君は海に似ている。 *13話*
- カテゴリ:自作小説
- 2013/07/30 14:26:36
✿主な登場人物✿
小早川 波・・・海の大好きな女性。美人で頭がいい。5歳で両親をなくす。
小泉 夏木・・・明るくて元気な女性。明るい人がタイプ。
橘 カイト・・・クラスで1番明るい男性。昔から好きな女性がいる。一途。
小早川 波・・・海の大好きな女性。美人で頭がいい。5歳で両親をなくす。
小泉 夏木・・・明るくて元気な女性。明るい人がタイプ。
橘 カイト・・・クラスで1番明るい男性。昔から好きな女性がいる。一途。
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第十三章 『 波の想い 』
「 …本当に夏木来るんだよなぁ? 」
「 もー、来るってば!!何度目?その台詞!! 」
カイトは現実が受け止められないのか、何度も私に尋ねた。
その度に、「 来るよ 」と私は答える。
正直言って、私も嫌だ。今は夏木に会いたくない…。
でも、そんな事言っていられる現状でないのも、確かなのだ。
今、一番傷付き、人を憎んでいるのは夏木。それは当然のこと。
私が夏木に顔向けする事自体間違ってる事なのかもしれない。
でも、もう会うって言ったんだし、ケジメをつけなくてはならない。
ザワザワザワ……
公園の木達が怪しく揺れる──。
あの騒がしい音は、まるで私の心境を表してるようだった。
「 …今何時かな。 」
iPhoneを見て、時刻を確認。
ただいまの時刻、午後8時30分。
夏木と電話してから、もう15分も経っている…。
「 夏木、遅いね。 」
「 来ないんじゃないか? 」
「 現実逃避はやめて、カイト。 」
「 へいへい。 」
私はiPhoneをポケットに直し、公園の滑り台に目をやる。
そして…あの日を思い出す。
あの滑り台の上で誓った3人の友情…。
あの日は真剣に誓い合ったんだ。私も、たぶん皆も。
友情の証だなんだとか言って…公園の立派な石持って帰ったっけ…。
今も引き出しにしまい込んでるけど、もう目をやることさえなくなった。
皆もきっとそうなんだろうなぁ…。もう、3人の友情は永遠だなんて思ってたのも…
私だけだったし───
私達がそういう関係になりたいと望めば関係が崩れるのはわかっていた。
まるで、積み木の一部を抜きとって、崩れるように跡形もなく…。
もう、顔向けする事さえない関係になるのかなと思う。
だから…そういう関係には絶対なってはいけない。
心のどこかで私自身をコントロールしていた部分もあった。
正直、カイトに魅力を感じた事がないと言えば嘘になる。
でも、それが恋だとは絶対に認めなかった。
私の中で、カイトへの想いは禁断だったのだ。
でも、夏木はそう思っても、止められなかったんだな。カイトへの想い。
タッタッタッタッタ…
「 あ… 」
足音が聞こえた。
このすばやい足音は…夏木だろう。
「 ごめんごめん!!待たせた… 」
言葉を発しようとした瞬間、夏木は固まった。
夏木の視線はまっすぐカイトのほうへと向いていた。
暗い公園で顔が見えなくても、それだけはハッキリとわかる。
「 ごめん、夏木。でも…もうケジメつけなきゃ嫌なの。 」
そう告げると、夏木はTシャツの袖を握り締め、下唇をかみ締める。
きっと悔しいんだろうなと思う。
「 …なんで? 」
夏木は寂しそうに呟く。
「 なんでって…そのままだよ。このままじゃ嫌だもん。 」
そう答えると、夏木は豹変した。
目はキッと強きになり、今まで見たことのない顔。
あれが、夏木の怒った顔なんだ──。
「 ふざけないでよ!!!私の事…なめてんの…? 」
夏木は少し声を震わせ、荒げた。
袖を掴んでいる手は段々強くなってるのが分かった。
あれはきっと私への怒り。
そう思うと、目に入れられなくなった。
夏木の姿、声、想い…。すべてが、私の心に刺さる。
「 っ… 」
何も言えぬまま、私は自分の腕をつかんだ。
不安で仕方がない…。走馬灯のように蘇る夏木との記憶。
もう…笑い合えないの…?
馬鹿みたいに笑い合ったカイトとの記憶…
もう…冗談も言い合えないのかな…?
私は何を期待していたんだろう?
こうなることは覚悟していたはずなのに…。
もしかした、私はここから関係修復できるとでも思っていた…?
一番馬鹿は…私だった…。
いくらテストでいい点数とっても、もう誰も褒めてくれない。
おもしろい冗談言っても、もう笑ってくれない。
面白い番組を見つけても、教える事だってできない…。
わかってた…はず…なのに…どうして?
どうしてこんなに涙が出るんだろう…?
「 うぅ… 」
涙が溢れ、次第に私は体を崩した。
まるで、枯葉がヒラヒラと地に落ちるように──。
「 …波。 」
夏木は少しだけ声を震わせ、私の名前を小さく呟いた。
もう私にはその声にどんな感情が込められてるのかわかたなくなってきた。
今すぐ両耳を塞いでしまいたい。
「 現実逃避はやめて… 」
何言ってるんだろう…、それは自分じゃないか。
人に言えない。現実逃避をしているのは他でもない自分。
カイトを見ると、カイトはしっかり向き合っている。
夏木の悔しそうな姿、怒りに満ちた姿をしっかりと目に入れている。
私は…何もできない。
ただ地に崩れ落ち、涙を零すことしかできない。
もう…あの時電話に出ず、死んどけばよかった。
そうすれば、今頃二人はこの公園で二人きりになって、付き合ってるだろうに…。
なんて、無価値な存在なんだろう。
「 …うぅ 」
考えるだけで、頭が狂いそうだ…。
「 …波、やめてよ。 」
「 え…? 」
私は夏木の足元をたどって、見上げる。
夏木の顔は、怒ってなどいなかった…。
「 …夏木? 」
思わず、尋ねてしまう私。
夏木は私のほうを優しく見つめ、首を振った。
そして…夏木は微笑んでいった──
「 大丈夫だから。 」
…そういったんだ。
「 え? 」
私はなんて情けないんだろう。
私、夏木に何を言わせたかったんだろう…?
本当に、こんな言葉を言わせたかった?望んでいた?
確かに安心感はあったけど…こんなんじゃ…ないでしょ…
「 夏木っ!!! 」
私は立ち上がり、夏木と向き合った。
ここで、もう全て終わらせなきゃいけない。
「 …全部、吐いてよ。 」
「 …波? 」
私の泣いて掠れた声でも、夏木には届いたようだ。
夏木の潤んだ目には私がしっかりと映っている。
…もう、終わらせなきゃいけないんだ。
※実話ではありません(続く)