Nicotto Town


小説日記。


少年と本好きの悪魔(少女)。【短編】ⅱ





 何度、何度そうして、欲に溺れた愚かな人間を灰にしてやったろう。
 そのたびに私の心は、空っぽに乾いていくというのに。
 乾き、罅入り、砕ける寸前だった私の心に、その声は染み入っていくようだった。
 喚ばれることに慣れてはじめて、私はだんだんと人の世からの招きを無視するようになっていた。
 今回もその無数の"退屈"の一つであるはずなのに。
 私のただの気まぐれが、何かを変えるんだとしたら。
 私は今まで、退屈な日々を退ける"変化"を見逃していたんだろうか。
 …否、そんなはずはない。
 きっと、ただの偶然で。
 きっとこれは、ただの偶然の重なりで出来た、
 "今までに無い何か"で。
 ――そこで、はっと気づく。
 …私は、期待しているのだ。
 気づくと同時に私の頭の中で、もう一人の私が「 裏切られたらどうする 」と囁いて、
 余計な期待をして私の心が砕けるのを心配していたけれど。

 私は、この賭けに乗ると決めた。
 "期待"という名のコインを全て賭けてやる。
 これで駄目なら全てを諦めてやると既に決心しているのだ。
 幸い私には失うものなど何も無い。
 思う存分賭けに乗れる――さあ見せてみろ、私の期待に応えてくれ。

 そして私は、眩い白の光を潜り―――


 …見た。
 私の新たなマスターを。
 ゆっくりと開いた双眸に、真っ先に映ったその人物は、
 私を馬鹿みたいな阿呆面で見上げて尻餅をついていた。

 …なんだ…まだ子供じゃないか……

 見たところ15歳前後だろう。
 雄だ。
 軟弱そうな顔と身体をしている。
 これが人間で言う「少年」と言う奴なのだろう。
 私を見て怯える表情は間抜けという言葉をそのまま体言したような情け無い面で、
 私は思わず、小さく噴き出してしまった。
 しまいにはそれは軽やかな笑い声に変わる。

 ちなみに私の人間を模した容姿も、丁度そのくらいの歳の人間の雌の姿をとっている。
 肉体年齢とあまりにかけ離れた精神年齢と実年齢は、
 人間で言う所の「老女」にも当てはまらない。
 …或いは、「魔女」とでも呼ぶのが滑稽で丁度良いだろうか?
 人間の子供の姿をとった「魔女」など、悪趣味も良い所だ。


 一人で勝手に腹を抱えて笑っている私に、
 私を喚び出してしまった気の毒な少年は瞳ならず口までぽかんと開けていた。
 しかし、私があまりにも笑い転げているので気を取り直したか鋭く息を吸い込むと、
 震える唇で声を発する。
 私を七度も地獄の底から喚んだ、澄んだ声音を。


「 ……ッあ、の……ッき、君は…、 」


 嗚呼、一体何百年ぶりに笑ったことか。
 いや、感情を表に出した事か。
 自分を表に出す事が、こんなにも清清しかったのを今、私は思い出していた。

 相手の心の内を全て見透かすというダンタリオンの瞳で少年を見据えてやると、
 びくりと肩を震わせて僅かに後退りしたようだった。
 私は湧き上がる笑いを何とか押さえつけ――それでも頬が勝手に緩むのを押さえられなかった――、
 私にとっては堂々と、少年にとっては見下し馬鹿にしたような威圧的な笑顔で、
 長いこと忘れていた"私"を、解き放ってやった。

 差し出した手に、少年は怯んだ。


「 ――我こそはソロモン72柱の悪魔が1柱、71柱のダンタリオン。
    …ミーを喚んだのは、お前ですか?人間 」


 紫色の火の粉を爆ぜさせ、魔方陣は契約を促すように輝いた。


 END.


******

お疲れ様でした、昨日の続きです。

相変わらずの稚拙な文章、お読みいただけて嬉しい限りです。


よろしければ感想を下さい。

明日は35柱、マルコシアスの話です。


くっそよく見たら誤字がありました…!
まだまだ駄目だなぁ
PCだからって漢字変換機能に頼ってちゃ駄目だ

アバター
2012/09/08 18:26
今日は。

すみません、きっと退会します。
ですが、十秒くらいで帰ってきます(^ω^)
訳については後のアバで説明したいと思います。
良ければ、次のアバでも仲良くして下さい(^ω^)

誰おま、にならないように帰ってきた時は「(^ω^)」の絵文字を
三回以上記入するのでよろしくお願いします!土下座
アバター
2012/09/08 15:34
>あやかさん

「引き込まれる世界」を意識してます、…出来てるかは解ってないんですけどw
おっと、では今からアッパーカットを入れるので覚悟を(ry


おお!ありがとうございます!
何回か書き直して悩んだ部分ですそこ

私のは完璧に独学で疾走してる小説ですが、嘘でもそう言っていただけるのなら嬉しい限りです…!
アバター
2012/09/08 15:31
>沙希未ちゃん

フフーフw私はやる時は手が早いぞう!(ry

女の子がカナンで、男の子が我が友のキャラのアレン君です^q^
だろう!?可愛いだろう?!?!(ryry


! ありがとう…;ω;
解りにくいんじゃないかとか、伝わってないかもとか、
いつもそんなのを気にしてて文章に自信を最近持ててないのよね。
頑張ります!
アバター
2012/09/08 11:49
・・・・。なんかもう文章に飲み込まれていく^p^
ついにアゴが外れましたよ(ty

私的に「"期待"という名のコインを全て賭けてやる。」という言葉の
表現がすごく良かったです!
私も小説書くのが好きだけど、こんなにレベルの高い小説は始めてです。
そこら辺の小説より糾蝶様の小説がとんでもなくすごいです!
アバター
2012/09/08 08:16
続きがいつの間にうpされていたのかと<●><●>

女の子の口調がかわいすぎて萌え禿げました!
男の子のどもってるところにも萌えました…!!!
もうかわいいですねこの子たち!

シキロさんの小説の世界観にはいつもいつも吸い込まれております(・∀・)
特にこの人外系の小説はシキロさんの独特な引き込まれる感じが凄く面白いです。
続きも楽しみにしています^^
アバター
2012/09/07 22:54
>杞憂

二人とも可愛すぎて鼻血ですうへへ(ry


悪魔の世界ってこんなかなって妄想だけどね!
乾いた少女が徐々に潤いを取り戻していく姿を描きたくてこうなりました
…なんて素敵なのだろう(真顔


いやいや!此方こそすぐに読みに来てもらえて嬉しかった!
でも少しでも力になれたなら嬉しいです*
無理するなは必要の無い言葉だな…お互い頑張ろう!
アバター
2012/09/07 22:50
>ティキさん

既にルーズリーフに認めておいたのがあったので、続きとして書かせていただいたので早く仕上がりましたw
またお越しいただけて嬉しいです!ありがとうございました*

き、きっと少年と何か、こう、見てるこっちがニヤニヤしてしまうような
アレを繰り広げてくれるんじゃないでしょうかなんて(ry


おー、残念w女の子ですw
アバター
2012/09/07 22:33

可愛いよカナンカナンカナン!
そしてまたアレンも可愛いよアレンアレンアレン!

カナンちゃんにも複雑な過去があったのだな…。
アレンくんといちゃこらして少しでもあったかーくなってくれたら良いのに…!

久しぶりに糾さんの文章読んだらなんだかほっとしたよ。
最近勉強尽くしで切羽詰まってたからさー!
なんかありがとね! また期待してるよ!
アバター
2012/09/07 21:02

続き書くの早いですね!!!ビックリしました。
でも、また楽しく読ませてもらいました(^^♪

これからどうなるのか楽しみですね☆☆

ダンタリオンの顔ぜひとも見たみたい!!
もうイケメンの悪魔と勝手に想像しちゃってますww



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