「 えぇと、この子は…無理かなぁ。…この子も… 」
明日も学校だし、泊まらしてくれる家などは考えにくい。
それに…そろそろテストシーズンだし、親が許さないだろう。
「 もう、こんな時になんでよ!!! 」
「 あれっ?君、さっきの子…? 」
「 へっ…? 」
後ろから聞こえた、透き通った美声…。
この声は…まさか…
「 …城野…雄さん… 」
さっき出会った、不思議な魅力を放つ人…。
手にはコンビニの袋があった。
「 あはは、偶然だね。 」
笑って、少しだけ私に近づいた彼。
とは言っても、ほんの少し。
逆に、もっと近づいて欲しいって…思っちゃうくらい。
「 ていうか、こんな夜遅くにどうしたの?一人じゃ危ないでしょ? 」
苦笑いでそう言う彼。
「 …が…です 」
「 えっ? 」
「 泊まるっ…家がないんですっ… 」
小声でそう呟いた私。
声をブルブルを震わせ、案の定涙を流していた。
家がない…。
それは私のあの狂った母を思い出させたから。
「 …家がないの?親は? 」
その質問に、私は激しく首を横に振った。
彼は驚いて、目を丸くしている。
「 じ、じゃあ…どうやって生活してるのっ…? 」
「 …もう、無理かもしれません。 」
「 え?何が… 」
…タッ…ギュ
「 えっ!? 」
咄嗟に起こしてしまった行動…。
私はいつの間にか、自分から彼の胸に飛び込んでいた。
こんな事、したことないし、しないと思っていた。
いくら弱ってるからといって、こんな事…しちゃダメってわかってるのに…
「 …ど、どうしたの!? 」
動揺を隠せず、戸惑っている彼。
「 た…すけて… 」
「 …え? 」
もう声が出てないような、嗄れた声でそう呟いた。
突然の言葉に、きっと彼は困ってるだろう。
…でも、彼は黙って私を引き離し…
「 わかった、助ける。 」
と、答えた。
「 …え? 」
涙でボロボロの頬に触れ、優しく微笑んだ。
そして───
「 僕の家に泊まりな。 」
と言ってくれた。
普通なら、首を全力で横に振るんだが…
「 …ありがとうございます。 」
そう答え、小さく頷いた。
※実話ではありません(続く)