Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


君は海に似ている。 *14話*

主な登場人物
小早川 波・・・海の大好きな女性。美人で頭がいい。5歳で両親をなくす。
小泉 夏木・・・明るくて元気な女性。明るい人がタイプ。
橘 カイト・・・クラスで1番明るい男性。昔から好きな女性がいる。一途。
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第十四章 『 揺れ動く友情。 』

「 …波。 」

私を見つめ、胸を苦しそうに押さえる夏木。
夏木も本当は言いたかったんだろうな…ずっと。

私を今すぐにでも殴りたいんだろうな…。
夏木の震えている手を見れば、すぐにでも分かる。

「 …え、えと。その… 」

夏木の声はブルブル震えている。
ついに…ついに、夏木の本音を聞く事になる。

私は息を呑み、そして拳を握りしめた。
夏木の本音…しっかり耳を澄まさなくてはならない。

「 …夏木、言って。 」

そう伝えると、夏木も拳を握り締め、口を開いた。

「 わ、私は…カイトのことが好きで…でも、波も好きだよっ!!! 」

「 …夏木。 」

目をうるうると潤わせ、胸の真ん中を掴んだ手はブルブル震えている。
鼻声で言ったその声は、少し掠れていた…。

「 …で、でも 」

さっきまでの大声とは別に、夏木の声は小さくなる…

「 でも、波の事…一度も恨んだことないって言えば…嘘になるよ…。 」

悲しそうに、うつむきながら呟く夏木。
その震えた緊張感のある声から、夏木の悲しさは十分すぎるくらい伝わってきた。

…夏木も、悩んでたのかもしれない。
カイトへの想い。そして、私を本気で憎むこと。
だから…あの時あんな風な態度をとって諦めたように見せたんだ。

自分が引いたら丸く収まると思って…

「 っ… 」

夏木の悔しさ、悲しみ、怒り…
すべてがあの拳に込められていた──。
目をギュッと強く瞑って、肩をブルブルと震わせてる。

これ以上、言うのが怖いのかもしれない。

「 …夏木、大丈夫だから。 」

私は夏木が最後まで言い出せるように、そう告げた。
『 大丈夫。 』この言葉で夏木の全てを聞けるなら…それでいい。
『 大丈夫。 』この言葉で夏木が解放されるなら、それでいい。

「 …う、うん。 」

夏木は小さく頷き、また口を開き始めた──

「 それで…私、小学校時代に自分の本当の心に気づき始めて… 」

カイトへの気持ちか。
本気で分かったのが、その時だったんだな。

「 んで、それと同時にカイトの気持ちも分かった。 」

…私へのって事だよね。

「 まあ、幼稚園の頃もうすうすは思ってたんだけどねぇ… 」

夏木の浮かぶ涙…。
唇までブルブルと震えさせはじめた…。

「 …で、カイトと波がしゃべってるとこみたら…嫉妬しちゃったり…うらやんだり… 」

ジワジワと浮かべた涙は、頬を濡らし始めた…。
思い出しているんだろう、その想いを…

「 ごめんなさい、波っ…!!勝手に恨んで…ごめんなさいっ…!!! 」

夏木は両手で口を覆い、地面に崩れた。
夏木も辛かったんだ…私への…恨みが…

「 …夏木。謝らないでよ。 」

私は夏木に駆け寄って、抱きしめた。

「 夏木…酷いのは私。全て私が…悪かったの!! 」

そういうと、夏木は激しく首を振った。

「 違うっ、違うっ…。私がダメなのっ…。カイトを好きになったか…ら。 」

「 …夏木。 」

カイトが夏木に近づいた。

「 …夏木、ごめん。冷たく突き放して。 」

カイトが一礼した。

「 ううん、私のほうこそ…好きになって…ごめん。…諦められなくて、ごめん。 」

そして、夏木は乾いた地面を涙で潤す。

ただいまの時刻、午後9時30分。
薄暗い公園で、3人の友情が一気に揺れ動いた。

※実話ではありません(続く)




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