星と闇と、終わりの物語。【小説にするとしたら】
- カテゴリ:自作小説
- 2012/10/28 19:57:18
――流れよ。遥かなる地平線の彼方まで。
穏やかに差し込む陽の光が、眠気を誘う温度で少年を撫でた。
ほどよく古びた木製のテーブルに広げられた、たくさんの分厚い本。
頬杖を突きながら少年が眺めている本には、
見ているだけで目が痛くなってきそうなほどに
不思議な文体の文字たちが所狭しと並んでいる。
少年の眠そうな山吹色の瞳はその文字列を追い、
艶やかな黒のショートヘアーが、開け放たれた窓から吹き込む暖かな風に揺れた。
まるで神官が身に纏うような白いローブは一見少年に似合わないようで、
見慣れると違和感を感じなくなる。
長い裾には金色のラインが走り、背中と胸には逆さ十字架が刺繍されたそのローブは、
この世界に古くから生きる「まじない師」の正装だ。
「まじない」は、今やこの世界になくてはならないもの。
生活のほとんどをその「まじない」に頼り、時に、争いにまで使われる。
――溢れよ。迸らせよ。その怒り、全てを押し流せ。
棚と言わず床にまで雑然と生活用品が並べられた狭い家には、
今少年が読書にふける食卓と寝室、玄関しかない。
といっても玄関にはモスグリーンのドアが取り付けられているだけで、
靴を脱ぐ習慣が無いせいで靴を置く場所も無くよけいに狭く感じられる。
ドアを開けるとすぐそこにごっちゃりと散らかった食卓が出迎えてくれ、
その奥にはもう一つドアを隔てて寝室があるといった具合だ。
ちなみに風呂は、少年が湯につかる習慣がないため存在しない。
清潔さを保つためにも、「まじない」を使用しているからだ。
つくづく便利なものだが、この「まじない」を行使するには詩のように構成された
2行から3行、長いもので最大10行にも及ぶ「呪文」を暗記して
つかえることなく詠う必要がある。
才能は力の有無は一切なく、記憶能力だけが試されるこのシビアな「まじない」は、
一度覚えてしまえば再び行使するときには自然と口が動いてくれたりするので、
まあ言ってしまえば、「万能」、だったりしてしまうわけで。
……故に、この力を使った争いは、絶えない。
――滾れ。暴れよ。祖は水の神、悪しき海龍よ。
ぺらりと、少年の生白く細い指が、黄ばんだ羊皮紙のページをめくる。
吹きぬけた一際強い風が白いレースのカーテンをはためかせ、
テーブルに置いてあった水色の小瓶を倒していった。
ころん、と倒れた空き瓶は、そのままテーブルから落ちて、
かしゃん、と呆気なく砕ける。
――嘆け。詠え。啼け。喚け。狂え。無力で愚かな人間ども。
しかし少年は気づかない。
文章を負う眠そうだった目が忙しなく動いて、今は真剣な色をしていた。
少年の悪い癖は、熱中すると周りのことがわからなくなることだった。
――逃げ惑う場所さえ喰らい尽くせ、天罰を下せ。
少年の住む家は、だだっ広い平原を一つの集落とした大規模な街のはずれにある。
だから街までに10キロくらいあって、正直遠すぎやしないかと思うほどで。
おまけにすぐ後ろに街の終わりである暗い森が広がっているから、
流行り病で先立ってしまった両親の残したこの家で
一人暮らしをする少年の家にはまず、誰も近寄らない。
だが、一人だけ来てくれる者が居る。
ちょっと街寄りに住んでいる、少年と同じく一人暮らしの少女だ。
少女とは年に一度の街祭りのときに出逢い、同じ境遇から意気投合して友達になった。
実際、少女は可愛かった。
優しかった。鈍くさいところもあったけれど、それもまた可愛いと思えるくらいに。
けれどまだ、「友達」だった。
その少女は毎日、お昼ごろ――丁度今頃――遊びに来てくれていた。
そして今日も、来てくれるはずだった。
――嗚呼、全てを喰らえ。世界を終わらせる詩(ウタ)よ――
ぱたん、と本を閉じた。
今日はここまでだ。
色褪せた藍色の表紙には金色の文字が刻まれていたけれど、
擦り切れすぎて読めなかった。
ふと、顔を上げる。
突然、今までしていなかった焦げ臭い匂いが鼻を突いた。
いくら熱中しすぎて周りのことが目に入らなくなって、焦げ臭ければわかったはずだ。
少年は無造作に、窓の外に目をやった。
そして言葉を失った。
*
業々と、火の手が上がっている。
豊かな緑の草原を飲み込み、紅蓮の舌を縦横無尽に這わせていた。
少年は椅子を蹴倒し外へと飛び出した。
テーブルから何冊も積み上げられた本が崩れた音がしたけれど、どうでも良かった。
「…………なんだ……これ……」
火だ。
「まじない」だ。
――そんなことは解っている。
問題は「誰が」やったか。
いや、違う、そうじゃない、もっとなにか、大切なことが、
――気づこうとするフリをしなくたってわかっていた
「……サー、ヤ…………ッ」
サーヤ。
サーヤ。
サーヤは。
その掠れた声が自分ののどから出たことに気づいたとき、
少年は激しくわなないた。
寒い。熱いのに寒い。
焦りという名の衝動が、胸の中に息苦しいほどに渦巻く。
既に炎が街のほうからも吹き上がっているのが見えた。
のどを焼く熱気が、煙と一緒に器官を刺す。
茫然自失に陥る寸前、袖で口許を覆って一歩踏み出した。
灰になった芝生は踏みつけると、儚い音がした。
*****
きっと小説にしたらこんな感じ。
でも書いていて楽しかったので、もしかしたら続きも書くかもしれません。
そ、そのためにはご意見もお聞かせいただきたい、次第で、!ry
どうだったでしょうか?
「面白かった」、「わけがわからなかった」、「つまらない」
等等、お待ちしております/(^Q^)\!
P.S.
ちなみに今回の詩。
「悪しき海龍」を「リヴァイアサン」からとっていたりして、
「祖は水の神」とか言ってる割に悪魔と混じっていたりで案外支離滅裂だったりします。
「地を砕け。空を割れ。壊せ壊せ無に返せ」っていうフレーズも入れたかったんですが
「全てを〝喰らえ〟」っていう、「破壊」よりも大きなエフェクトのせいで
入れ損ねてしまいました^q^ry
――つくづく、救いようのない厨二である。←傍観者
うふふどこでしょう!!ry
あわわわわ、あ、ありがとうございます……ッ!
頑張ります!!むしろ頑張らせていただきます!!!1
面白すぎて目が離せませんでした(´^ω^`)
続編希望です!!
きゃ!何もでないわよ//!←死んじゃえ
見るんだ!これが現実だああ!爆
魔法とか魔術にするにしては、
術式を詠う格好(地面に両手を突く)がなんとなくジャンルミスな気がして、
結界師28巻に触発されつつ「まじない」を採用してみましたw
一度チャレンジしてみたくて、ロードオブザリング的な舞台を用意してみたり……
要するに私も初体験なわけだね!ry
サーヤ!ry 黄緑の髪のロップイヤー(あくまで髪型)娘だぜ!
くっ………駄目だ……文章が眩しすぎて直視できないッ……!!((
魔法じゃなくまじないってところにやられました。
世界観にきゅんきゅんしてます(
サーヤ!!サーヤサーヤサーヤ!!!←