最後まで切れない赤い糸 #26
- カテゴリ:自作小説
- 2013/05/11 16:52:06
主な登場人物
・皆川亜美…すべて平凡な女の子。中学1年生の頃、猟牙と出会う。
・皆川亜美香…近所で美人と有名な亜美の妹。すべて亜美より上。
・宮城猟牙…中学校の頃、亜美を引き寄せた男子。皆の人気者。真二の幼馴染。
・高橋凪…スポーツ万能で、皆の人気者。一部の男子からはモテモテ。
・立花莉子…男子から人気のクラスのマドンナ。猟牙と仲がいい。
・新井真二…いきなり亜美に告白してきた男。人気のある男子。猟牙と幼馴染。
・横山秀司…真二の友達で、同級生。亜美香のことが好き。
第二十六章 『突然の災難』
「遅いね、パパ...」
私は椿の頬をなでながらそう呟いた。
ただいまの時刻、10:20...。いつもならお風呂に入り終わって
寝ようと準備している頃の時間なのにな...。
「...........」
こういうときに、変なことを考えてしまう...。
「そんなワケないでしょ」
頭の中に出てきた被害妄想を必死にかき消した。
あそこまで私を大事にしてくれる真二君にこんな妄想は失礼だ。
「椿、ママちょっとパパに電話してくるよ。」
私は寝室に入って、真二君に電話をかけた。でも───
お留守番サービスです──。
出なかった...、何度も、何度も、電話したけど、出なかった。
ますます私はさっきの妄想が不安になった。
もしかしたら、これが妄想じゃなくって、現実になっていたら.....。
「っ........」
椿も生まれたばっかりなのにこんな考え方しちゃいけないっ...。
私は私なりのやるべきことがあるんだから、今は待とう、そうだ、待とう。
すると、玄関のほうから音が聞こえた──。
PLLL、PLLL──
電話の音だ──。
私は急いで受話器を取りに行った...。
「....もしもし?」
『あっ、もしもし!?新井さんのお宅ですか!?』
「あぁ、はい、そうですけど...」
誰?こんな時間に電話かけてくるなんて....。
さすがにセールスがこんな時間にかけて来るワケないし──
『南東病院です!!旦那様が事故にあいました...!!』
「───は?」
え....?い、今なんて言ったの....?
『重症です...!早く南東病院へ....!!』
「わっ、わかりました...」
私は何がなんだかわからず、椿を乗せて車を走らせた。
数分後、南東病院に着いたが真二君の姿は傷だらけの眠ったような姿──。
「あ...あの...?」
医者に聞くと、気まずそうにメガネをあげながら──
「えぇ、一命は取り留めましたが、いつ何が起こってもおかしくはありません。」
「ぇ....?」
「覚悟...しておいてください...」
そう告げると、医者はうつむいて私の真横を通っていった。
慌てて病室に入ると、呼吸器をつけられ、変わり果てた真二君の姿──。
「この子の名前は椿にする」と嬉しそうに言ったときの真二君だとは...
とても考えられないほどぐったりと眠っているようだ...。
「真二君...?」
手を握って、私は何度も呼びかけた。
だが、何も起こらないし、何も、話さない──。
いつもなら、握り返してくれたのに...今はもう握り返してくれない。
「大丈夫だよね...?私の事...置いていかないよね....?」
私は不安気に、うつむきながら小声でそう呟いた。
怖くなったんだ...変わり果てた君の姿を見て怖くなった。
本当に逝っちゃいそうで...、震えが止まらない。
ただいまの時刻、10:50...。まだ亜美香起きてるかな...?
私は病院の外に出て、亜美香に電話をかけた。
『もしもーし!?お姉ちゃん?どうしたの、こんな時間にぃー!!』
いつもと変わらない無邪気な亜美香の声──。
あぁ、なんかこんなときに家族の声ってすごい存在なんだぁ...。
『おねえちゃ──』
「真二君が事故にあった。」
私は唐突に話した。事故にあったこと...。
その後、数分間、亜美香からの返答はなかった。
『そ、それって新井先輩が...死んだ...の...?』
「何言ってるの!?死ぬわけないでしょう!?」
『っ....!』
つい、怒鳴ってしまった。
『....すぐ向かう、どこの病院?』
「....南東病院」
『わかった』
そういって、電話は切れた。亜美香が来てくれる...すごく心強い。
でもきっと、横山君も来るんだろうな...、まあ、当たり前か、彼氏だし。
もうあの子も24歳なんだから結婚すればいいのになぁ。
「..........」
こんな時にバカばっか考えてしまう。
妹の心配なんてしてる暇なんかないはずなのに──。
キキィィィィィイイッ!!!!
バイクの急ブレーキの音が真横から聞こえた。
見ると、そこには亜美香と横山君の姿が──。
「お姉ちゃん....!」
亜美香は慌てて私にかけよってきた。
私はただただ、亜美香の肩に手を触れて頷き──
「大丈夫だよ」
と、微笑んだ。....もちろん、本当の微笑みではない。
私が一番心配なんだ、あんな宣告をされて──。
「お姉ちゃん、震えてるよ...一旦、落ち着こう?」
「落ち着けるわけないじゃん!!」
また怒鳴ってしまった...。亜美香は複雑そうな顔を浮かべた。
そして、唇をかみ締めてうつむき──、
「お姉ちゃん、私も心配なんだよ。...でも、落ち着くしかないでしょ?
今は、一番落ち着かなきゃいけないお姉ちゃんが落ち着かなきゃダメでしょ?」
そう必死に私の両肩に触れて説得する亜美香の目はまさに真剣その物だった。
そして、よく見ると涙で少しうるんでいた──。
.....私だけじゃない、真二君がいなくなりそうで怖いのは...。
「うん、ごめん...」
私は胸に手を当てて、自分を落ち着けせた。
亜美香も、そうして自分を落ち着かせていた──。
そして、少し落ち着いたところで.....
「そろそろ見に行ってもいい?」
「うん...」
いよいよ亜美香にあの姿を見せるときだ。
───ガラッ。
「っ.....!」
ドアを開けた瞬間、亜美香は崩れ落ちた。
両手で口を押さえて声を押し殺しながら泣いている。
隣にいる横山君も、泣きじゃくる亜美香の背中をさすりながら、
鼻を吸って、必死に涙を抑えている。
私は....、なんとか平常心を保った。
でもやっぱり一歩一歩近づいていくたびに見える真二君の傷や呼吸器...。
なんだか次は吐き気がしてきた。
悲しすぎたのか...?精神が壊れたのだろうか...?
「ぅ.......」
───バタッ。
「お、お姉ちゃんっ....!?」
あぁ、神様、お願いします──。
私もどうかこのまま連れて行ってください。
※実話ではありません。(続く)
絶対生きてね!!!