夢飼い。【7】
- カテゴリ:自作小説
- 2013/01/03 22:45:47
自分の無力さを知っていたわけじゃない。
全てをわかった気になんてなれるはずもなくて、結局中学生みたいな
自分の居場所を求めたがる思考を完全には卒業できてないんだって思い知らされる。
此処にいて良いんだと言って欲しい。
自分は必要だと言って欲しい。
一緒に居て楽しいと言って欲しい。
またね、と言って欲しい。
大好き、と言って欲しい。
所詮人間なんて、考える事は一緒なんだ。
自我を知覚出来るのが遅いか早いか。
ちょっとした環境の違いで早く〝大人〟になるかなれないか。
世界の狭さを知ってしまった子供は哀れかもしれない。
あの頃はあんなに広かった世界が、途端に狭く、色褪せて見えてしまうのだから。
何故?答えは簡単。
そんなの、わかるか。
「……帰ろ、乾」
僕は無力だ。
そう言ってあげることしか、出来ないんだから。
*
「乾、一人で大丈夫?」
駄目に決まってる。
けど、一応訊いてあげる。
「……だいじょぶに決まってんだろ、馬鹿由貴」
顔は見ているのに、視線を合わせてくれない。
乾の目は僕を通り越して、別の場所でも見ているみたいだ。
「ほんとに?」
「ほんとのほんと!」
大丈夫じゃない人ほど、自分のことを大丈夫だと言う。
それは意地なのか、心配して欲しいだけなのか僕にはわからない。
わかりたくない。面倒だから。
だから、知らないフリをする。
乾も、そこまで馬鹿じゃない。
――あれからバス停に行ってみると、嘘のように誰も居なかった。
バスでも増発されたんだろうか。
関係ないか。
本当はバスになんて乗って帰らないし。
バスと電車に乗って帰るのは乾だけだ。
誰も居ないバス停は、部活で遅帰りをしているわけじゃない僕には変な感じだった。
不機嫌というわけでもなくて、でもどこか虚ろな乾は何を喋ってくれるわけもなくて
僕も結局口を開かないで、駅についてしまったバスから降りて改札まで歩いていった。
こういうときの沈黙は、案外嫌いじゃない。
定期を持っていない僕は改札で立ち止まって、横を歩いていた乾はさっさと行ってしまおうとする。
……それでも今まで歩調を合わせてくれていた乾は、
本当は何か言いたかったんじゃないかと思うけど僕はまた何も言わなかった。
「乾、」
「うっさいなぁ!電車行っちゃうから止めないでよ!」
「……、」
でも、怒鳴ったくせに歩き出そうとはしなかった。
ツンデレなのかな。どうでもいいけど。
ごそごそと通学鞄から定期ケースを出そうとする乾は、わざとそうやって時間を稼いでいるようだった。
本当は見つかってるくせに。
僕はあくまで、何も知らないフリをする。
「乾、今日ヒマだよね」
「は?」
「僕ちょっと本屋さん行きたいんだよね。付き合ってくれない?」
「…………、」
「ありがと。じゃあ行こ」
「ッまだ何も言ってねーし!」
乾がついてきているのも確認しないで、僕はさっさと改札の向かいの駅ビルに踵を返した。
******
由貴視点より。
書くのがすっかり遅れちゃってすみません。
エンヴィキャットウォーク聴いてるとなげやりな気持ちになるのはなんなんでしょうね。
好きなんですけど。
由貴のキャラが若干行方不明。
それでは、ここまでお付き合いしてくださった画面の向こうのあなたに文章では伝えきれぬ感謝を。
-糾蝶-
くふふ、由貴くんは空気の読める素敵な子です✩ry
乾とは違った意味で由貴も確かに達観してるんでしょうねw 同い年とは思えねーやryry
めんどくさがりだけど相手のことはよく見てて、
そして達観したような様…ぐふうっ!!(