ストロベリーラブ *13話*
- カテゴリ:自作小説
- 2013/07/22 23:29:23
斉藤苺華…特に何もない平凡な女子。この春、初めて恋という存在を知る事になる。
日村一樹…同じクラスになった。苺華の心を奪う。クールに見えるがそうでもない。
長谷川香理奈…かつて苺華と仲が良かった女子。今回のクラスで偶然再会を果たした。
宮木功…イケメンだが、バカ。香理奈の心を奪いかけているらしい。
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第十三章 『 腐りきったオレンジ 』
「 …香理奈? 」
血がドクドクと流れる香理奈の姿を見て、私は立ちすくむ。
手にあるiPhoneのキーホルダーがゆらゆらと寂しく揺れる──。
ピーポーピーポー……
救急車のサイレンと共に集まる野次馬達…。
だが、私はただただ香理奈の目の前で立っている。
「 …香理奈。 」
何度も何度も香理奈の名前を呟きながら…。
「 さがってください!! 」
救急隊員が大きな声で叫ぶ──。
血を流した変わり果てた香理奈が運び込まれる。
私はここでやっと正気を取り戻した…。
「 あっ…、香理奈ぁっ…!!! 」
香理奈は危ない状態だ…。大変だっ…。
「 ダメです!!さがっててください!! 」
「 やめてください!!親友なんですっ──!! 」
「 …すみません。 」
「 えっ…? 」
───バタンッ!!!!
ものすごい勢いで救急車の扉を閉められた。
私はただただ救急車の背後をずっと見つめながら、頬を濡らした。
野次馬が私の姿を見て騒ぎ出す。
救急車を呼んでくれた人は私を慰めに来てくれた。
「 大丈夫かい? 」
”大丈夫か?”…そんな優しい言葉、今の私にはいらない。
今欲しいのは…今私が欲しいのは…
香理奈の安全だ。
「 …すみません、ありがとう。 」
私はサラリーマンに一礼して、その場を大急ぎで去った。
そして、家に直行。
───ガチャッ!!!
「 えっ!?嘘、もう帰ってきたのっ!? 」
「 う、うん。しんどくて… 」
「 てかあんたずぶ濡れっ… 」
「 ごめん、上行く。 」
ダダダダダダダダダッ…!!!!
母の不安気な表情が目に入った。
でも、今はそれ所じゃないんだよ…、香理奈のこと伝えなきゃ。
「 …えぇと。 」
私はiPhoneの連絡先を見た。
まず、最初は誰に伝えようか迷っていた。
「 ……。 」
そこで、私は気づいた。
…どうして、自分こんなに冷静なんだ?
どうして親友があんなんになってるのにこんな冷静な判断を下せる?
何してるんだろう、私…。
「 …あっ、いやいや。今はそれどころじゃない。 」
そうだ、冷静なのはいいことだ。
冷静じゃないきゃいけないんだっ…こういう時こそね。
「 よしっと。 」
PLLL.....
私がまず掛けた場所はもちろん、香理奈の家だった。
『 もしもし? 』
「 あ、苺華です。…あの、さっきはすみません。 」
『 ああ、気にしないで。…それで、香理奈何かあったの? 』
おばさんの不安そうな声が電話の向こうから伝わってくる──。
私は下唇をかみ締めて、言った。
「 えと、その…。落ち着いて聞いてください。実は── 」
私は全てを話した。もちろん、簡潔にじゃなく…具体的にだ。
きっと電話の向こうでおばさんは混乱してるだろう。
おばさんは…数分間、沈黙を続けた──。
私だって、何も言わなかった。いや、何も言えなかったのだ。
今の自分に掛ける言葉だって正直分からない。
そして、数分後…ようやくおばさんは声を出した。
『 え、う…その…、どこの病院? 』
「 さ、さあ…。そこまでは分かりません。 」
『 …そう。 』
「 でも、ご家族なのできっと連絡来ますよ。香理奈もスマホ持ってたし。 」
『 …そうね。ありがと。 』
「 い、いえ。 」
『 じゃあ…ね。 』
───ブツッ。
おばさんの声は次第に小さくなり、そして消えた。
おばさん…玲奈ちゃんにも伝えるのかな、やっぱり。
うぅ…。今の香理奈には玲奈ちゃんに会わせたくないんだけど…
でも、妹だししょうがないよね…伝えなくちゃ。
「 …はぁ。 」
深いため息がこぼれる。
香理奈の家族に伝えれて正直ホッとしていた…。
「 苺華ぁ~? 」
これはやっぱ母にも言ったほうがいいのだろうか?
…ううん、このまま心配さしとくのはダメだし。
「 ……。 」
───ガチャ。
「 あら、やっと降りてきた。 」
「 お母さん、落ち着いて聞いてね。 」
「 え…? 」
「 実はね── 」
私は事件の全てを母に伝えた。
おばさんの時と同様、隅々まで具体的に──。
もちろん、母も混乱して何も言わなくなった。
「 …嘘でしょ。 」
母はテーブルに肘をつき、頭を抱えたまま動かなかった。
その格好はまるで銅像の【 考える人 】のようだった。
「 …私も嘘だって言って欲しいよ。 」
そう呟いた瞬間──
PLLLL.....
「 あなたの電話よ。 」
「 んぁ。 」
ポケットに入れていたiPhoneを取り出し、電話に出た。
「 もしもし? 」
相手はおばさんだった。
『 あ、苺華ちゃん?波鳥総合病院に来てっ!!! 』
「 は、はいっ!!! 」
連絡がきたんだ。香理奈の入院場所…。
「 ごめん、行くわ!!! 」
───ガチャ。
私は真っ赤な自転車にキーを差込み、そして全速力でこいだ。
今まで出した事もないスピード。私まで事故を起こしそうだ。
…でも、そんなの言ってられない!!!!
―総合病院―
「 はあっ、はあっ…!!! 」
私は息を荒くしながら、総合病院の中に入った。
受け付けの前のイスにはポツリと寂しそうに座るおばさんの姿が──
「 おばさんっ…!! 」
「 あ、苺華ちゃん…。さっそく行きましょうか。 」
私はおばさんの後ろからついていき、病室についた。
病室のネームプレートにはしっかりと書かれていた。
【 長谷川 香理奈様 】 …と。
( やっぱ夢じゃなかったんだ…。 )
改めて実感させられる。
ネームプレートだけでコレなんだから、実物を見たらどうなるんだろ。
香理奈の変わり果てた姿を見たら自分が壊れそうで怖いなぁ。
──コンコン。
「 入るわね。 」
──ガラッ。
おばさんの声と共に、ドアが開かれる。
…すると、おばさんは病室に入らず、その場で固まった。
「 …おばさん? 」
尋ねると、返事もせずその場でおばさんは意識を失った。
「 え、おばさんっ!? 」
もちろんおばさんは別の病室に運ばれ、点滴を打っていた。
私も…いよいよ香理奈の姿を見るんだ。
おばさんが気を失うほどの香理奈の姿…私は覚悟しなきゃいけない。
──コンコン。
「 香理奈…。 」
ポツリと呟き、私は病室に入った。
すると…そこには想像を絶する光景が広がっていた──
「 っ…!! 香、香理奈ぁあっ…!!! 」
私は両手で口を塞ぎ、その場に体を崩した。
頭は包帯でグルグル巻きにされ、呼吸器を口に覆い、
まさに生きるか死ぬかの瀬戸際のような風景。
香理奈はそんなに酷かったの…?
あの時…私が1秒でも早く救急車を呼んでればこんな事にはなってなかったの?
私は香理奈だけじゃなくて、おばさんまで傷つけたんだ──。
「 はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ… 」
やばい、息しずらくなってきた。
…まずい、息が…できないっ…
「 !!!大丈夫ですかっ!? 」
看護師が必死に私の心を落ち着かす。
いますぐこの看護師にいってやりたい。
「 落ち着けるわけねぇーだろうが。 」 …と。
まあ、いえるわけないけど。
※実話ではありません(続く)
苺華ちゃんも大丈夫…?
元気になって欲しいです…。