Nicotto Town


人生カカト落とし


『三匹のおっさん』

 

『三匹のおっさん』有川浩/文藝春秋、ハードカバーは買わないように努めてるのに、読みました。
ええ、買って。
かなりの部分、挿絵の須藤真澄さんのせいで。
 
『図書館戦争』シリーズで人気の有川さんだが、組織が出てくると内情がヌルイとか、それ以上に恋愛模様が猛烈に甘いとかで、正直、苦手だったりする。
組織等々は力点の問題だろうし、甘~い恋は好きな人にはたまらないわけで、完全に嗜好の問題なのだが。
 
新聞に載ったこの本の宣伝を見たときには、でも、ちょっと興味を持った。
アラウンド還暦のおじさんたちがご町内の平和を守るべく自警団を結成――ってなんか、『ごきんじょ冒険隊』に似てない?
 
『ごきんじょ冒険隊』は漫画家・須藤真澄さんがキャラクターデザインを担当した、スーバーファミコンのRPGで、幼稚園児たちがご近所の平和を守るために頑張る、という内容だった。
(須藤さんが描いた、内容はほぼオリジナルのコミックもある)
このゲームを買ったこと自体、実はこの漫画家さんのファンだったからだ。
ファンタスティックな話や、思わず笑いがもれるようなエッセイを可愛らしい絵柄で描く人だが、幻想や笑いの裏に、生死のあわいや自身の行動を見つめる、冷静でゆるがない視線がある。
 
その須藤さんが好んで描くもののひとつとして、「それぞれの生きてきた時間を感じさせるようなご老人」がある。
伝法なジィさまなんか描かせると天下一品だ。
その須藤さんに、ご老人と呼ぶにはちと早いとはいえ、還暦前後のもと悪ガキを描かせたわけ――?
 
わかっていらっしゃる。
 
と、いうことで、止せばいいのに本屋で現物を確認し、結果愛情あふれる造本に、つい買っ帰ってしまった。
 
 
で、内容。
人物の書き方がやや平面的なのが気になるけど(主役たちの子ども世代の書き方はフェアじゃない気がする)、おっちゃんたちの元気さが楽しい。
 
うれし恥ずかし恋愛部分も今回は高校生カップルが担当しているので、むしろ初々しくていい。
 
 
ただ第四話、なんというかすっきりしない。
 
トラブルを恐れる世相にもの申したいのだろうが、作中でも、自衛より心遣いを優先させた用務員さんは疑われている。
消極的に振る舞う人を非難するトーンでなく、そうせざるを得ない世情自体を問題にした方がより良かったのじゃないかなぁ?
 
もうひとつ、話を持ち込んだ中学生たちも『もし(略)してたら、私、鴨を虐待した(略)と一緒だったよね。』と言っていたが、そのままでも、彼らのやったことも充分すぎるほど酷い。
反省しました、といういい話風にしてあったが、正直かなり気持ちが悪い。
過去間違った人が許されちゃいけない、と言う気はないが、この子たち本当にわかっているか?
特に女の子、わかってたら電話を掛けたりしないだろう。
それは自己満足、自分の気持ちを軽くするだけの行為だ。
相手の心情を気遣っていたなら出来ない。
一生怨まれる覚悟くらい、決めなきゃあかんやろ。
それさえできないなら、忘れてまた繰り返さないだろうか?
 
ずいぶんモヤモヤしてしまった。
 
 
突っ込んで考え込まなければアラ還トリオの活躍は心地よく、サクサク楽しい話を読みたいなら、損はない。
 
ちなみに帯をずらすと、そこに「ゆず」がいます。須藤さんのファンはお見逃しなく。
 
余談だがこれを書くために検索かけて、ゲーム『ごきんじょ冒険隊』の脚本が黒田洋介だとはじめて気がついた。
ふへぇ~、そんな仕事してたんだ。
いや、アニメーションのスタッフとかあんまりしらないのだけれど。
 
 
 ※ 随分以前に書いたのをいじって、今更ながら投下。
    発売直後に読んだのだけど、ねぇ。

 

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2009/07/31 01:34
えー、改行が妙なことになっていたので修正しました。
新仕様と使ってるワープロソフト(文章貼り付けが多いので)との相性が悪いみたいで。
けど、どの作業でなおってくれたのか、もうひとつわからなかったり。
試行錯誤になりそうです。

ぢょほほんさん
いや、なんちゅうか、いまえらく文章が書けなくなってまして……
その上、SFやファンタジィ、奇想小説等「見たことのないもの・自分の想像もつかないもの」を読みたいってのがあるので、自分で書いていても結構鬱屈が貯まったりします。

MYSTYさん
作品にあった装画は素敵だなとは思いますが、実は「イラストなしで存在できない小説なんていらない派」だったりします。
小野不由美に関しては最初イラストに動じたものの、負けずに悪霊シリーズを読んだ人間ですw
(でも、十二国記はイラストつきを選んで買いますがw)
ゆずが見たいならむしろゲームの『ごきんじょ冒険隊』を。
主人公の飼い猫がゆずで、ふらふら歩き回り、ときどきアイテムを持ってきてくれたりしますw

ハープさん
有川浩さん、デビュー作読んだときは、正直、もう読まないかな〜、と思ってました。
でも、図書館戦争で、題材のせいで一冊だけ(……)読んで。
SF系でそれなりの評判なので『空の中』が文庫落ちしたとき、読んでみて。
『空の中』は、え〜不満も多いけど、「そう来るか」と感じた部分もありました。
シビアに言えば、小説の書き手としては上手い人ではないと思いますが、ときに「おぉ?」と感じる発想はあるかと。
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2009/07/30 21:12
図書館戦争書いた人って最近かなりおされてる人でしょ

前にストリーテールって雑誌を買ったのですよ、何人かの作家が話を書いたってやつ
伊坂幸太郎、近藤史恵、有川浩、佐藤友哉、米澤穂信、本多孝好、沢木耕太郎 「Story Seller」 これだ
沢木耕太郎の名前が出てたから買って読んだのですよ

有川浩 よくテレビで見るゴミ屋敷の住人をモチーフにして書いてのだけど、読んだ感想は駄目だこりゃと思いました
というか中高生を対象にして書いてるのかなと。自分の頭の中だけでこねくりまわして書いてる感じがして、あの雑誌じたいすっごい短編だしそれだけで判断するのもどうかと思ったけどこの人の本を読むことはないだろうなと思いました
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2009/07/30 14:27
絵から入るってのも意外と読書の王道ですよね。
私もゆうきまさみから火浦功を知ったり、山田章博から小野不由美を知ったりしました。
有川浩さんの著作はまだ一冊も読んだことないんですが、
須藤さんがゆずを描いてると知ったら、かなり欲しくなってきてしまいました……。
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2009/07/30 02:35
うーん、いろいろな話題をお話されているのですが・・・


すかさはさんもすっきりしない気持ちをそのまま書かれているのかなと感じました。
(それがダメとかじゃないです。 そういう気持ちわかります。)

ご本人にも整理のつかない気持ちを他人が解説することはできないのでそれは置いておくとして・・・・


よさそうな本を読んだあと、
「結構よかった、でもなー、微妙になっとくいかないんだよなー」
って思うこと、私もあります。


読了後時間がたつにつれて「微妙になっとくいかない」が「なんだかとても納得がいかなく」なったり・・・


私の場合は「イリヤの空、UFOの夏」っていう本がそうでした。

いいんだけどな、でもそこでどうしてそうなってこうなってああなるかな、俺なら、こう・・・
もっとこう・・・・だろ?

と、考えてしまいます。


これは確信なのですが。

私は、そういう気持ちは、自分ならこうだ、というものを創作することでしか、心のもやもやは晴れないんじゃないかなーって思っています。



というわけで。
すかさはさん、創作してみません?
もししているのなら、発表しちゃいません?



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