Nicotto Town



きみはなにも分かっていない



分かっているのかって先生が言って、
強い精神力も必要って先生が言って、
ふんって、鼻で笑われるって先生が言って、
私は後ずさりした。

みんなが同じことを考えていたら、それはどこにも何もないのと同じだと思うのに、考えが私の中で膨張すると、阿呆のように私は身動きがとれなくなり、景色ばっかりがよく見える。

教室から外に出て、道の端に立ち、人を待っていた。
もう待つことをやめようかと思っていた。そのくらい今日私は機嫌が良くなかった。
つよい風が吹いて、体にあたっている。晴れ。これは気持ち良いと思った。
心臓のあたりが冷たい。つきぬけるみたいに、置いていかれるみたいに、冷たかった。
この、かんじは、二、三年前に一人で東京の街を歩いていた時とほとんど同じで、私はまただ、と思った。あの頃の私は、選ぶことをいちいち選ばなかった。きっとそうすることしか、そこになかったから。あの時間帯の、お菓子の空き箱みたいだった私は、気付かないふりをすることしかできないほどに限られていて、つめたかった。
その日は雨が降っていて、雨が、線で、風で斜めになって、斜線みたいに、雨が、あれは斜線なのに、雨で、あの遠くの斜線が、私の体も濡らすのか、私がどこにでもいるみたいに。と考えていたことを思い出していた。
わたしは自分のことばっかりで、だから集団行動もできなくてすぐ逃げて人を好きになることもできない。あんまり興味がない。あんまり興味がない。わたしはとても身軽だった。だれのものでもないし、だれももっていなかった。

何となく今まで生きてきて、あーこれがxxかって、本当に思ったとき。わたしはわたしの事を恥じた。ちょうどいいきもちがほしいのに、私は選ぶということが相変わらずへたくそで、人を困らせてばかりいる。でも人を好きになった、ということを私に慎重に教えてくれるあの人に、嫌われることが怖いと思っている。あの人の正しさをすべて学びたい。

隣に立っている人が、何かを話しかけてきて、すると私からはずいぶん不機嫌そうな声がでた。
私はいま冷たくて気持ちがいいのに、気持ちがいいはずなのに、おかしいな、と思って、おかしくて、くすくすするのに、それでもやっぱり声も言葉も不機嫌で、おかしいな、と思って、こんなふうに、気温の低い日は、感情が200個くらいになっているのに、みんなおかしいのね。結局、私は待つという選択も、この後の授業に出る、という選択もやめてしまった。



帰ってから、薄暗い部屋に、ぺたんと座った。
鞄の中から潰れたクリームパンを取り出して、もそもそと食べる。
あんまり好きじゃないな、と思った。
クリームパンのことではなく、とくに好きでもきらいでもどちらでもないものすべてのことを、実のところはあまり好きじゃないんだな、と思った。

やりたいのではなく、やりたいと、思いたいだけで、やりたいわけではない、けど、やりたいと思いたいのだから、やるのだろう、あらゆることを、と頭の半分で考えながら、もう半分の頭で今日一日外で過ごして疲労してから食べる潰れたクリームパンの貴重さを確かめて、ほんとうに安心したい夜がほとんどである。


アバター
2012/11/17 06:57
好きな人が出来たのかな
アバター
2012/11/16 16:15
僕は変わってしまった。
ニジンスキーの動画は何も残っていないといわれてるのにこの画面の中の男の動きは尋常じゃない。
多分彼がニジンスキーだ。
多分マイケルはこれをみてる。そしてこの部隊装置も。
マルセルマルソーと楽しそうに離してるマイケル。お前は俺の理解者だ。老いたその男の顔がそうかたってる。フレッドアステアから電話があって出かけたマイケルがみせられたものはアステアが踊るビリー・ジーン。お前は俺のよき理解者だ。
そしてジェーム。ブラウン・・・・
何処までやればいいのさ。どこまで。一体何処にそれ程までの時艱が眠ってる。
『彼は衣装のボタンひとつにまでこだわった。ライトの反射が客席のどこに行くのかさえ彼はしってる』
何処まで、どれだけ・・・
アバター
2012/11/16 00:44
霹靂火さん

「きみはなにも分かってない」と言われたのは、わたしです。
『ウエハースの椅子』という小説のなかで、小学校をスパイごっこをしてやり過ごしたというのがありました。自分はスパイで、任務のために小学校に潜入しているつもりになり、物事をすこし耐えやすくするんです。
わたしはたぶんそんなかんじでした。

みんなはじめは、きれいでかわいくてこわれそうで無敵で、その姿がいちばん美しいとおもいます。
いつも何が言いたいのかよくわかりません。
いじけてるんじゃなくて、本当にそう思ったって言っても笑われるのかな。

自分のことばっかりな私は、自分より大事になるものが欲しいらしいです。

いつもコメントありがとうございます^^
しずかなのに重たいかんじが、いいです。心がすうと落ちつきます。

アバター
2012/11/16 00:18
「 おじいちゃんはなんでも知ってるんだね!」
そう僕がアドリアーノに言うと、彼は答えた。
「 なんでもは知らないさ。ワシが答えられるのは、ワシが知っていることだけじゃよ 」 と。

誰もが自分が知っていることだけを知っていて、
それ以外のことはまるで知らない。
わかっているフリをしたりする人も、所詮、まるでわかっていない。

「 こんなアホなヤツにアホと言われたくないわ!」 という友達に
「 いや、どんなアホな人から見ても、やっぱりアホはアホなんやで!(笑)」 と答えてしまう僕。

誰もが 「 自分が知っていることしか知らない。」 ということをわきまえれば、
もう少し、人を見下すことも減るのは間違いないんだけど、
でも、自分が無知であることを認めたくはない人が多いんだろうね。

やりたくないことをいやいやながらにすることもあれば、
やりたいと思いながらも、なかなか手をつけられないこともある。

結局、難しく考え過ぎるのは良くないんだ、きっと。
さまざまなことを感じて、それをほどほどに考えて
どこかでテキトーに割り切って、そして前に進んで行くって感じかな。

こんなことを書く僕に、わにさんは言う。
「 きみは何も分かっていない 」 と。



Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.