「瘡蓋」
- カテゴリ:自作小説
- 2009/07/16 19:01:01
「大丈夫? 」
あの日差し出された掌は、確かに温かかった。
「咲江。お弁当食べよ」
赤いバンダナで包まれたお弁当を掲げながら、美唯(みゆい)はあたしに近づいてきた。
あたしは「うん」と短く返事をし、今朝コンビニで買ったメロンパンを机に下げたカバンから取り出す。
その間に、美唯は手近な机を引き寄せ、あたしの机と向かい合うようにセットした。
「いただきまーす」
あたしが小学校以来使っていないこのセリフを、美唯は律義に手を合わせながら言う。ホント、良くできてる子。そう感心して、まじまじとこの優等生を見つめた。
美唯と関わるようになったのはほんの1ヶ月前。
高校に入学して以来、人よりも冷め付いていて浮いているあたしは、即周りに敵対視されるようになった。
そしてその敵意を含んだ視線はそのうち「苛め」という一部の人間が周りにバレない様にする、陰湿なものにエスカレートしていくった。
三年に進級してすぐのあの春の日、あたしは体操服をビリビリと無残に破かれて茫然と立ちすくんでいた。
机への落書きやシカト、悪口を言われるなんかなら、まだ問題はなく、無害な方だ。
ただ、これは確実に困る。替えが効かない。
「なんであたしが」
初めてそう思った。そうしたら、今までの周りの行為をやっと憎んだ。
何も悪いことのしてないあたしが。どうしてこんな目に。嫌がらせを受けなきゃいけないの。おかしい。おかしすぎる!
目からは悔し涙が溢れてきた。この日まで、泣くのはあいつ等の思う壺、と意地を張ってきた分ボロボロと。
そんな最悪なシーンを、普段持病で休みがちだった美唯に目撃された。確か、忘れ物を取りに来たんだと思う。
今年初めて同じクラスになったあたしへのいじめを知らないであろう美唯は、すぐさま状況を理解しあたしに駆け寄り手を差し伸べてきた。
「大丈夫? 」
大丈夫、じゃない。
ようやく周りの理不尽な仕打ちに気付いたあたしは、その手をしっかりと握った。涙を流すほど限界を超していたあたしには、誰かの救助が必要だったのだ。
こうすれば、助けてくれる。名前も知らない、この同級生なら、きっと。あたしはその時はっきりと確信した。
そして美唯はあたしの確信を裏切ること無く、その日から隣にいてくれた。秘密裏に行われていたあたしへの嫌がらせを止めようとするのでなく、それに一緒に立ち向かう存在。それが、美唯だ。その存在は、とても心強い。あたしに仲間ができたからか、周りからの行為もだんだんと落ち着いてきた。
ねえ美唯。
あの日までのあたしは知らず知らずのうちに傷ついていた。
でも、美唯はその事実に一瞬で気付きあたしを救ってくれた。
まだ、傷は癒えていない。あいつ等のことは今でも憎いし。
でも、瘡蓋ぐらいにはなったんじゃないかな。
美唯もそう思うでしょ?
とにかく、ありがとう。
女子は結束が固いからね~。
息が詰まる。
一日3作……。恐れ入ります。
サークルの活動で、毎日1つお題を選び、消化していくんです。
そのおかげで毎日書くチャンスがあり、大変ありがたいです。
私の文章から、何か感じてくれればこの上なく嬉しいです。
覚めた性格の人は、「自己」を持ってるんじゃないかと思います。
確かにとっつきにくいかもしれませんが、私はそれも晴嵐さんの魅力だと思います。
女子はグループが出来ていて困る。
創作意欲が感じられますよb
俺も昔は毎日3作品書いたりしてたけどw
交換がきっかけで知り合いましたが、
俺はヨネさんの文章から、
自分とは近いものを感じたりします。
イジメに遭ったこともありますし、
自分のプロフにも書いてるけど冷めた性格でして、
それでも誰か理解者を求めていたりします…。