金狼の重圧 『エデン編』…3
- カテゴリ:自作小説
- 2013/04/13 16:13:14
ユウジは右手に持っていたドライヤーが何か重い鉄アレイのように感じていた。
ケンの髪を乾かすのを止め、どこか宙を見つめている。隣で違うお客を相手していた同僚の女性美容師が見かねて声をかけた。
「ユウジくん、どうしたの?」
その声でユウジは我に返った。
「…いえ、なんでもありません」
ケンは自分が変な事を言ってしまったせいで、ユウジの仕事を遮ってしまったことを申し訳なく思った。
「気を悪くしたら、すまない。だが、お前には言わなきゃいけないと思ってな…」
4年前…微妙な数字だ。遠い昔でもない、つい最近でもない、どう言ったらいいか難しい期間だ。
ただ、ウルフの事件に関係しているものにしたら、もう遠い昔の記憶として頭の片隅に追いやっている。だから、決して「まだ4年」という言葉だけは言いたくなかった。
だから…
「ケン、何年前の話しをしてるんだよ?」
4年という数字を言わなかった。ユウジも分かっている、4年と言う期間は「まだ」と頭につけたっていいと。怖かったんだ。4年と声を出せば、ケンが「まだ4年だ」と返してきそうで。
「…」
ケンはユウジの気持ちがよく分かったので、言い返さなかった。
「ウルフが復活したって?…あの時だって復活したと言う噂だけが先行し、結局は幻だったじゃないか…そんな噂…」
「今回は噂だけじゃないんだ…目撃証言がある」
「目撃証言?………いつ?どこでだ?」
「場所はこのメトロポリスじゃない、北のオアシスシティだ」
2週間前、ケンが花の競りの為にオアシスシティまで行った時のことだった。競りの帰りに寄ったコンビニの前で、一人の若い男が携帯電話で何か話しをしていた。その男の前にはかなりカスタマイズされたEMがあり、EM乗りなのだろうと推測できた。
コンビニ前の駐車スペースに車を停め、その男の脇を通りコンビニの扉を開けようとした時だった。
『だからさ、見たんだよ金色を、例の金色!ほんと珍しいよな金色のEMなんてよ』
EM乗り風の男は携帯電話に向かい捲し立てている。珍しい物を見た興奮を友人相手に自慢したかったのだろう、声は非常に大きかった。
それを聞いたケンはたまらずその男に詰め寄った。突然の無礼も気にせずに。
「今、金色のEMって言ったのよな?」
「え?え?…な、なんだよ?」
ケンの変な迫力に初めはビックリしていたが事情を話すと分かってくれたみたいで、事細かに話してくれたそうだ。
「今の現役のやつらは、ウルフの事を知らないやつがほとんどみたいでな。そいつもウルフのことは知らなかった。それにホームじゃないオアシスシティだからなおさらだな」
「…それで?」
「その男は、オアシスシティの旧高速道路で金色のEMが走っていたのを見たらしい…顔は見ることができなかったみたいだが、金色なんて初めて見たからビックリしたそうだ。それも目撃した時間はウルフが好きだった夕暮れ時……金色のEM、ウルフしかいないよな?」
ユウジは認めるしかなかった。
「ああ、金色のEMは特別仕様だ…ウルフ以外にありえない…」
精悍な横顔。。。
情景が見えてきます^^
どんな街なんでしょうね(そこかい!?