Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


君は海に似ている。 *15話*

主な登場人物
小早川 波・・・海の大好きな女性。美人で頭がいい。5歳で両親をなくす。
小泉 夏木・・・明るくて元気な女性。明るい人がタイプ。
橘 カイト・・・クラスで1番明るい男性。昔から好きな女性がいる。一途。
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第十五章 『 3人の友情に突き刺さったナイフ。 』

「 夏…木… 」

カイトが悲しそうに呟く。
肩を何度も上下させながら、泣きじゃくる夏木。

この場で…一番楽なのは、私なのかもしれない。

夏木の姿を見て、改めてそう感じた。
カイトの潤んだ目、夏木のボロボロな姿…。
そして…一人だけ無傷の私…。

私、何やってるんだろう?

「 カイ…ト…うっ…グスッ… 」

夏木の震えた声は、また私の胸に突き刺さる。
まるで…責められてるように感じた。

「 …っ 」

早く、この場から立ち去りたい…。

そんな気持ちになってしまっていた。
逃げちゃダメだと分かっている。それは分かっているけど…

体が…いう事を聞かない…

…タッ

「 あっ、波っ!!! 」

カイトの呼び止める声と背に、私は全速力で走った。
どこでもいい…あの2人が視界に入らない場所なら…どこでもいいっ…

どこか…どこかっ…!!!

…ドンッ!!!

「 きゃっ… 」
「 ィッ…!! 」

…何? 肩にすごい衝撃が…

「 あっ、ごめん!!大丈夫っ? 」

…フワッ

「 …え? 」

突然私の顔に差し出された右手…。
大きくて、何もかも包み込んでくれそうな大きな…手。

足元をたどって、私はその姿を見上げた。

そこにあったのは、不安気に私を見つめる男子の姿。
私と同じくらいの年なんだろうと思う…。

「 …え、えと。大丈夫? 」

彼をジーッと見つめていた私を不思議そうに見つめ、また尋ねてくる。
私は慌てて彼の右手を握った。

「 よっ…と。 」

彼は優しく私を片手で持ち上げてくれた。
なんて、頼もしい人なんだろう…。

「 いやー、本当に大丈夫? 」

また、不安気に尋ねてきた…。
優しいんだな、この人。

「 …大丈夫です。 」

「 ならよかったぁ!! 」

顔をクシャッと崩して笑う彼…。
無邪気すぎるくらい幼さを感じさせる…。

私の心が少し揺れ動く。

「 …… 」

「 ん?どうしたの? 」

「 あっ、いえ!!なんでもないですっ/// 」

つい見入ってしまった彼の瞳。
綺麗すぎるくらい、透き通っていて、今にも吸い込まれそうだ。
十分すぎるくらい整った顔に、声…。

「 …じゃあ俺はこれで 」
「 あ、あの!!!! 」

「 …? 」

私は彼を引き止めるかのように、声を上げた
背を向けたまま、顔だけこちらに向ける彼──。

私は、胸に手を当てて…言った。

「 あの…、よければ、お名前教えてもらってもいいですか? 」

初対面の人に、自分から名前を聞くのは初めてだった。
オマケに、ついさっき会って、ぶつかった人だ。

そんな私でも、彼は優しい笑みで答えてくれた。

「 城野雄( じょうの ゆう )です。 」

「 …城野…さん… 」

名前を聞いただけだというのに、顔がポッと熱くなる。
頬はピンク色に染まり、胸に当てていた拳はいつの間にか力強くなっていた。

「 …では。 」

彼は微笑んだまま、一礼をし、かえっていった…。
私はその背中が見えなくなるまで、見つめていた──。

まさか…一目惚れをしてしまったのだろうか…?
この熱くて、苦しい想い…。

ずっと封じていた感情に似ている。

「 …城野雄さん 」

私はもう一度、彼の名前を呟いた。
その度、顔が赤くなるのは自分でも分かっていた…。

「 あ、そうだ…。 」

私は、時刻を確認するためにポケットからiPhoneを取り出した。
画面にはたくさんの件数を表した着信履歴と、メール履歴。

相手は様々だ。
『 母 』『 カイト 』『 夏木 』
予想できる3人ではあった。

「 …もう9時50分か 」

私、何分走ってたんだろう…。
彼とぶつかったのが何分だったんだろうなぁ。

「 …そろそろ帰らなきゃやばいかなぁ 」

…でも、帰りたくない。
帰ったら…殺されるかもしれないし…。

かと言って、漫画喫茶に寝泊りするってのもなぁ…。
行くまでの道には、あの公園があるし。

「 …しかたない。どこか探そう。 」

私は泊まらしてくれそうな友達の名前をiPhoneで見ながら、
トボトボと、薄暗い道を歩いていた──。

「 えぇと、この子は…無理かなぁ。…この子も… 」

明日も学校だし、泊まらしてくれる家などは考えにくい。
それに…そろそろテストシーズンだし、親が許さないだろう。

「 もう、こんな時になんでよ!!! 」

「 あれっ?君、さっきの子…? 」

「 へっ…? 」

後ろから聞こえた、透き通った美声…。
この声は…まさか…

「 …城野…雄さん… 」

さっき出会った、不思議な魅力を放つ人…。
手にはコンビニの袋があった。

「 あはは、偶然だね。 」

笑って、少しだけ私に近づいた彼。
とは言っても、ほんの少し。
逆に、もっと近づいて欲しいって…思っちゃうくらい。

「 ていうか、こんな夜遅くにどうしたの?一人じゃ危ないでしょ? 」

苦笑いでそう言う彼。

「 …が…です 」

「 えっ? 」

「 泊まるっ…家がないんですっ… 」

小声でそう呟いた私。
声をブルブルを震わせ、案の定涙を流していた。

家がない…。
それは私のあの狂った母を思い出させたから。

「 …家がないの?親は? 」

その質問に、私は激しく首を横に振った。
彼は驚いて、目を丸くしている。

「 じ、じゃあ…どうやって生活してるのっ…? 」

「 …もう、無理かもしれません。 」

「 え?何が… 」

…タッ…ギュ

「 えっ!? 」

咄嗟に起こしてしまった行動…。
私はいつの間にか、自分から彼の胸に飛び込んでいた。

こんな事、したことないし、しないと思っていた。
いくら弱ってるからといって、こんな事…しちゃダメってわかってるのに…

「 …ど、どうしたの!? 」

動揺を隠せず、戸惑っている彼。

「 た…すけて… 」

「 …え? 」

もう声が出てないような、嗄れた声でそう呟いた。
突然の言葉に、きっと彼は困ってるだろう。

…でも、彼は黙って私を引き離し…

「 わかった、助ける。 」

と、答えた。

「 …え? 」

涙でボロボロの頬に触れ、優しく微笑んだ。

そして───

「 僕の家に泊まりな。 」

と言ってくれた。

普通なら、首を全力で横に振るんだが…

「 …ありがとうございます。 」

そう答え、小さく頷いた。

※実話ではありません(続く)




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