Nicotto Town



ドーン

平野啓一郎さんの「ドーン」読了。
一人の個人は複数の分人をもつという発想で書かれた近未来小説。
分人という概念がわかりにくいと思うので、あらすじを紹介します。

主人公の佐野明日人は医師だったが、東京大震災で息子をなくし生きがいを宇宙飛行士となることに見つける。そして2033年、宇宙船「ドーン」で明日人は他のクルーとともに火星への有人飛行に旅立つ。やがて、火星への飛行途中で起こった事件がアメリカの大統領選に大きな影響をもたらす。
共和党大統領候補の保守的なローレン・キッチンズは、古きよき人間関係を取り戻すため複数の分人を自由に使い分けて生きるという分人主義を徹底的に批判する。一方、民主党大統領候補のグレイソン・ネイラーは誰もが人間関係の質に応じて分人を使い分けなければ現実に適応できるとして分人主義に肯定的な姿勢を示す。
明日人と妻の今日子との夫婦関係の亀裂が、主要なテーマの一つになっている。そこでは、夫婦の分人主義による相互不信が絡み合ってくるが、今日子の発言が非常に印象的である。

「ひとりの人間の全体同士で愛し合うって、やっぱり無理なの?そこに拘るのって……子供じみた、無意味なことなの?」

夫婦、親子、恋人、親友といった人間同士の密接度の高い関係の信頼の揺らぎを描きもがくことで人間関係の夜明け(ドーン)への道を示していく。

小説に描かれた可塑整形、散影という人間の顔を検索する顔認証検索サービス、AR(添加現実)といった近未来のテクノロジーが、分人主義化した人間関係に本当に必要となってくるのかも・・・
分人はペルソナに通じる概念だと思う。
夫婦の名前が明日人と今日子、物語のタイトルがドーン、意味深です。

アバター
2012/06/29 08:08
>カトリーヌさん
そうですね。
アバター
2012/06/29 00:09
御近所さんと付き合う時、会社にいる時、子供に接する時、
別々の人格が対応する・・、知らず知らずに分人に。
このニコタの住民アバターも、ある意味、分人かしら?



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