Nicotto Town


信じる事から、叶うか叶わないか決まる。


最後まで切れない赤い糸 #29

主な登場人物
・皆川亜美…すべて平凡な女の子。中学1年生の頃、猟牙と出会う。現在25歳
・皆川亜美香…近所で美人と有名な亜美の妹。すべて亜美より上。現在24歳
・宮城猟牙…中学校の頃、亜美を引き寄せた男子。皆の人気者。真二の幼馴染。
・高橋凪…スポーツ万能で、皆の人気者。一部の男子からはモテモテ。現在25歳
・立花莉子…男子から人気のクラスのマドンナ。猟牙と仲がいい。現在25歳
・新井真二…いきなり亜美に告白してきた男。人気のある男子。猟牙と幼馴染。(故人)
・横山秀司…真二の友達で、同級生。亜美香のことが好き。現在25歳

第二十九章 『失って気づいたこと』

「うちが引き取ればいいんじゃない?」

突然亜美香が口にした言葉──...。

「でっ、でもっ...、亜美香は椿のママじゃないしっ──」

「そんなの関係ないよ。うちにはパパだっているんだし」

なんだか冷たそうに言った亜美香──。
亜美香はまさかパパがいないって椿に教えるのが...嫌なの...?

「亜美香...、椿は私と真二君の娘だからちゃんと育てるよ!」

「.....そうだよね、ごめん。」

そういって、亜美香は椿を返した。
こんな時なのに、椿といったら...ずっと無邪気に笑っている。

「本当に...真二君にそっくり...」

ふいに椿の頬に涙が落ちた───。
いつもだったら真二君がすぐに駆け寄ってきてくれるのに...来ない。

「亜美ーーーー!!!」

「凪っ....?」

病院の長い廊下の向こう側から大急ぎで走ってくる凪...。
凪は私に駆け寄ると、ゼェゼェと息を切らしながら───

「新井君はっ──!?」

と、勢いよく尋ねた──。
正直、答えたくない。今は答えれそうにもないんだけど...。
ちゃんと言わなきゃいけない現実、受け止めなきゃいけない現実──。

「....真二君は...死んだよ...」

「はっ───?」

凪の顔が一瞬で変わった──。
まるで、石化したように固まり、顔は絶望の一言。
凪も私と一緒で涙を流していない...ただただ私の目の前で絶望感に浸っている。

「オイ!!亜美っ....!!」

凪の後ろから聞こえた聞き覚えのある声。

「あっ...、宮城君──」

「真二はっ!?真二はどうなったんだ!?」

振り返る間もなく私の両肩をつかんで激しく尋ねた。
宮城君も息を切らして、ゼェゼェと言っている。

「真二君...死んだよ...」

「えっ......?」

あぁ、あと何回この顔を見なきゃいけないんだろう───?
絶望の闇にさまよっているこの姿を何度見れば私はいいのだろうか──?
私もあと何回──、この闇の中にさまよえばいいの──?

「あ、亜美...、大丈夫か?」

「へ──?」

自分も辛いはずなのに、宮城君は私の背中を優しくさすってくれた。
そういえば宮城君はたしか真二君の幼馴染だったっけ...?
絶対に悲しいはずなのにっ...どうしてあなたは私に優しく微笑んでいるの──?
無理して笑ってるの見え見えだよ....。

「うん、平気」

優しくさする宮城君の手をそっと放して、私は宮城君から目をそらした。
宮城君の優しさが今はなんだかすごく胸に刺さるんだ──。

「ずっと好きだった。」

「忘れられなかったんだ」

あの時に聞いた言葉がまだ忘れられなくって...心が張り裂けそうだ。
すごく複雑な心境だ。

「新井君っ....!!!」

─────へっ?

すごく綺麗な声の方向へ顔を向けると──

「たっ、立花さんっ!?」

また一段と美人になった立花さんの姿があった。
髪は毛先カールの金髪。目の下にあるセクシーぼくろ。
すごくオシャレな格好をしていた───。

.....でもなんで真二君が緊急事態だって事を知って──

「亜美ちゃん!!新井君はどうなったの!?」

「えっ...、しっ、真二君は....」

私は記憶が数年前に蘇った...。あの高校時代に───。

「なんでそんなにすぐ忘れられるの!?」

「元カノなんだよ、俺の」

「っ...........!!」

きっと、立花さんにこの事実を伝えたら今まで見た人達以上に絶望感に浸る。
もしかしたら、最悪のケースに走ってしまうかもしれない──。

「ねぇっ!!早く答えてよ!!」

不安げな目をして、私の腕を揺する立花さん。
「生きているよ」なんて笑顔で答えれるワケ...ないよね...。

「…死んじゃいました」

「──えっ?」

やっぱり、今まで以上に絶望感に浸っているのがわかった──。
両手に持っていた鞄も床に落とし、両手で口を押さえて崩れた──。

なんだかこの反応...私が始めて「死」を知ったときと似ている。

「嘘...でしょ...?」

そう、私もそうだったよ、立花さん。
真二君の「死」を信じたくなかったし、信じられなかった──。
でも...向き合わなきゃいけないんだよね...。

「残念ながら、本当なんです」

そう答えると立花さんはやっと「死」に直面したみたいで──、
今まで嘘だと思っていた悲しみが一気に零れ落ち、そして崩れた。

「うわぁぁぁぁぁぁぁああん!!!!新井君っ....!!」

本当に...好きだったんだ...。
なんだか心がズタズタに切り刻まれた気分だ。

「ごめんなさい」

私はそう一言呟くと、病院の屋上に上がっていった──。
綺麗な景色、綺麗な空。でも...なぜ?私にはその綺麗なものが曇って見えるよ...。
だんだん近づいていく景色...もっと近づけば、真二君に近づける....。

「今すぐそっちに逝くからね」

あと一歩踏み出そうとした瞬間───

「何やってんだよ!?」

大きな叫び声が聞こえた.....。
振り返ると、そこに立っていたものは──

「宮城君....」

「バカなことすんな!!早くこっち来いよ!!!」

優しく手を差し伸べてくれた宮城君───。
なんだか不思議...私には希望の光に見えた。

そっと、そっと手を伸ばし、握った。

「よっ....!」

宮城君は私を力強く引っ張った──。

「ぃっ....たぁ....」

尻餅をついたみたいですごく痛かった。
すると、宮城君は私の両肩を激しく揺すって──

「何バカなことしてるんだよ!?本当にお前はバカなのか!?」

と怒鳴った。

「ご、ごめんなさいっ....」

「ったく、マジで勘弁してくれっ──....」

そう呟いた宮城君は片手で目をこすりながら、鼻をすすった。
もしかして....泣いてる...?私が死のうとしたから....?

「これ以上、大事な人を失いたくない──。」

そういって私を優しく抱きしめた。

「ごめんなさい...ごめんなさい....」

私は謝っているうちに自然と涙が流れた。
まるで悲しみにつながれた鎖を温もりでほどけられたかのように──。


※実話ではありません(続く)

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2013/05/15 00:05
宮城君も優しいですね・・・・。



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