■近代文藝之研究|時評|『蒲團』を評す(4)
- カテゴリ:その他
- 2013/03/16 17:38:49
■近代文藝之研究|時評|『蒲團』を評す (4)
僕とても今の自然主義が文壇の行き止まりであらうとは思はぬ、西洋の事例から類推して、此次は何だらう位の事は考へられる。併し未來は現在を通り越しての事だ。新しく明けかゝつた現在は、木の葉の霑ひ、風の香り、物悉くをして新鮮の氣を呼ばしめよ。新代の人は、やがて昇る新日の前に讃仰の鐘を撞くべきである。
さて本文に入つて、『蒲團』を合評することになつた一つの理由を言へば此の作が最近の小説壇で二葉亭氏の『其面影』と共に最も讀みごたへのある作たる外種々の點から所謂自然派の特色長所を明白に説示してゐる氣味だからである。自然主義論の中へ、此の作が挿畫として刷り込まれたやうな形である。
讀んだ後の全體の感は、まづ『藝術品らしくない』といふことである。之れは無論善い意味にも惡い意味にもなる。「藝術品らしい」といふ型を持つた頭の弊から言へば、それに對立したものとして善い意味になるが、其の「らしくない」の目立つときは、もう弊であらう。而して『蒲團』には此の兩意ともある。「らしく」も「らしくなく」もない境があつたら、それに限るのであらう。
--------------------
*註1:文壇・本文・小説壇・説示
「文」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bun_aya.jpg
「壇」の俗字体。旁の「旦」部分が「且」。
「説」の旧字体。旁は「兌」。
*註2:此次
「次」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/ji_tsugi.jpg
*註3:通り越して
「通」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註4:前に
「前」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/zen_mae.jpg
*註5:撞く
「撞」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/dou_tsuku.jpg
*註6:合評
「評」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hyou.jpg
*註7:最近
「近」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註8:所謂・長所
「所」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tokoro.jpg
*註9:挿畫
「畫」の俗字体(一説に本字とも)。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/ga_kaku.jpg
*註10:刷り込まれた
「込」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註11:頭の弊・弊であらう
「弊」の旧字体。「敝」+「廾」。
*註12:境があつたら
「境」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/kyou_sakai.jpg
--------------------
■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1

-
- 銀の雪王子@ゆう
- 2013/03/17 14:00
- ふとんの袋に、わら入れとこうかな たぶん無いけどお店には
-
- 違反申告