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■近代文藝之研究|研究|文藝上の自然主義(30)

■近代文藝之研究|研究|文藝上の自然主義|四 (2)

其の『殉教者ピーター』の畫で暴風にどよめく樹木の背景が、背景の地位から進んで本景に入つてゐる例など繪畫界の趣味の漸く人事から自然物に廣まる端を示したもの、從つて歐洲に於ける自然畫若しくは景色畫の鼻祖は此の邊にあると評せられる(此の畫惜しいかな今は亡びたり)。其れより後十七世紀のオランダ派となり、十八世紀のイギリス派となつて、自然畫は益々發展した。中にも十八世紀の後半、イギリスのゲーンスボローに至つて、近世景色畫の基礎が確立した。



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*註1:其の『殉教者ピーター』の
原本ではこの文頭は前ページの文末より改行なしでつづいている。
「教」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/kyou_oshieru.jpg
「者」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/mono.jpg
『殉教者ピーター』の原題は『The Death of St Peter Martyr』。
[参照HP]⇒http://www.wikiart.org/en/titian/the-death-of-st-peter-martyr-1529

*註2:畫で・繪畫界・自然畫・景色畫・此の畫
「畫」の俗字(一説に本字)体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/ga_kaku.jpg

*註3:進んで
「進」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註4:鼻祖
「祖」の旧字体。「示」+「且」。

*註5:評せられる
「評」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hyou.jpg

*註6:十七世紀・十八世紀
「紀」の俗字体(か?)。旁の「己」が「已」。

*註7:益々
「益」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/eki_masu.jpg

*註8:後半
「半」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/han.jpg

*註9:ゲーンスボロー
トマス・ゲインズバラ(Thomas Gainsborough/1727年~1788年)のこと。イギリスの画家。「ゲインズボロー」「ゲインズボロウ」と表記されることもある。代表作『グレアム夫人』『アンドルーズ夫妻』『青衣の少年』等。

*註10:近世
「近」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1

(2015/02/03/初校)




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