Nicotto Town


安寿の仮初めブログ


『杜若/鎌腹/安達原』、そして買い物


此処1週間の間に、
3回も能・狂言を見に行くという、春爛漫。

今日は、若手の能楽師による定例発表会みたいな公演。

ですから、
お値段お安く、
演目は普段より多いという、
ケチな安寿には持ってこいの企画。


とはいえ、
能に行く前の午前中、
眼科へ行って、眼の定期検診。

私の眼は、乱視。
したがって乱視を矯正する眼鏡をかけている。

でも、最近、
手元を見る時は、
眼鏡を外した方がよく見える。
どうしてこうなるの?

老眼が進んで遠視になった人は
遠くは見えるが、手元が見えない。
だから本を読む際、手元が見やすくなるように遠視用の老眼鏡をかける。
         ↑
私の場合は、この逆。
ということは、近視が進んだのだろうか?

医者の、
わかったようで、
よくわからない説明によると、
遠視と近視がせめぎ合っていて、
近視の側に振れたんだそうな。

  ほんとかな~?

でもまあ、年齢を重ねるほど、
眼のピントを調整する機能が衰えるので、
遠視ではなく、近視が進むことがあるのかもしれない。

また来週、再検査する予約をとって、
今日はそのための下準備検査みたいなことを一通り。


そして、能・狂言を見に行く。

『杜若』(かきつばた)は、雅な能。
旅の僧が、三河国は八橋の、杜若が一面に咲いているところを訪れた折、
里の女が現れて、『伊勢物語』の中で読まれている杜若の歌を教え、
自分の庵へと僧をさそう。

庵に着くと、
里の女は衣装を変えて現れる。

着ている服は、先ほどの杜若の和歌に詠まれていた唐衣。
冠は、『伊勢物語』の登場人物、在原業平の冠。

そして、自分は杜若の精と名乗り、
能舞台の上をゆったりと舞い謡う…、という夢幻能。


  美しくはありますが、
  舞うと行っても、
  ゆっくりと舞台を廻り、時折扇をかざすぐらい。
  見ている客の多くも夢うつつへと誘われて、
  こっくりこっくり…。


私としては、
能の舞は激しく狂う姿がいいと思っているので、
少々退屈。

今回は若手能だったので、
  (といっても、一番若くて25歳、中心は40歳前後)
いつものベテランさんが舞い奏でる能との力量差がはっきりとわかる。

謡や舞の優劣は、
私のような素人にはわからない。
でも、囃子方の優劣は、
比較的はっきりしている。

笛は、
場の空気を切り裂くかのような、
破裂音の響きに乏しい。
小鼓や大鼓は
「よおぉぉ~お、よおぉぉ~お、ポン」(小鼓)
「おおうぅ、おおうぅーーっ、カン!」(大鼓)
  ↑
この「よおぉぉ~お」や「おおうぅ」の声に深みがなく、
しかもバリエーションに乏しくて単調。



狂言は『鎌腹』。
怠け者の太郎冠者が、
恐い妻に追いかけ回され、
しぶしぶ山仕事にでかけるが、
このまま妻に怒鳴られ続けるより、
いっそ死んでしまおうと鎌で腹を切って自殺しようとするお話。

たわいもない話だけれど、
そもそも狂言は、このたわいもないところ、邪気のないところが持ち味。



そして、最後の能は『安達原』、別名『黒塚』。

そう、奥州安達ヶ原で、
旅人を捕らえては喰っていた鬼婆のお話です。

  (イケメン喰いなら、私も…)  ☆\(ーーメ) それ以上言うな!

糸車を回しながら、因果な身の上を嘆く老婆の哀れさ。
やがて老女は、冷え込む夜に火でも熾そうと、山に薪を採りに行くが、
その時、決して私の閨(ねや)を覗くなと言い残す。

「覗くな」と言われれば、覗きたくなるのが人の常、盗撮者の常   ☆\(ーーメ) ちゃう!

山伏の従者が、
老婆の閨を覗いてみれば、
そこには夥しい屍の山と立ち籠める腐臭。

  「さてはここが安達原の黒塚にいるという鬼の棲み家か!」

と一目散に逃げだせば、
老女は般若の面を付けた鬼女へと変わり、
己の忌まわしき所業を見られた怒りに駆られて、山伏一行を追いかけてくる。

そこで山伏たちは、
数珠をもみ、
経を唱えて、
鬼を調伏せんとと試み…、

すると怒りに震えていた鬼女は、
次第に弱り、苦しみだし、
にもかかわらず、堪えて打ちかかろうとすれば、
また山伏に祈り伏せられ、
最後には恥ずかしき己が所業を見られた怨みを訴えながら、
闇の中へと消えていく…

  …と、まあこんなお話。

前半の、老婆の悲哀、寂れた庵の中で廻す因果の糸車。
間の、閨を覗こうとする従者の、狂言のようなおかしみのある所作。
そして最後、
鬼女の激しく、切り返しの素早い動きと、
山伏たちが揉む数珠の音と加持祈祷の経文を唱える声。

嘆きと無情、
恥辱と怒り、
それらが一陣の風の如く吹き荒れて、
気がついてみれば、
能舞台だけが残されている。

うん、これは私好みの能、満足じゃ。   ☆\(ーーメ) エラソーに



能楽堂からの帰り道、
鬼女に追われているかの如く、
ついつい早足になってしまう私がいる。


あっという間に、
家の近くのショッピングセンターまで辿り着き、
ようやく人心地ついて、
さて、お買い物。

まず某家電量販店でICレコーダーを購入。
これは4月からの仕事で使うため。
以前から買う機種を絞り込んでいたため、
差して悩まずにさっさと購入。

次にユニクロにて、
春物の服を何点か。

そして大型書店で、
こうの史代『ぼおるぺん古事記』(三)海の巻 平凡社
三上延『ビブリア古書堂の事件手帖』(4) アスキー・メディアワークス
そして、私のドイツ語の先生が書いた、ドイツ語会話のトレーニング本。

最後にスーパーによって、
寒い夜のために豚汁の材料を買って帰り、
加えて、明日は近くの里山へ出かけようと思うので、
持って行くお菓子やジュースなども買い込んで…、

豚汁の夕食を済ませた後、
今日の遊行三昧をしたためていた所存。

明日、里山で鬼婆に出会いませぬように。

  ひょっとして私が鬼か…?




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