金狼の重圧…10
- カテゴリ:自作小説
- 2012/11/16 23:04:41
悪夢から覚めたバタフライは、すぐさまミッド地区へと向かった。時はもう夕暮れから夜へと…
ウルフとの決戦が近づいたと悟ったのか、周りを全て吹き飛ばしてしまいそうなオーラを発し、ミッド地区へとたどり着いた。
今の俺の気迫なら必ずウルフは気付いてくれる、そう願いながら。
朗報は、とある交差点からすっと現れた。EM乗りがバタフライに近づく。その男は走りながら質問した。
「バタフライだな?」
「誰だ?・・・おまえ?」
「ウルフが呼んでいる、付いてきてくれ」
その答えにバタフライの返事はなかった。それ以上に彼の自然に出た笑みが返事の代わりとなる。
『ようやく来たか』バタフライは素直に笑った。
見知らぬEM乗りの後ろについて行き15分ほど、着いたその先は大きな総合病院だった。
病院?
この病院は午後5時からの見舞客は夜間専用の入口を使う。バタフライは何か異様な気味悪さを感じながらも黙って男に付いて病院へと入った。男はエレベーターを使わずに階段へ向かい、4階で階段から外れる。
そこでようやくバタフライは口を開いた。
「おい、ウルフも怪我をしているのか?」
その問いかけに何も答えない男の足は401号室で止まった。
「どうぞ」
男は病室に入るように促した。ご丁寧にドアまで開けて。
そこは個室、何故か暗かった。天井にある蛍光灯は付けず、ベッドの脇に備え付けられた小さな電灯だけが輝いていた。なにか異質な感じがした。
バタフライは恐る恐る病室へと入る。中には窓際に細身の背が高い男とベッドに寝てリクライニングで上半身を起こしている男がいた。
窓際にいた男、ミカミがバタフライに挨拶をする。
「やあ、はじめまして、君がバタフライかい?」
「あんたは?」
「俺はウルフの友人で、ミカミ」
かろうじて顔の輪郭が分かるほどの明るさ。部屋全体を照らす明るさが無いのでミカミの顔ともう1人の男の顔を確認するのは難しい。
ベッドにいる男の顔はバタフライの方に向かっている。近づくとすぐに、異質な感覚がその男から発せられている事と何か様子がおかしいことに気がつく。
男から生気が全く感じられない。
油断するとミカミと自分だけしか部屋にいないような錯覚を起こす。それ程、ベッドにいる男は存在そのものが希薄に感じられた。
初めはその男がウルフなのかと思ったバタフライだったが、以前に会ったことがあるウルフとは別人のような雰囲気にバタフライの疑心は瞬間的に膨らんだ。
こいつはウルフじゃない。ウルフはどこにいる?
「ウルフは何処にいるんだ?」
ミカミは不思議そうな顔をする。そしてこう言った。
「目の前にいるじゃないか」
小説読ませてもらってます。景色の描写が詳しいので
私の脳裏には情景が浮かんでいます。
登場人物も、はっきり決まっていますw
闘争心は男にはつきものなのですね^^
今後の展開が、想像通りなのか大逆転なのか楽しみにしています。