金狼の重圧…12
- カテゴリ:自作小説
- 2012/11/20 23:14:11
バタフライは真っ白になった思考をフル回転させ、考える。
病院送りになったことを知らないだと?そんな訳な…………バタフライは思い出していた、前回のウルフとの対戦のことを。自分が転倒し負けて入院していた時のこと、こんな揶揄を耳にした。
『ウルフに負けたことの言い訳、それを怪我したことにしたんじゃないのか?』
もちろん、そんなことは決して無い。自分がコーナーに突っ込みすぎて転倒してしまったと言うのが事実だ。だか、その時のことを見ていない者はそう思っているのかもしれない。バタフライは入院中そんな苦々しい思いをしていた。
それだ!
あの三人はウルフに負けた言い訳で、病院に入院しているんだ。そうだ、それなら合点いく。あいつらはそれで自分の地区トップとしてのプライドを保ったのだろう。
しかしだ、結局ここへ行きつく。あの三人はこの精神が崩壊してしまったウルフとどうやってレースしたのか?
またそのことで頭がショートする。どんどんと恐怖にも似た疑惑の念が膨らんでいく。
ミカミは必死に何かを考えているバタフライを観察してた。この男は、妙に勘ぐり、考え込んでしまうようだ。そして、肝心なことを聞かないでいるような熱くなりやすく冷静な男ではない。
「バタフライ、なんでこのことを聞かないんだ?」
「何をだ?」
「どうしてウルフの精神が崩壊してしまったのかと言うことを聞かなくていいのか?」
「………それは…そうだな、何故なんだ?」
いろいろな謎が押し寄せて、考える暇がないバタフライ。正気からは遠ざかっていたのだ。
「考えることが多すぎて大変そうだから、そのことは後で教えよう。まずはウルフと戦ってもらわなければならないからな」
「……それもそうだな」
何が何だか整理の付いていないバタフライはミカミのいいなりになってしまった。
このようになったウルフとどうやって戦うのか?ミカミはゆっくりと窓際に近づき、外を指さした。その指の先は病院のすぐそば、なにやら平屋建ての廃墟が見えた。
「ウルフと戦える答えは、あそこにある」
バタフライはその答えに何か嫌な感じがした。EM乗りとしての勘が『ここは大人しく帰れ』と囁く。何かある、得体の知れない何かがそこにありそうな感じがした。
もしそれを見てしまったら、そして嫌な予感が当たっていたら、武者震いを通り越して、本物の恐怖がやって来る。バタフライは少しだけ後ずさりをした。
「怖がることはない」
ミカミはバタフライの後ずさりを見逃さなかった。
「ここから見えるあの工場跡地に答えがある。ウルフと対戦したいのなら俺と一緒にそこへ来てくれ」
その話をうまく飲み込むことができないでいたバタフライだったが、ミカミの指示通り病室から見える廃墟を窓から確認した。
訳の分からない恐怖の裏返し『ウルフと戦える』ただその一心でバタフライは窓の外を見ていた。
頑張りますね!
バタフライ、すっかり場の空気に飲まれてるような・・・。
それだけ、ミカミという男も発するオーラが凄まじいということでしょうか。
タダ者ではありませんね。
廃墟には一体なにが!?
次回も楽しみです!