Nicotto Town


小説日記。


夢飼い。【2】



Story - 1 / 2


かろうじで座れた座席に滑り込み、文庫本を読みながら揺られること一時間弱。
電車から降りると、溢れかえる人ごみのなかで登るべき階段を見失いそうになる。
人ごみは嫌いだ。
誰だって同じだろうけど。



午前7時52分。
なんとか抜け出せた人ごみを魚のようにすり抜けて、
自動改札機を通るまでが平日朝の通過儀礼だった。
電車を降りた瞬間に感じたものを無理やり無視した刺すような寒さは、
駅の北口へ行ってバス停へ降りる階段へと向かう途中素足を這い上がり、
全身に震度二程度の地震を引き起こした。
やっぱり手袋を持ってこなかったのは不正解だった。

「―――」

階段を降りながらいつも思う。
足を滑らせて転げ落ちやしないかと。
きちんと注意しているからこそ、ふと妄想に取り付かれて
階段下に横たわる自分を幻視する。
誰か助けてくれるんだろうか。
それとも、傍観者思考にとり付かれた社会人は面倒ごとを無視して
私を踏みつけていくだろうか。

わからない。

くだらない妄想ごっこを打ち切って、私はバスの七番乗り場へ急ぐ。
合計九つあるバス停は、コの字になったロータリーに
それぞれの行き場所を示して配置されている。
道はどうしてこんなに多いのだろう。
高校に行くためだけに県内の都会へ出て、こうして毎日学校へ通っている私は、
きっと高校へ行くためだけのバスにしか乗らないで高校生活を終えてしまうに違いない。
人が創った道は、歩むべき道に対してどうして無駄に多いのだろう。



バスを10分近くも待ったような気がする。
が、それは錯覚で実際には2、3分だ。
その間もう二度ほど震度二の地震に見舞われた。
元々冷え性の私に、猛暑によって引き起こされた放射冷却はあまりに酷過ぎた。


午前8時15分。
バスの手荒い運転に15分程揺られ、ようやく学校へ着くと
冬晴れだった高い空はぼんやり曇っていた。
雨なんて降らなきゃ良いけど。



*****

まだまだ日常です。
ちょっとマニアックな表現方法も取り入れつつ、飽きずに2日連続アップ。

はまったのかもしれないです。


引き続き、よろしければご感想等よろしくおねがいします。
ここまでお付き合いいただいたあなたに、文章では伝えきれぬ感謝を。


-糾蝶-





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