Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


ストロベリーラブ *20話*

主な登場人物
斉藤苺華…特に何もない平凡な女子。この春、初めて恋という存在を知る事になる。
日村一樹…同じクラスになった。苺華の心を奪う。クールに見えるがそうでもない。
長谷川香理奈…かつて苺華と仲が良かった女子。今回のクラスで偶然再会を果たした。
宮木功…イケメンだが、バカ。香理奈の心を奪ってしまった。玲奈と怪しい関係……?
────────────────────────────────────
第二十章 『 鎖を溶かすもの 』

「 …わかってたはずなのに。 」

私の過去を話せば…周りの人は消えていく。
そんなの…わかってた。ちゃんと理解していた…。

幼い頃、帰ってこなかった母が帰宅したその姿を見たときから──
私の記憶に染み付いたあの女の存在と、あの…悪魔の笑み。
正直、あの女を見れば…思い出せば…震えが止まらない──。

「 …グスッ 」

日村だって…きっと私が嫌いになったんだ。
こんな汚い過去を持った私とはもう…さよならしたいんだ…。

正直、私は狂いそうになっていた…。

タッタッタッタッタッタ──…

「 うぅ… 」

ただの足音なのに、あの女のハイヒールの音に聞こえて仕方がない。
もう…忘れるって決めたのに…。早く克服するって…決めたのに…。

───ガラッ!!!!
「 斉藤っ!!! 」

扉の開く音と共に、私の苗字が病室に響き渡る…。
その声は、いつも私の心を落ち着かせて、和ませる…

「 ひ…日村…? 」

両耳を塞いでいた手をはずし、私は彼を見た。
相当息を切らしているみたいで、肩を上下にあげて「 ハァハァ 」言っている。
もしかして…全速力で走ってきてくれた…の…?

「 …はぁ、はぁ。さ、斉藤…どうしたっ!? 」

彼は必死そうに私の顔をまっすぐ見て、両肩を掴む。
彼の必死さは、顔と手からしっかりと伝わってきた──。

「 …うぅ 」

私はまた涙がこぼれた…。
うつむいて、手の甲で涙をぬぐった…。

「 お、おい。斉藤…? 」

彼の少し震えた声から心配してるっていうのが伝わってくる…
これ以上、不安にさせてはいけない。

…だからこそ、最後まで話さなくちゃいけないんだ。
これは、私の試練でもあり、使命でもあるのかもしれない。

「 …ひ、日村。 」

私は彼の服の袖を掴んで、言った。
まだ少し体が震えている…。正直、大丈夫なんて言えない。

でも──

「 隣に座って?話したいことがある… 」

言わなくちゃいけない。

「 わかった。 」

彼は私の隣に座って、しっかり私を目を見た。
これは、向き合うっていう意味なのだろうか…?
だったら、私もしっかり向き合わなくてはならない。

「 …話すよ。あの話の続き。 」

私は深呼吸して、話し始めた。

「 帰宅してこなかった母が帰宅した日…、あの時のお母さんは… 」

…ダメだ、やっぱり体が震える。
どうしよう…もう後戻りはっ──!!!

「 …苺華。 」

「 へっ…? 」

突然呼ばれた、「 苺華 」という下の名前。
彼の口から出た私の名前は、ものすごく素敵に聞こえた。

「 ひ、日村? 」

彼は私の頭を撫でて、言った。

「 大丈夫、無理するな。俺は…いつまでも待つ。 」

「 …っ!! 」

彼の瞳に映った私は…なんて無残な姿をしているのだろう。
真っ赤に腫れた目、震えた両手と体…。

…情けない。彼にばっかり優しくしてもらって…
私も、腹をくくらなきゃいけない。

「 ありがとう。…でも、いけるから。 」

「 苺華… 」

「 あの時のお母さんの姿はっ…ボロボロで、化粧が涙でボロボロになっていた。 」

「 …え? 」

「 …お母さんに聞いた。”どうしたの?”って。すると…母はこう答えた… 」

私は、唾を飲み込んで言った。

「 …”あの女に殺されかけた。”って 」

「 殺されかけた…か。 」

日村は体を固まらせ、そして…黙り込んだ。
そりゃ引かれるよね。…でも、ここまで来たんだ。

「 …母は、きっと言いにいったんだよ。父との関係を終わらせてもらうために。 」

「 でも、なんでそれだけで…あの女はこんな酷いことを…? 」

「 うん、たぶんだけど、争った時に、きっと…母に屈辱的な事を言われたんだと思う。 」

「 …そうかぁ。 」

日村は顎を親指と一指し指で押さえ、考えこんだ。
眉間にシワを寄せ、目を瞑った。

「 これが、私の過去。大嫌いで、封印していた…過去。 」

そう告げると、彼は微笑んで頭を撫でて言った。

「 話してくれてありがとう。これからは、俺なりに苺華を支える。 」

「 …っ!! 」

予想外な言葉だった…。
こんな事言われるとは微塵も思ってなかった。
どうせ、引かれて、この関係も終わるんだろうなって思っていた。

「 気持ち悪い。 」「 そんな重い奴とは付き合えねえ。 」

こんな酷い一言で終わるんだろうなって思ってたのに…
どうして、こんなに彼は…微笑んでくれてるの…?

「 …あり…がとうぅ… 」

彼の笑顔に安心したのか、また涙が落ちる。
彼は笑い声をあげて、また私の頭をなでる。

「 …うぅ 」

彼の手から伝わってくる優しさ…温かさ…
この全てが、私の鎖を解いてくれている気がした──。

※実話ではありません(続く)

アバター
2013/08/14 03:37
彼氏できるんだったら、日村みたいな人がいいなー
アバター
2013/07/30 14:46
日村優しいね…。



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