金狼の重圧…14
- カテゴリ:自作小説
- 2012/11/25 15:48:07
ミカミはバタフライの決心を待たずゲーム機の電源を入れた。ボックス内がだんだんと明るくなってきた。それに呼応するようにバタフライはボックスの中に入る。自分の乗っているEMと同じものの全体が見えてきた。
バタフライは軽く眺めた後、またいでみた。
「どうだい、ちゃんと君仕様に改造したんだ、乗り心地は悪くないだろ?」
ボックス内にミカミの声が響く。
「ああ」
バタフライはアクセルとクラッチを握り、確かめるように一連の動作をこなした。確かに自分の乗っているものとなんら変わらない。
そしてボックス内を見回す。
『何もおかしいところはない、ただのゲーム機のようだ。目の前、いや、このボックスの中全体が画面なのか…』
「バタフライ、君はウエスト地区のトップなんだろう?あの三人も勝負を受けたんだ。君も勝負を受けてくれないか?」
ミカミはプライドをくすぐってくる
『そうだ、俺はウエスト地区のトップなんだ。夢にまで見たウルフとまた戦える…そして、今度は俺が勝つ…俺が全地区のトップになるんだ』
プライドは持っている、トップになりたい向上心も持っている、純粋な心に従うことを決めた。
「分かった、やろう」
その声と同時にボックスの入口が閉まり、一瞬真っ暗になった。しかし、次の瞬間ボックス内の全面に映像が映る。バタフライは驚いた。
外に出た、外に出たと思ったのだ。気持ち悪いくらいにボックスの中にいるという違和感が消える。空調も考えられているのか、空気の流れもある。風を感じられるのだ。そして時間帯はウルフが好きな夕暮れだった。
「これはすごい、ゲームという域を超えている」
外と中の会話は内蔵のマイクで簡単におこなえた。
「では、説明する。今君のまたいでいるEMの操作は普段使っている君のEMと同じに設定してあるつもりだ。何か違和感を感じたらならば遠慮なく言ってくれ。コースはここミッド地区の第31番高速跡を使う。君には馴染みがないだろうから、気が済むまで試し走りをしてもらって構わない。では、目の前にスタートボタンが光っていると思うから、それを押して始動だ」
普段キーを差し込んでいる場所にスタートボタンがあった。せわしなく点滅している。息を整えたバタフライはボタンを押した。
ガソリンエンジンとは違う、独特で静かなEMのモーター音が微かに聞こえる。こんなところも忠実に再現されていた。クラッチを握りギアを入れ、アクセルに力を入れた。そしてスムーズに始動する。
程なく前方から風が吹いてきた。
『素晴らしい、やはり風を感じることができるのか。映像と合わせると本当に走っている錯覚をする。それにこのEMは俺のマシンと同じ癖がある。これならば普段と変わらない走りが可能だ』
バタフライは普段通りの蝶が飛ぶような華麗な走りを見せる。沸々と自信が戻ってきていた。これならウルフに勝つことができる、夢に見た称号を手に入れられる。
無意識に笑ってしまうバタフライ。
慣らし運転中、何度も抜き所を確かめる。その度に笑顔になるバタフライ。ここでも追い越せる、ここでも勝負をしかけられる。
ミカミは、その一人舞台を飽きもせずに待っていた。
今年も、あと少しですね!
今年も、あと少しですね!
どんな展開になるんでしょうね~
面白くなってきましたね^^
ゲーム内とはいえ、敗北するとどうなるのだろう・・・??
ドキドキは止まず。