金狼の重圧…02
- カテゴリ:自作小説
- 2012/10/20 11:46:31
ウルフの走りを喩えるなら、寸分も狂い無い時計のよう。
何事も無く一周する秒針のように彼はゴールへと帰ってきた。その姿に泥臭さは微塵も感じない。
ウルフは自分の走りをこのように言っていた。
「もしかしたら、俺の走りは退屈な走りなのかも知れない。面白みの無い走りなのかもしれない。それでも何故か前へ出てしまう。まるで、宿命なのかと思うくらいに」
これを聞く限り、ウルフが自分の走りに満足していたのか探る事は困難だ。確かに彼は全戦全勝の走り屋ではあったが、戦い終わっても満足している顔を見たものは少ない。
何故かしら曇ったままの顔を崩さず、EMを降りてからもう一度自分の走ったコースを歩き、何を確かめているのかたまに頷くウルフの姿があった。
まるで遥か遠い過去を思い返すように、そして懐かしむように、自分が走ったアスファルトを撫でている時もある。
不思議な男だった。
風を味方にし、やじうまである観客を魅了し、EMを自由自在に操ったゴールデンウルフ。
誰もが彼の走りを見たいと思いコースとなる高速道路へと足を運んだ。しかし、観客である一般人はある日を境にポツリポツリと減っていった。
なぜなら、彼の姿が見えなくなったからだ。
皆の心配をよそに気配すら感じさせないウルフ。引退したのか?明確に引退を表明などしていないウルフだったから、すぐに戻ってくると誰もが思っていたのだが、何日経っても公道に姿を表す事は無かった。
当然、噂が飛び交う、ある者は事故で怪我をしてしまっただの、ある者は外国へ行っただの、ある者は風になったのだと…
ウルフは姿を消し、彼のチームは空中分解、もちろん解散となった。
彼はどこに行ったのか?もっと年月が経てば神聖な扉を開けてスピードの彼方へ行ったと言うような伝説も出るだろう。それでもいつか戻ってくる、それがウルフと戦い、そして倒したいと思っていた奴らの思い。
EMに乗っているものは誰もが言った「ウルフは必ず戻ってくる」
ウルフが姿を消して半年以上が経った。
続きが楽しみです♪
ウルフがカッコいい!
もう私も観客と同じ気分^^