「こちらは、季節のウニと鮑のパスタでございます。」

「そうそう、これには、ドイツの白ワインが合うのよねえ♪」

大皿に盛られたパスタを、スタッフが手際よく３つのお皿に取り分ける。

ひやりとした感触の、ワインボトルから、小気味の良い音を響かせて、
琥珀色の液体が、ワイングラスへと注がれた。

「これも何かのご縁♪出遭った記念に・・・乾杯っっっ！」

なんとも優雅なしぐさで、美少女ヌマっちは、菊丸天使と軽く
グラスを触れあわせる。

菊丸は、美味しそうな香りの立ち上るテーブルで、
周りの視線を気にもせず、パスタと格闘しているアンジェに、
内心ハラハラしながら、うつむいていた。

「おいしっっ！おいしいわ、これ！！」

つい今し方、おかわりのケーキを３つもたいらげた割には、
豪勢な食欲のアンジェである。
この小さな身体、もしかして心臓とか何にもなくて、
胃袋のみで構成されているんじゃないだろうか！？

「ねえお兄さん、これっていつまで食べられるの？」

給仕をしているスラリとした少年に、無邪気に話しかける。

「はい、こちらの季節のパスタは、７月中頃までを予定しております。」

「アンジェちゃんは、味がわかるのね、すごいわ。」

ヌマっちが、面白そうに微笑みながら、言うと、菊丸天使は
ますます恥ずかしさのあまり、天を仰いでしまう。

「あら、お口に合わないかしら！？」

心配そうに覗き込んだヌマっちに、菊丸天使は慌てて首を振った。

「お・・・美味しいです！とってもっっっ！！」

確かに、パスタは、とんでもなく、美味しかった。
これが、単にヌマっちと二人だけのランチなら、
文字通り天国気分で楽しいランチタイムになったに違いない。

「ところで、菊丸さん、これからのご予定は？」

・・・そうだ！こんなコト・・・まあ、腹が減っては戦が出来ないから
仕方ないけど・・・してる場合じゃないっっっ！

「あの、実は私・・・。」

菊丸天使が口を開きかけた時だった。

「きゃああああああああっっっっっ！」

テラスに面した広場の中央あたりから、女性の悲鳴が聞こえ・・・。

バタバタと数人の、逃げるような乱暴な足音が辺りに響き渡った。

「だれかっっ！誰か追いかけてええ！！」

ヌマっちと菊丸天使が、驚いて音の方へ目をやると・・・。

黒マントと緑マント、そして赤マントの３人が、分捕ったらしい（？）
オレンジ色のかぼちゃ帽と、何故かススキを一本、
最後の一人は、巨大なナスを抱えて、逃げ去るところだった。

「・・・あいつよ！あいつらだわ！！」

パスタを尚も頬張りながら、アンジェが叫ぶ。

「アタシをユーカイしたのは、あいつらよっっっ！！！」

驚いて振り向く菊丸天使に、アンジェが叫ぶ。

「あいつら、くれくれって、いろんな人につきまとって、
アイテムをカツアゲしてるのよっっっ！」

・・・お土産を分捕り、尚かつお土産を運ばせ、ケーキセットまで
ご馳走させたことは、記憶にないらしい。

「この、脇に置いてあるオミヤゲは、あいつらのアジトから
持ってきたものなの！動かぬ証拠だわ！！」

椅子に立ち上がり、得意げに、脇の椅子に積んであるアイテムの
数々を指さすと、ヌマっちがほうっとため息をついた。

「アンジェちゃんは、スゴいのねえ・・・。」

椅子にちょこんと座り直し、アンジェは鼻をフフンと鳴らした。

「ダテに何年も生まれ変わってないわっっっ！」

・・・そういう割には、物欲も食欲も旺盛だなあと、菊丸天使は
こころのなかでため息をつく。

「じゃあ、これから追いかけましょうか♪犯人たちを。」

「ヌ・・・ヌマっちさん、やめてください、危険ですっっ！」

焦る菊丸天使に、ヌマっちは残念そうに小首をかしげる。

「えっと・・・じゃあ、ともかく、デザートとコーヒーが終わったら
考えましょ♪」

「ボーイさん、でざーとメニューちょーだいっっっ♪」

アンジェが張り切って手を挙げる。

・・・いや、犯人逮捕じゃなくて、くまぬい捜しなんだけど・・・とは
言い出せない菊丸であった・・・。


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ふう・・・ウニと鮑のパスタ。食べたいなあ・・・。
夏までの小麦粉絶ち、ガマンガマンｗｗｗ！