サークルが休止中なので
- カテゴリ:自作小説
- 2012/07/19 22:25:58
ニコットの小説サークル 文芸館『one time of jewel』に参加してるのですが 休止中なのでこっちに載せましたです。
a haunted house
嵐の夜に旅人がたどり着いたのは誰も近寄らぬ幽霊屋敷。
ひさびさの獲物だわいと亡者たちは大喜び。てんで騒いでいるところ、年長のカイゼル髭の将軍の幽霊がその無秩序さをたしなめる。
「ただ群がれば、客人は我等を森の猛獣のように恐れ、その後卑しい者と思うだろう。そして噂はたちまち広がって、我等を畏怖する者もいなくなる。驚かすだけでなく我等を恐れ敬うように客人にしかとわからせなくてはならない」
何人かの男たちが抗議の声を上げたが、将軍を主人と決めた首無しの騎士が剣を振り上げ黙らせる。
「そりゃそうだ。私のように仲間入りしてしまっては元も子もない」と言ったのはかつて心臓が悪かった男。
「私の悲しい一生をちゃんと聞いて欲しいわ」と恋にやつれて死んだうら若き乙女。
「身の上話なら、あなたよりずっと面白く話せるわ」と嘴を挟むのは恋人の一人に毒殺された恋多き女。ぺろりと口から滴る血を舐め、乙女とにらみ合う。
「まあまあ、お嬢さん方、落ち着いてください。私がヴァイオリンで一曲奏でましょう」と骸骨の音楽家。
「悔い改めよ。清く正しく生きることを拙僧が説いて進ぜよう」という説教僧は、お前に言われたくない。とっとと天国でも地獄でも行け。というヤジに沈黙する。
「そんな事より、あたしの目玉はどこに行ったかしら」という老婆は耄碌しているので、おばあちゃんポケットに入ってるじゃないのとなだめられる。
「僕たちはいつになったら遊んでもらえるの?」と青白い子供たち。「大人たちは大切な話し合いの最中よ。邪魔しないの」とゾンビのおばさんに叱られて、「大人たちってずるいや」とむくれたり拗ねたり。
「静かに、静かに!」
将軍が愛用の短銃をずどん、と撃ち鳴らし一堂を黙らせた。
「てんでんばらばらに言い合っていても仕方がない。要求はリストにまとめて効率良く実行するのだ」
かくして一人一人順番に己のしたい事を述べていく。書記官を仰せ遣った小役人は、やれやれまた過労死してしまいそうだわいと溜め息をついた。
それから何をするかが相談されて、随分時間がかかったことだろうと読者の皆さんは思うでしょう。しかし幽霊たちの時間は生きている者のそれとは違っていて、相談はたちまちまとまった。
第一には、将軍の歓迎の言葉と幽霊の権利と尊厳についての演説。
第二は、女たちの身の上話、音楽家による伴奏付き。
第三は、男たちの身の上話。これも伴奏を付けようと話し合われたが、音楽家の「私の美意識に反する」の一言で取りやめになった。
第四は、子供たちの歓迎の歌。「お遊戯なんて嫌だ」という子供たちの主張は再びゾンビおばさんが一喝で黙らせる。
第五は、伝統の死者たちの踊り。
第六は、幽霊たちから生きている者へのお願い。
・・・夜明けまで延々と続くスケジュール。最後に長い説教は駄目だけれど短ければいいだろうと僧侶の祈りの言葉が滑り込み終了となる。
さて、それから、旅人が幽霊たちの企みに尊敬の念を抱いたか、恐怖を抱いたか、びっくりしたか、呆れたか、笑ったのか。そもそも旅人が若者なのか老人か中年か子供か、男なのか女なのか。金持ちか貧乏人か。小心者か豪胆か、文系か理系か体育会系か。それはまた別の話。
面白い文章を書かれますね。
人の作品を評価できるくらい物を読んでないので、難しい。。
やっぱもっと本読んだほうがいいんだろうなあ
とても面白いです。
楽しく拝読させていただきました。
第六の「幽霊たちから生きている者へのお願い」に興味が湧きますね^^。