Nicotto Town



腐ってみました 最終回

最後なので、いつもより長めです^^ゞ


セルカの顔を両手で挟み顔を覗き込むように告げたティーグの言葉に、セルカは呆然とした顔を返した。
そのまま微動だにしないセルカに、ティーグは少し不安がわきあがる。
「・・・セルカ?」
覗き込んだままそっと声を掛けるが、やはり反応はない。
セルカの気持ちも確認しないまま、もしかして性急すぎただろうか。顔を挟んでいた両手を肩まで下ろし、そっと揺さぶるとようやくセルカの目がティーグを捉えた。
「あ…あの・・・」
そう言ったまま、また黙り込んでしまうセルカに、ティーグは辛抱強く次の言葉を待つ。
しばらくティーグの顔をまじまじと(あるいは呆然と)見ていたセルカがようやく口を開いた。
「あの…本当に?」
おずおずといった様子で聞き返してくるセルカに、ティーグは「ああ」と頷いて見せる。
「だってティーグさん、女の人にすごくモテるのに…なんで俺なんですか?」
眉尻をこれ以上ないほど下げて重ねてそう問い返すセルカに、もしかして嫌だったのだろうかと不安が頭をよぎる。キスはやはり驚いたために抵抗しなかっただけで、この想いはセルカにとって迷惑だったのだろうか。

「お前がいいんだよ。お前じゃなきゃダメなんだ。お前だけを愛してる」
ティーグの言葉にセルカは泣きそうな顔でくすりと笑うと、「答えになってないですよ?」と言った。そしてティーグの首に腕を回して抱きつくようにすると、「俺もです」と言った。
「俺もティーグさんが好きです。ずっとずっと前から…多分初めて会った時から好きでした」
「・・・・・マジ?」
驚いて顔を覗き込むティーグに、セルカはにっこり笑って「マジです」と答える。
「じ、じゃあさ、お前を抱きたいって言ったら?」
「抱く?」
ティーグの言葉に意味がわからないらしくこくんと首をかしげるセルカ。
そこで引き取ったばかりの頃セルカが言っていた『夜の相手』と言う言葉を使ってみると、セルカの顔がバッと赤くなった。
(ちょっと待て、なんだこの反応は!)
急速に『抱く』の意味を理解したらしく赤くなってもじもじするセルカに、あの時はないとは言っていたが、実は誰かの相手をした事があるんではないかと疑念を抱いてしまう。
「…お前さ、なんで『夜の相手』なんて事知ってんの?」
なので思い切って聞いてみた。
「ああ、あの…年上の従兄がそう言うことしてお金もらってた事があって…それで、戻って来てから今日はどうだったこうだったって他の兄弟に話してるのを聞いた事があったから…」
するとセルカはもそもそとそう答えた。
「じゃあ、お前はした事ないんだな?」
改めて確認すると、セルカはこくんと頷いた。
「俺なんか買いたいと思う奴がいる訳ないって…」
恐らくその従兄が昔セルカに言ったのであろう言葉を遮ると、ティーグは再びセルカに口付けた。

「そう言えばティーグさんの本当の姿って、どんななんですか?」
「は?」
お言葉に甘えてセルカの気が変わる前にと押し倒した時、不意にそんな事を聞かれた。
「本当の姿?」
「あの…妖魔って人間のフリをしてても本当の姿はすごく醜くて恐ろしいって小さい頃聞いた事があったんで、ティーグさんの本当の姿ってどんなんだろうと思って… あの、聞いちゃダメでしたか?」
いや、ダメではない。ダメではないが、醜くて恐ろしいって…なんだそれは。つか、今聞く事なのか?
セルカの顔をまじまじと見つめそんな事を真面目に考えるティーグだった。
「いや、ダメじゃないけどさ。…もしもおれが、本当の姿は口が耳まで裂け、目は赤く光り、体中に鱗が生えて尻尾があるなんて言ったらどうするんだ?」
勿論ティーグのもう一つの姿はそんな恐ろしい姿ではないが、もしも本当にそんな姿だとしたら、そしたらこいつは逃げるんだろうか。
「別にどうもしないです。どんな姿でもティーグさんはティーグさんですし。ただ本当の姿ってどんなだろうってふと…」
言いかける言葉を遮るように口づける。
「いつか見せてやるよ、おれのもう一つの姿」
ふっと笑ってそう言うと、ティーグはもう一度セルカに口付けた。

人間は寿命は短いが、その分何度も転生を繰り返す。
いつかセルカが自分をおいて逝ってしまった時には、また生まれ変わってくるのを気長に待つ事にしよう。
何度転生を繰り返しても、きっと自分にはセルカの事がわかる筈だし、セルカも自分の事を思い出してくれるに違いない。
セルカの細い体を抱きしめながら、ティーグはそう心に決めた。


おわりです。
長々お付き合いいただき、ありがとうございましたm(__)m

アバター
2012/06/29 20:20
ジュンさん、今晩は。
一気読みありがとうございました♡
そうなんですよね。しかもセルカだけが老いていくと言う残酷さ^^;
いつかジュンさんが書かれたように、不老不死の薬でも探しに行かせるべきかもしれません。
楽しんでいただけて良かったです(^-^)
アバター
2012/06/29 09:43
ということは・・・いつか2人に別れが・・・いくら転生しても・・・寂しよね・・ティーグは・・・。転生したセルカを探す旅に出ることになるのかも・・・。続きを期待してますわ!。安奈さん、ティーグとセルカの世界観というか個性がよく表現されていて、想像できて、とっても楽しめました~。
アバター
2012/06/24 19:33
♪~Rin~♪さん、今晩は。
これまでお付き合いありがとうございました^^
ティーグのもう一つの姿は、白地に銀の縞のトラさんです。
ティーグの名前の元は、ラテン語でトラを表す『ティグリス』からとりました^^
>凄そう
その辺は、やっぱりティーグが加減するのではww

シフォンさん、今晩は。
ここまでお付き合いありがとうございました^^
>最初から
そう、実はそうだったんです。セルカ自身も気づいてませんでしたがw
ティーグのもう一つの姿を見てセルカが、「ティーグさんて、トラの姿の方がかっこいいですね」と
朗らかに言い放ち、ティーグが地味に落ち込むと言う場面も本当は入れたかったんですけど^^;

みゆさん、今晩は。
ここまで読んでいただき、ありがとうございしまた^^
愛があれば、寿命の差なんて! ですよw
満足していただけて良かったです♡

みなわさん、今晩は。
長いことお付き合いいただき、ありがとうございました^^
結局、トラの姿に変わる機会がありませんでしたしね^^ゞ
みなわさんは、生まれ変わったら鳥になりそうな気がしますね。
同じ文鳥でも、自由に空を駆け廻る野生の文鳥じゃないでしょうか?

ゐ故障中さん、今晩は。
いえいえ、こちらこそ。『ノーマル』なのにここまでお付き合いいただいてありがとうございます^^
と言うか、なんでそんな専門用語をご存じなんですか?(ちなみにティーグの方ですよ)
実はノーマルと言うのは仮の姿とか。あんな画像大事に保存してましたしw
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2012/06/24 16:09
長期連載ごくろうさまでした。
どっちがタチなんでしょうか…
日替わり?www
アバター
2012/06/24 08:38
ティーグの本当の姿が見たかったな~(笑)

生まれ変わってもまた必ず出会う…いいな~^^

そんなことを思えたのは文鳥の『チビ』と『シーちゃん』と『ほっぺ』だけだわ…今度生まれ変わったら、
私が文鳥になるのかも…^^:
アバター
2012/06/24 06:30
よかったね~(*´ω`*)モキュ
ずっと待つってせつないけど愛だね~❤
満足しましたww
アバター
2012/06/23 23:08
良かったです^^
最初から二人は両想いだったんですね~。
末永く(転生後も)お幸せに!
ティーグさんは変身してもカッコよさそうですし。
モンダイなしですね。
アバター
2012/06/23 20:35
外見より中身ですよね~・・・(*・ω・)(* -ω-)(*・ω・)(*-ω-)ぅんぅん
<愛>だわぁ~~♪
ティーグのもう1つの姿が気になりますが・・・きっと人間の姿より美しいんでしょうねw

どうでもいいことですが。
妖魔のアレは凄そうなので、セルカの体が心配です。(笑)



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