「猿楽談儀」による『卒塔婆小町』なんだそうな?
- カテゴリ:アート/デザイン
- 2013/03/01 00:26:26
如月の晦日、
能を見てきました。
今日は『卒塔婆小町』。
でも、現行の舞い方ではなく、
世阿弥が残した「猿楽談儀」という書物に残されている
『卒塔婆小町』本来の姿を再現しようとした企画公演です。
とはいえ、
そういう能書きは、
能に慣れ親しんだ方には意義深いものかもしれませんが、
私のような一見の、単なる物見高い観客に過ぎない人間にしてみれば、
どんな演出であろうと、
私の心をギュッと鷲掴みしてくれたか否かがすべてです。
で、結果は?
う~ん…
『卒塔婆小町』は、
若い時は才気煥発な絶世の美女であった小野小町の
齢九十九歳の姿を描くもの。
老いさらばえ、今は物乞いに身をやつした小野小町が、
都を離れ、今の大阪、阿倍野あたりを彷徨っている折のこと。
小野小町が、
仏体の化身である卒塔婆に腰掛けて暫し休んでいると、
高野山から都へ向かう僧がそれを見つけて、
「卒塔婆に腰掛けるとは、失礼じゃろう」と因縁をつけてくる。 ☆\(ーーメ) ヤクザじゃないちゅうに
それに対して、
老いたりと言えども、
元は才女の小野小町は、
僧と禅問答を交わして、相手を言い負かせてしまうのです。
このあたり、
言い負かしてしまう小野小町の、
博識が故に、ついつい見せてしまう我の強さ、プライドの高さが垣間見えて、
見事な問答ではあるのですが、
あああ~、
落ちぶれてもなお、
そんな才気をひけらかしてしまうだなんて、
「あなた、どこまでも残念な人ね」
と思わず安寿は突っ込んでしまいたい。 ☆\(ーーメ) エラソーに
そして、老婆は僧に
自分は小野小町であると名乗り、
落ちぶれた我が身を嘆くのですが、
その時、小野小町の下に「百夜通い」した「深草の少将」の霊が、
老いさらばえた小野小町に憑依して…、
いわゆる、物狂ひ…
つまり、『卒塔婆小町』とは、
すでに老境に達しているにもかかわらず、
華やかであった過去の栄華が忘れられなくて、
今なお、
♪~あの素晴らしい愛をもう一度~♪
なんて幻想の中に生きている哀れな女なんですよ。
「バブルの頃よ、もう一度、
もう一回ジュリアナ東京の「お立ち台」に立って、
若い男たちをブイブイ言わせたい」
と今でも内心思っているんだけど、
でも、もうどうしょうもないくらいに
薹(とう)が立ってしまったアラフィフ女なんだ、きっと!! ☆\(ーーメ) なんかバブルに恨みがあるんか!
この能の最後は、
そんな老いてなお妄執に取り憑かれている小町が、
「花を仏に手向けつつ、悟りの道に入ろうよ」
と仏の道へ向かっていくことで終わるのですが、
でも、それって
物質文明批判の単純な裏返しとして、
神秘主義やら精神世界へと向かっていった
1980~1990年代のオウム真理教を初めとしたカルト宗教の道じゃない?
ふん!
私は、
そんなにあっさり
「悟りの道」に救済を見出せるほど、うぶな女じゃないわ。 ☆\(ーーメ) 開き直るな
確かに、生死のことは仏まかせ、
前世やあの世のことは人間の範疇の外だけど…
でも、この世のことは、
人間が作り出したことだから、
きっちり人間が決着をつけなくちゃいけない!
中世社会に生きていた小町は、
仏門という落としどころで許してあげてもいいけれど…。
でも、現代社会に生きている「小町」たちよ!
通販やパック旅行やスピリチュアルで
お手軽に「癒やし」を求める前に、
「愛」も「癒やし」も「霊力」も
ワンクリックのクレジットカード一括払いで賄おうとする
あなたたちのその安易な煩悩をなんとかしたら。
うわ~~、
なんか『卒塔婆小町』から暴走して、
言ってることが支離滅裂の八つ当たりだあ~ ☆\(ーーメ) 毎度のことじゃ
『卒塔婆小町』以外にも
小野小町が登場する能はいくつかあるようです。
才気煥発で、恋多き女性である小野小町を描くものと、
その小町の落ちぶれた姿を描く『卒塔婆小町』のようなものと。
『卒塔婆小町』という能が名作なのかどうか
(今回の企画公演の狙いでもありましたが、
どうもこの作品は収まりの悪いところがあります)。
今回の公演の仕上がりはよかったのかどうか、
能については素人である安寿は皆目見当がつきません。
ただ、はっきり言えること。
私は、小野小町みたいな人が嫌い。
ですから、独断と偏見に満ちた能見物の記録なのでした。
三島由紀夫の『近代能楽集』の「卒塔婆小町」は、
知り合いの芝居で見たことがあります。
たしか、その時は「卒塔婆小町」「葵上」「弱法師」だったような記憶が。
三島の能や歌舞伎は、
三島本人はもっと別な意図があったのでしょうが、
でも、原作を大胆に換骨奪胎し、
現代化した外連味が加えられていて、
それはそれで私は好きでした。
でも、能で描かれている小野小町、
才媛にして恋多き女という人物像は苦手。
勝間和代や阿川佐知子を思い浮かべてしまう… ☆\(ーーメ)
切ないというか、なんというか。
もし機会があったらもご覧ください。
感想変わるかしら?w