夢飼い。【8】
- カテゴリ:自作小説
- 2013/01/04 15:35:07
推理小説とホラー小説、どちらにしようか悩んで結局どちらも買わなかった。
付いてきた乾は、珍しくライトノベルじゃなくて文庫本を買っていたけど僕の知ったことじゃなかった。
付き合わせた僕が付き合ったみたいになってるのはいつものことで。
何も言わず、先に行った僕の背中を追って、乾は乱暴な足取りで付いてきてくれた。
電車がどうの、とか何か罵詈雑言の罵詈くらいは来るかと思ったのに何も来なかった。
だんまりの乾も、まあ悪くないかな。
「あ、これ新作出たんだ。乾買わないの?」
「もう買った」
「さっすが」
新作の本が山積みにされた一角を通り過ぎながら、僕は他愛も無く声をかけてみる。
返ってくるのはアイスピックみたいな抉られる言葉だけ。
僕はいつから反抗期の中学2年生と一緒に歩いてたんだろう。
駅ビルの5階、一フロア丸ごと使った広い書店は見て歩くだけでも楽しかった。
僕は滅多に駅になんか来ないから尚更。
乾はひょっとしたら、電車の待ち時間とかに結構寄ってるのかもしれないけど。
「乾、何時の電車乗るの?」
広い書店の半分ほども見終わったところで、
ふと目に留まった探偵小説を手に取りながら僕は乾に訊いてみた。
ずっと押し黙っていた乾は多少面食らったような顔をして、ぶっきらぼうに「知らねー」ぼやく。
会話する事も億劫だと思われてやしないかと、僕は少し焦ったけど杞憂かもしれなかった。
ごそごそと鞄からケータイを取り出した乾が時間を確認するフリをして
結局何もしていないのを横目で見ながら、それが照れ隠し(?)だったと気づく。
たぶんどうリアクションしていいかわからなかったんだろう。僕だってわからない。
「そっか。じゃあ明日も休みだしゆっくりしてて大丈夫だよね」
乾が口を一文字に引き結んだ。
わずかに俯けられた顔から表情は窺えなかったけれど言ってしまってから失言だったと慌てる。
〝明日〟とか、少しでも悠里のことを匂わせる単語は使用禁止だった。
NGワード。5000円引かれてる。
「……乾、ちょっと話しよっか」
とりあえずこのままじゃ何が不味いのかわからないけど不味いと思ったので手にとった本を静かに置いた。
また、乾を振り返らずに歩いていく。
たたっ、とわずかに出遅れた足音を背後で訊いて、僕は書店の休憩スペースに歩いていった。
*****
二日続けて連載なのでちょっと短めですが。
次は長くとれるように頑張りたいと思います。笑
そつなく生きて、上手く泳ぎきるのは、きっと人間にはできないんでしょう。
不釣合いで不恰好な乾と由貴も、同じに。
それでは、ここまでお付き合いいただいた画面の向こうのあなたに文章では表しきれぬ感謝を。
-糾蝶-
乾は微妙に自分に重ねながら書いてたり。笑
不器用なところとか、普段は饒舌なフリをしてる私の家での態度だったりして。
ドMwwwwwwwwwwwww
やだ今にわかったことじゃな強制終了
ありがとう!そう言ってもらえるととっても嬉しいです。
持ちつ持たれつ……仲が良いんだか悪いんだか、不恰好な二人をこれからもよろしくです笑
乾ちゃんの冷たい言葉が、なんか好きです響きます。
・・・っ!ということは、あたしってドMなんでしょうか、冷たい言葉を
言って欲しい人間なんでしょうか・・・、う、あ、あああああっ(茶番)
失礼しました。
楽しみに待ってました、ありがとうございます。
このペア好きです、マスターのキャラは皆さん魅力的ですが、
お二人の雰囲気がなんだかすきです。