ブローカー/ドッグズ【1】
- カテゴリ:自作小説
- 2013/03/10 12:29:05
キャラクター紹介
・ツヴェルフ / 【12番目】 路地裏に住む野良犬たちのグループ(群れ)の一番下。主人公
・ツヴァイ / 【2番目】 グループのサブリーダー
――雨の音がする。
強く降りしきる雨の鈍い音が耳朶を打ち、身体に水滴を叩き付けている。
冬の雨は寒くて、世界まで凍えるようで。
周りは薄暗かった。朝焼けなのか夕焼けなのかわからない、
茜色が重く垂れ込める雨雲の切れ間からのぞいていた。
寝起きにしてははっきりした意識の端で、何かが動いた。
「――起きろ、〝ツヴェルフ〟」
タタッと軽快に響いた足音の下に、アスファルトと擦れる爪の音がかすかに聴こえた。
うなるような低い声が耳元で囁く。
「そろそろ帰ろう」
雨に濡れて痩せ細った身体は、長い毛から滴る水滴のせいでよけいに貧相に見えた。
自分よりも遥かに小さな相手は普段はふんわりした黄金色の毛を黄土色に変え、
青味がかった黒の瞳でツヴェルフを睨みつけている。
貫禄か、威圧か、得体の知れない何かを宿らせた瞳はただただ獰猛。
不釣り合いだった。
大きな耳をピンと立て、小さな口からのぞく鋭い犬歯をちらりと見せると小型犬は走り去っていった。
狭い路地裏に足音が響き渡る。
残った眠気を振り払い、もがくように立ち上がって慌てて後を追った。
跳ねるように揺れる尻尾を、黄昏色の雨にけぶる視界に捉えると脚を速めた。
背中を丸めて全速力で駆ける小型犬の脚は思った以上に速い。
路地を行き止まりにする腐った木箱を軽々と飛び越え、曲がり角に消えた尻尾を見失わないように自分も跳んだ。
後ろ足にかけた全体重を飛躍力に変えて、腹の毛を掠った木箱を飛び越える。
曲がり角はほぼ90度だった。無理矢理向きを変えると足裏の肉球が削れた爪とともに悲鳴を上げた。
気に留める間もなく、刺すような痛みを無視してひたすら尻尾を追った。
汚い水の流れる用水路を避け、死んだドブネズミの発する腐臭に嗅覚が麻痺しそうになる。
幾度目かの曲がり角を行った先で、小型犬がようやく止まって頭をあげていた。
しきりに匂いを嗅いで苛立ったように尻尾を振り動かしている。
別に機嫌が悪いわけではない、いつもこうなのだ。
「どうしたんですか、〝ツヴァイ〟」
息を整え終えてもその場を動こうとしない小型犬に痺れを切らして尋ねると、案の定睨まれた。
「知らない犬の匂いがする」
だが不快そうに目を細めただけで、ツヴァイはそれ以外とくに何も言わなかった。
ツヴァイの細められた暗い青の瞳に、二回り大きい自分の姿が映り込む。
全身真っ黒な毛は闇にとけ込むようで、黄色い瞳は目に入る水滴を避けようと瞬きした。
ついと逸らしたツヴァイの視線の先に、丁度ビルの群れの切れ間から夕陽が見えた。
燃えるように揺らめく太陽は目が眩むほど茜色に世界を染め上げ、二匹の犬を照らしていた。
*****
小手調べはこんなもんで。
主人公は大型犬にしてみました。
逆に2番目は小型犬ーーチワワ系の犬ですがここは犬種は伏せていこうと思います。
よろしければ感想等、いただけたら幸いです。
そして何よりサブリーダーが小型犬とかギャップ素敵すぎますじゅるり。
お褒めの言葉ありがとうございます!
本当のことを言えば、もうどこからどう書けばいいのか全くわからず、ただただぽちぽちとキーボードを打ち続けたって感じで、全く小説の書き方のコツを掴んでいなくてですね笑
私もおりちゃサークルは何個か入ったことがありましたが、ハイカラよりも充実した世界観溢れるサークルはであったことがないくらいです!その一人になれたこと、今更ですが凄く嬉しく思います*
これからもよろしくお願いしますぅう!!!