大好きな背中 [読みきり小説]
- カテゴリ:自作小説
- 2013/05/30 17:15:35
毎日学校に着くと、見る君の背中…。
私のほうはちっとも向かないし、私を見て笑わないけど…
私にとっては大事な人で、大好きな人…。
でもきっとそれは私にとって…だけなんだろうな。
キーンコーンカーンコーン♪
今日も朝の予鈴が鳴り響く──…。
私は余裕をかまして、机に座る。
そして君が少し遅れて教室に入ってくる。
私はそれをただただ目で追って、見つめるしかできない。
───ガラッ。
「おーい、席につけー」
教室に響く担任の声。
ガヤガヤとしていた皆も席につく。
そして、担任が話し始める…。
「えー、まあ、今日は特になんもないか、いつも通りだー」
連絡が終わると、担任は教室を後にし、皆がまた騒ぎ始める。
中には立ち歩く子さえ出てくる…。
私も立っていいのかな…?いいや、もう立っちゃえ。
私は友達の席に向かう…。
「おはよー」
「おはよう~」
いつも通り交わす挨拶…。
そして、遠くからでも見える君の笑顔…。
友達と会話しているときに楽しそうに笑っている。
「…んー、今日は眠いねぇ」
私が友達に語りかける。
「ん、そうだね。」
返答する友達。こんだけの会話だけでも楽しい。
────ガラッ。
「おぉーい、席につけよぉー!」
教室に響く数学の先生の声…。
数学の先生は怒鳴るとうるさくて、常に声が大きい…。
私は黙って席につく。
そして、一時間目はすぐに終わった。
「起立ー、礼~…」
授業が終わると真っ先に向かうのが友達の席。
「んぁ~、数学の時間眠かったくないっ?」
「あぁ、確かに眠かったねぇー…」
「ねー!マジ寝ちゃうかと思った!」
他愛もない友達との会話。
こんな時にも君が隣にいる…でも、やっぱり近くて遠い…。
手を伸ばせば届きそうなのに、心はそうはいかない。
きっと君は私なんかより、周りの子がいいんだろう。
きっと君は私なんかより。好きな子がいるんだろう。
そんな事ばっかり考えてしまう日々…。
そんなある日──…。
君が話しかけてきた……。
「なあ、掃除って終わった?」
「へっ、あぁ、うん、終わったよ」
「そっか、ありがと」
「う、うん…」
…心臓がは破裂しそうになった。
君と話したはじめての会話…すごくドキドキした。
ヤバイ、また好きになってしまった。
その日からは来る日も来る日も君ばっかり見ていた。
前から好きだったけど…今はもっと好きになった。
好きだって言いたい。大好きだって伝えたい。
授業が始まっても見つめてしまう君の横顔。
授業が終わって目に入るのは君の背中…・…。
今思えば、君は私に真正面で顔を見せてくれた事がない。
私を見て微笑んでくれた事だってない。
「っ…」
君の笑顔がほしい、君と笑いあいたい。
でも…それは二度とできないのかもしれない…いや、できない気がする。
そんな事を考えていた翌日…
「なあ」
「…?」
君が話しかけてくれた。
「話…あるんだけど…」
「…何?」
君は少し顔を赤くさせて…
「俺、君が好きだ」
私のほうをまっすぐ見てしゃべってくれた。
「えっ…」
「付き合ってください」
「…っ」
君の真剣な顔、表情、すべてが心に染みた。
「うんっ…、うんっ…」
私は大きく何度も頷いた。
「ありがとう」
初めて私にまっすぐ見せた微笑──。
二度と忘れられないまっさらなその微笑みは私の心にしっかりと刻まれた。
-完-
こんなお話現実でも起きればいいのに・・・・。