すっきりんクロニクル第2章BARプッチーニ(3)
- カテゴリ:自作小説
- 2012/11/29 23:44:33
ゲームは見ごたえがあった。ローマが先行して3点ゴール。そのうち2点はKENJIだ。スタンドはそりゃ沸いたさ。でも、後半、Schalkeが2点入れてきた。アウェーであそこまで出来るってすごいよね。なんてKIRIと話していたんだ。
でも、そのあともSchalkeが優勢で、ローマ側のゴール前でごちゃごちゃしていたんだけど、あのキーパーの野郎。Terramoだったかな。あいつが終了2分前に自殺点なんか入れちまいやがってゲームは振り出しに戻った。全員総立ちブーイング。
あの馬鹿。まったく今でも腹が立つね。
でもKENJI。やっぱりあいつはすごかった。ボールを取り戻して、センターフォワードが相手のコートまでボールを持っていくと、KENJIがサイドを駆け上がって、センターからのパスされたボールを確保。
その後、サイドをさらにゴールラインまでドリブルで詰めて、最後にセンターフォワードに向かってパス。
いや、パスだと思ったんだ。
みんな、確かに素晴らしいパスだと思ったし。そしてセンターフォワードのKUYAが。彼女こそがASローマのエースストライカーだったからね。KUYAがヘディングシュートをしてゲームが決まると思っていたんだ。
ワーッて大きな歓声はスタジアム中からすでにあがっていた。
でも、彼女はそのボールを寸前で空振りした。信じられるか?スルーしたんだ。
観衆は静まり返った。
でも、いつでも混乱しているゴール前でそのボールの意味を分かっていたのはKENJIと彼女、KUYAだけだった。
ボールは、そのままゆっくりと短い弧を描いてゴールの方向に向きを変え、そしてゴールのサイドバーぎりぎりのサイドネットにぱさっとかかり、ネットを静かに揺らした。
しばらくスタジアムは静かだった。
でも、その直後にゲームも決まっていないのに、スタンドは乱痴気騒ぎ。ピザは飛ぶわ。ビールは吹くわ。女は脱ぐわ。男は叫ぶ。アナウンサーの「ゴール」の声は口パクにしか見えなかったし、審判のゴールの笛も試合終了の笛も聞こえなかった。
私も気がついたら手に持ったローマの旗をひきちぎって振り回していた。
翌日の私のiPad30のiNewsには「フーリガン復活」の文字が並んだよ。
ふとKIRIの方を見ると目に涙を溜めて、じっと彼の方を見ている。
ゲームが終わったKENJIが、スタンドの大歓声の中、KIRIのほうに歩いて来た。KENJIとKIRIの仲はみんな知っていたから、周りのスタンドの観衆は静かにし始めた。
金網越しにKENJIはKIRIに話しかけた。
その会話は意味がよくわからなかった。
「どうしても行くのかい?」
「私は最初から行くと決めてたわ。」
「僕と暮らすことは幸せじゃないのかな。」
「そのことはたくさん話したはずよ。2人で昨日の夜、決めたでしょ。あなたの活躍はとっても嬉しいの。でも私は世界の果てに向かって歩く人でありたい。だからやっぱりいくわ。」
「そうか。分かった。僕はね。僕は。僕は、本当は君の様な人になりたかったんだ。でも、僕はこの世界で生きていく事を選ぶ。今の僕にはその選択しかできない。」
彼はその場で膝をつき、嗚咽をあげてゆっくりと泣き始めた。
周りは誰も状況をつかんでいなかったけれど静かに2人を見ていた。でもスタジアムの他の観衆は彼が感動して泣いているんだと思って、大歓声をあげていた。赤いコートを着た彼女はスタンドの階段を登り、出口に向かって歩き始めた。振り返らなかった。
私は彼女を追ってスタディオ オリンピコの外に走った。地下鉄のOTTAVIANO駅前で彼女を捕まえた。
「どういうことなんだ?」
「愛はあるの。でも私たちはずっとずっと話し合ってきたの。お互いの生きる意味について。」
「君は旅を選び、彼はサッカーを選ぶ。そういうことかい?」
「そう。でもそんな単純なことではないわ。二人の経験、会話が全てそろわないと理解できないことなの。あなたのそういうところ、好きだわ。ありがとう。さよなら。」
彼女は私を優しくハグしてくれた。そして地下鉄の階段を降りていった。
呆然とする私にも、彼女の目が涙で潤んでいたのは分かった。
でも、あの目。優しくて明るくて、でもあんなに意志の強い目。
あんな目は見た事がない。あのときのKIRIの目がいつまでも私の心の底に残っている。
KIRIとはその時から会っていない。会えない。ローマから消えた。
彼女は「世界の果て」に着いたと思う。どんな風景を見たんだろうな。
そして、ふと彼女のあの暖かな笑顔を見たいと思うときがある。
KENJIはACミランとかいろいろな有名クラブを選手として回った。戦後は日本代表の監督になったよ。あんな弱小チームの監督だけどね。やっぱり、ふるさとはいいってさ。いまだに毎年、NENGAJOっていうのが来るよ。
え。私は老後に何をするのかって?
そうだね。料理も酒も遊びもほとんどやりきったし、ドライブでもしようかな。真っ赤なポルシェ550スパイダーを買おうかと思っているよ。
だってさ。フェラーリ エレクトロは手が出ないし、イタリアのような楽天的な土地でドライブするには電動レプリカだって550スパイダーのような低い車体のほうが似合うだろ?
え。なぜ店の名前にってプッチーニ&ヴェルディって付けたのかって?
いや、そりゃまた違う話があってさ。
ある日、うちの店に渋い中年男が訪ねてきてね。Terrimo Martinoっていったかな。ウイスキーをしこたま飲んでさ。なんだか1500年前の都からやってきたって。それで、そいつがクラシックの話で13時間。。。。。。
........FIN.........
世界の果てで、タンゴ。ちとせさん似合いそう。
ブエノスアイレス。
僕も行って見たくなったんですよね。
南米出張ないかな?
さて、そっちの人の小説いつか書きたいですよね。
読んでて赤面するような。
彼女を恥ずかしがらせたり、怒らせたりする。
そんな物語を。
こう、なんか赤裸々な内面の告白的な。
シャワーシーンの前の服を脱ぎ捨てる瞬間の詳細な描写的な?
とか?
そのためには彼女を理解する必要があるんですが、これまた、厄介で難しいもんなんですな。
さて。。。
いいことあった?
てらもっち@ドイツ
予想が外れて残念です^^;
ブエノスアイレスというと、私はアルゼンチンタンゴくらいしか思い浮かばないのですが
世界の果てでタンゴを踊りまくっていたら楽しいなぁ、なんて思ってしまいました。
しかしiPad30は素晴らしいですね。
もはや自分の手足同然に操作可能となるのですね♪
モデルにした女性は村上春樹が好きで、福祉の仕事をしている、一生懸命で
明るく、よく悩むショートカットの素敵な女性です。
僕は、とあるブログでしか彼女のことを知らないのですが、困難な状況でもいつも前向きに考えられる人なので、僕は彼女の生き方が好きで、彼女を応援しています。
考えてみると実生活ではそんな存在はありませんが、ネットではブログやSNSで応援している人が何人かいますね。
次を楽しみにしてます♪
ちょっと遊びも入れてコメしました。
ありがとう♪
モデル・・・まだわかりません。
こっそり教えてください(真剣(笑
モデルは残念ながら違います。その人ではないです。
「世界の果て」ってワードは大好きそうですけどね。その人。
その人が主人公なら、もう少しメランコリーに描くと思います。
モデルの人は、ウォンカーウェイ監督の「ブエノスアイレス」という映画が大好きだそうです。
そこがこの物語の「世界の果て」です。
iPad30はですね。紙のように薄くて折り畳めます。もちろん、本体側のメモリとサーバー側のメモリは必要な分のみ自動同期していて、ほとんどのデータはサーバーというかWEB側にありますが、それらのデータをシームレスに使えます。入力は音声自動認識とカメラ画像によるバーチャルキーボード入力も可能ですし、身体動作入力や表情入力も可能です。
まゆをピクッと動かすと前の画面に戻りますし、見つめるとズームします。
(正直、iPad8くらいで実装しそう。)
なお、iPhone48は眼鏡イヤホン型ですが、iPhone50からは身体埋め込み式になります。
最果ての地。この物語では南米にしてますけど、風しか吹かない不毛の地っぽいですよね。僕は行ったことないですが。
最近だと行ける限界という意味では、月とか火星とか冥王星とかでしょうか。
楽しい「最果ての地」ってかなりユニークだな。どんなとこだろ。ラスベガスとか?
KIRIさんのモデルは、何となく想像がつきます…(^^)
個人的にiPad30が気になります。
いったいどんな機能が搭載されているのでしょうか……
あ、やっぱ、そうだったんだ?
勘違いだったら恥かしいので大袈裟には触れなかったけどww
こんな高次元で粋なプレーができる人物に使ってもらって、嬉しいよ(✿ฺ◕ฺ‿◕ฺ)ウフッ♥
昔ね、ハマってたゲーム(RPG) クロノトリガー、って名前だったかな。
確か「最果ての地」、ってのが(ここもうろ覚えw)あって、凄い寂しい場所だったの。
細かい部分は忘れたんだけど、凄く寂しい場所、ってイメージだけが、ずっと残ってるよ。
世界の果て、もしあったとしたら、・・・たぶん、あんな感じな寂しいところなんじゃないかな?
それか真逆に、凄くユニークで楽しげな感じ、だったりして?ww
どっちかな?(*^m^)
サッカー知りません。TVで見たことあります。
それっぽい言葉を使ってみただけです。
世界の果て。なんかさびしい感じのする場所のような気がします。
世界の果て、って・・・想像したらコワいな~。。。どんなだろう?
本当に本当にお心のこもったコメントありがとうございます。
それと
燐音さんを、甘えん坊なwお嬢キャラと思っていましたが、なかなか勇ましいお言葉に姉御っぽさを感じました。どちらのキャラもステキです。ついて行きたくなります。
では、第三章をおたのしみに。
あ、まずは、素敵なコメントありがとうございました。
最初の燐音さんのコメントで「。」の位置が揃ってるのと韻の踏み方がすごいなと思いました。
ちなみに彼女はモデルの女の子がいまして、まぁ一生懸命生きてる人です。
彼女のジェットコースターチックな人生と、世界の果てを見たいという気持ちを、文章にしてみたいな。と思ったのが書き始めた発端ですね。
モデルを考えるとわりと性格とか考えやすいもんですね。
彼女は、幸せだったに違いない。
彼女は、悲しみの中にいるはず。
彼女は、それでも目指したんだ。
とてもとても遠い世界の果てを。
彼女の強い意志に心は震えたよ。
とても、凄い女性(ひと)だね。