――僕がこの街に来たのは、七歳の頃だった。
放浪という名の旅をする姉に連れられて、あちこちを彷徨い歩いては色々なものを見た。
楽しかった、と思う。
姉はいつも優しかった。
曖昧な笑顔は僕を本当に大切に思ってくれていると信じていたけれど、やっぱりどこかよそよそしい言動が――苦手だった。
結局のところ仲がいいのかなんて、お互いに良くわかってなかったんじゃないかって思う。
*
「光夜、着いたぞ」
歩き疲れて寝てしまった僕を背負っていた姉が、ふと足を止めてそっと呼びかけた。
決して安眠とは言えなかったけれど優しくて、温かい背中を通して低く響いた声にぼんやりと目を覚ます。
桜が咲いていた。
数えきれないほどに立ち並ぶ季節外れの狂い桜が、全てを桜色に染めるように花弁を吹雪と散らしていた。
視界を覆い尽くす花弁にみとれているうち、近づいてくる足音に気づかなかった。
「やあ、桜鏡(さくらかがみ)街へようこそ」
まだ幼い少年声がそう言った。
姉は僕を降ろしてくれるとしっかり手を引いて、
「お前が〝深蒼の零度〟か」
僕にはちょっと、わからないことを言って返した。
少年は薄く笑ったようで、
「うん。そうさ、僕が〝蒼の氷使い〟、氷雫舞音だ」
姉に手を差し出していた。
馴染みの無い挨拶に見えたけれど、姉はすんなり手を出すと握り返した。
姉が笑っていたかは、僕には見えなかった。
ただ姉を見上げたら、般若の面が見えただけで。
「おいでよ。詩も待ってるから」
あまりに幼すぎる少年は、見た目と言動のつり合わない、不気味な人間だった。
第一印象で人間は決まるというけれど、僕にとっての氷雫舞音との出会いは、言葉を交わさないまま、目線さえも交わさないまま、終わった。
涼やかな印象を受ける甚平と、吸い込まれるほどに漆黒を映し込む黒髪と。
どこを見据えているのかもわからない、淡い黄金と深い蒼の瞳。
散凛、という、下駄についた鈴の鳴らす澄んだ音色が、やけに耳に残った。
「あんたが檻錠光夜か」
番屋、という身寄りの無い子供たちの暮らす横長の建物がいくつも並ぶ通りに連れて行かれた。
上から見ると正方形の形をしてるんだぞ、と姉に教わった。
「俺は〝白き嵐〟、妙伝院風封だ」
平屋建ての番屋は広くもなく狭くもなく、まだ生活に必要なものも大して揃っていない、ただの寝床、という感じだった。
仕方なかった、子供しかいないのだから。
それも六歳から八歳、十歳程度の少年と少女で。
「まあそれなりによろしくな」
番屋に着いてすぐ、一人の少年が僕にそう言って挨拶してきた。
差し出された手にまごついていると、姉がそっと僕の手を取って風封と名乗る少年の手と握らせてくれた。
少年はにっと笑うと、「来いよ。案内してやる」そのまま僕の手を引いて番屋の廊下を駆けていった。
するりと離れた姉の手は、不安げに振り返る僕に優しく振り返された。
*
台所と、風呂場。
居間とそれぞれの寝る場所(個室にはわかれていないようで、全員で布団を広げて雑魚寝するらしかった)を見せられ、縁側に二人で腰掛けていた。
「旅ぃ?」
へえええ、と大袈裟に風封は目を見開いてみせた。
僕には風封が珍しがる意味がわからなかった。
「俺は気づいたら此処に居たからさ、別の場所って憧れなんだよな」
独り言のように言う。
風封が見上げた夕暮れ時の茜色の空には、飽きもせずに桜の花弁が舞っていた。
*
「見ろよ、炎雫詩ーーあ、知らないんだっけか」
「……詩?」
しばらく風封が勝手に淹れたお茶を飲みながら縁側で駄弁をしていると、不意に向野廊下を通りかかった少女を見て風封が声を潜めた。
流れるような黒髪が目を惹いた。
膝丈までの着物は西洋の文化を取り入れたような変わった作りをしていた。
誰かにいている、と思った。
すぐに思い至って、その瞳に目を奪われる。
どこを見据えているのかわからない、深い紅の瞳と、薄い黄金の瞳に。
対を為す二人の少年と少女が重なった。
「〝真紅の焰〟、〝紅の炎使い〟炎雫詩」
夕食の席で番屋に集う全ての人間の顔の中、当然のように少女は居た。
舞音の隣に座る少女は、いっそ不気味なほどに舞音に似ていた。
自己紹介を終え、「よろしく」はにかみながら手を差し出してくる詩に、今度はスムーズに握手を返せて満足していると、次に手を挙げたのは浅葱色の髪をした一際小さな少女だった。
「桜!桜って呼んでね!」
まだ二つ名をもらえるほどに街に出ていないのだろう、少女は回らない呂律のなか元気に叫んだ。
淡い桜色の瞳は目に映るもの全てを「楽しい」と捉え、ただただ生きていた。
これから見ることになるものも知らずに。
「次、良いですか」
次にゆるりと手を挙げたのは、全身黒尽くめの――喪服を着た少年だった。
本能的に近寄らないようにしたほうがいいとわかった。
彼は「葬儀屋」だ。
「〝冥府の扉〟、葬儀迷冥です」
案の定彼は自己紹介のあと、こう付け加えた。
「ボクに近寄らない方が良いですよ。亡霊が乗り移ると大変ですから」
人を小馬鹿にした、憎たらしい笑顔で。
*
「青藍が死んだ」
番屋に駆け込んで来た詩は押し殺した声で告げた。
この街にも慣れ始めて、幾十度目かの夕下がり、茜色の夕陽を浴びて詩の髪は、紅蓮に燃えているように見えた。
近頃街をうろついていた無法者たち――いわゆるただの追い剥ぎだ――に不意打ちされて、即死だったらしい。
__無論、この追い剥ぎが後に〝番屋狩り〟となって更なる悲劇をもたらすなど知る由もなく。
せめて戦いに破れ、正々堂々死んでいったなら。
少しは彼とて報われただろうか。
まだ幼く、青藍の顔も見たことが無かった光夜には、所詮わからなかったが。
*****
この調子じゃ他の子の視点に移って話が進んじゃいそうですがまあいいでしょう。(
そ、そう言ってくれると嬉しいです、お母様ああああああああああああ(
私としては、そうやっていつも人の良いところを見つけて褒めて下さる先輩が凄いなぁって。
あれですよ、多分そんなこんなで自信を持ち始めるんですよ。
糾先輩って最早、先輩よりも先生……いや、お師匠様!ぇ
……ではなくて、ありがとうございますww
本当にいいですよね、ハイカラ革命の時代の感じは……
大分ツボっちゃいました。ぐふふ
次回、 「ビバ☆忍」って一人で叫ぼう の巻
あ、あと、詩番長をこよなく愛す会のナンバー003欲しいです。じゅるり
あ、最近「千本桜」の小説出ましたよね!
黒うさPさんなら、きっと素敵なサークルだから許可してくれるはずry
くっ・・・では、私は愛人的立ち位置を狙っておきま・・・自重しておきます。((
というか、本当ならマスターが会長をすべきですよねwwwww
では、私は副会長にでもwwwwww
ありがとうございます!
そして、祐稟ちゃんとの双子を作る予定です!(お知らせ)
双子密度ェ・・・みたいになりそうですが^ω^←
ござる、だと!?マスターが言うと、キます!←
必死に浮かんだなすびが好きな某ボーカロイドを消そうとしています。
ただ、浮かんだくせになすびの人はあまり好きじゃありませry
光夜は使ってて楽しかった★ry
だからまず黒うさPさんにwwwww
詩は俺の嫁になるべき。真顔
なにwwwww会員ナンバー002に入れてくれwwwwwww
楽しみにしてます!
お、なんでも待ってるでござるよ!誰
マスター!本にしましょう!(便乗)
詩番長・・・、うわうわああああry
げふん。興奮しすぎちゃいました★←
詩番長をこよなく愛す会(今この瞬間設立)の会長です。((
うちの子の二つ名とか異名とか考えておきます(`・ω・´)
封戲鬼くん(未登場)とか!瑠唯ちゃんとか!憂羽ちゃんとか!
悩んだ時は、よかったら相談のってください!(あつかましい
まず黒うさPさんに許可とらんとwwwwwwwww
全員行くわよー!
三杯いけるかな!(
おうよ!
なんだか糾姉のキャラが勢ぞろい・・・!
なんともご飯食べれそうだな。
私も異名考えとくね!キリッ
おお!楽しみにしてるでござるよ!ry
ふへへ個人的にもによによしながら打ち込んでます、張り切っちゃうよお!(
そ、そのうち勝手に入れさせてもらおうかな……なんてry
即興で考えた異名でした★ry
でも案外しっくりきてうん、気に入ってます(
他の子たちにも色々考えてありますわっほい!
ありがとう★待っててね!(調子に乗るな
私も何か考えてみようかしらry
そして、主要ギャラリー的方々の過去!過去ぉぉ!!爆
続きが見たいです。見たいです。黙
なんかあれですね、この流れだと多分忍君は後から入ってきた感じになりそうですw
幼い頃の光夜くん目線とは、ご馳走様でしたっ
異名がとってもカッコイイです。さすがクー姉さん。サークルの方でも詩ちゃんが名乗ってて、ひゃあああってなりましたし、此方の小説の方で他の方の異名も見れて大変あたしは大満足です(*´ω`*)
ほかの子からの視点で物語が進んでいくのを楽しみに、目を開眼させて待ってます☆←