Nicotto Town


フリージア


金狼の重圧…15

 
 「ミカミ、準備はできた」
 初めて走る第31高速道路跡を完璧に走りこなしたバタフライは、スタートボタンの隣にあるリセットボタンを押す。すると一瞬ボックス内が暗くなり、またすぐに映像が映し出された。
 「バタフライ、もういいんだな。ではウルフとのレースを準備する、いいな?」
 「ああ」
 またボックス内が暗くなり、また先程の画面が映し出される。ふと左隣りに気配を感じるバタフライ、そして隣を見て驚いた。
 ウルフがいた。金色のEMに乗ったゴールデンウルフが。
 まるで生きているようにチラチラとバタフライの方を見るウルフ。すぐ手を伸ばせば触れられるような錯覚を起こす。しかし、それは映像で本物ではない。
 「どうだ、すごいだろ?これなら本当に対戦している感覚になれるんじゃないか?」
 もっとデジタル的な代物を予想してた。だが、ここにいるのは生気が充ち満ちているウルフ。
 「まるで本当にここにいるみたいだな…」
 バタフライは『そうでもない、こんなの映像じゃないか』本当はそう言いたかった、でも言えなかった。それほど本物にしか見えない。バタフライは久し振りに見るウルフの姿に怖さを感じ、先程まで威勢は簡単に萎みはじめた。
 恐怖に支配されそうになるから目をそらしてもよかったのに、ずっと隣にいるウルフに目を奪われていた。
 「バタフライ、用意はいいかい?」
 「……ああ、いつでもいい」
 「ゴールは第31高速から第13高速のジャンクションだ。君もさっき走ったから分かるだろ」
 「大丈夫だ」
 バタフライの大丈夫だという声と同時にウルフはアクセルに手をやった。バタフライの声に自然と反応したようように見えた。正直、気味が悪かった。
 『まるで生きているようだ。いや、本物のウルフはまだ生きている。しかし奴の魂がこの中に入り込んでいるのではないか?』
 頭を強く振るバタフライ。よけいなことを考えないように前だけを見ようとした。
 「では、スタートだ」
 ミカミがスタートだと言った瞬間、ウルフは笑った。慣らし運転中のバタフライの自信に満ちた笑みとはまた違う。
 楽しそうでもあり、それでいてバタフライをバカにしたかのような嘲笑でもある。
 そして、映像であるウルフの口が微かに動き、何かを言い始めた。読心術などできないバタフライはウルフが何を言っているのか分からなかった。
 前面にカウントダウンの数字が現れる。5秒前からだった。ウルフはまだ何か呟いている。4、少しずつ声が聞き取れるようなになってくる。3、ウルフの口が大きく開きだした。しかし、カウントダウンの声と混じり合ってよく聞こえない。2、バタフライは前を見た。アクセルを強く握った。
 1。ウルフが聞いたこともないような奇声で叫んだ。

 「おまえは必ず負けるぅぅぅぅ!」

アバター
2012/11/28 05:59
読ませていただいてます。どちらを応援しようか複雑な心中になりつつありますwww
アバター
2012/11/27 22:30
怖いぉ。。
アバター
2012/11/27 21:12
ゾク!っとしました・・



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