「忍者物語」子供編9夕奈の初めての一座旅
- カテゴリ:30代以上
- 2012/06/17 16:10:26
コーデは夕奈
八郎の入れられた小屋から、
お美津に訓練されている二人の姿が見えた。
二人が石つぶてで止まっている鳥を
落とす所を八郎は見ていた。
お涼が八郎に鳥の死骸を見せて
「今夜の粥には拍(鶏肉)がはいるぞ。
お前は栄養をつけて早く一人前になれ」と言った。
9歳の女の子は稲と言った。
折れそうな位細い腕をしていたが、
逆らうでもなく、
最初の農家小屋でおとなしくしていた。
お涼と夕菜は定期的に
家畜小屋に入れられた小さい子を
便所に連れて行く役を任された。
彩夜も言われたが、彩夜は汚いから嫌だと言った。
昼間はトイレに行かせると
川に連れて行って水をかけて洗った。
川の水は透き通って泳いでいる魚は勿論、
下の石粒が見えた。
お涼達は其の中から石つぶてになりそうな石を
着物の袖に入れた。
次の日は子供好きのくノ一の一人の
桔梗とお涼達が一緒に米のとぎ汁で
全員の体を何度もすすいだ。
勿論着いた時に新しい服を着せたが、
稲と八郎以外はすぐに小便と糞にまみれた。
何度か着物を取り替えて夜中も
全員を一度便所に連れて行くと
何とか、便所が解って来たようだった。
毎日汚れた藁と蓆を
取り替える必要もなくなったが、
相変わらず3人とも一言もしゃべらない。
飯も男達が通ると椀をほおりだして
震えて泣き出す。
畑泥棒をして捕まった子供が
薪で殴られた様だ。
大けがをしたその子は
寺に引き取られたが
目が片方見えくなった。
其の為に寺に残る事を
自分から望んだ。
唯、其の様子を見ていた
小さな女の子達に取って
大人の男は恐怖の対象だった。
仕方なしに葵が3人を
部屋に連れて行って、
お涼と一緒に飯を食わせた。
やがて、夕菜も自分の椀を持って来たので、
一人ずつ、膝に乗せて食べさせた。
ひと月後には、お涼と夕菜が膝に
乗せられない程 重くなったので
隣に座らせて食べさせた。
夜は相変わらず家畜小屋に
お涼と夕菜が言って便所へ連れて行ったが、
昼間は自分達で行ける様になった。
体をコメのとぎ汁と川の水をかけて濯ぎ
何日かすると、ごわごわだった皮膚が
何とか皮膚に見える様になった。
そこで葵とお涼と夕菜で本格的に
手拭いにはい汁をつけて頭から擦った。。
ぬるま湯で何度か濯ぐと
やっと人間の子供になって来た。
そこで、また新しい着物に着せ替えて、
葵が6歳の3人の女の子を
自分の部屋に引き取る事にした。
一緒の部屋のお美津がまた仕事に出て
空いたからである。
大きな仕事が入ったらしく
男達の人数も減った。
稲と八郎はお涼と寛太の最初の頃の様に
家畜小屋の屋根裏に住まわされた。
お涼も夕菜も彩夜も13歳になっていた。
また彩夜と一緒に踊りの練習が始まった。
お涼が踊りを褒められた其の日に事件が起きた。
お涼の布団の中に虫が大量に入れられていた。
お涼は葵の部屋に行って、
寝る前に子供を便所に連れて行っていた。
夕菜がお涼の布団から虫が這い出して来たので
其れを潰そうと布団を剥いだ時に
一斉に虫が飛び出てきた。
夕菜が悲鳴を上げた。
部屋中に虫が飛び交う。
何事かと男達も女達も集まって来た。
粗方、虫を外に出た頃に
お涼がびっくりして突っ立っている。
夕菜は顔を真っ赤にして、
大人達のいる部屋の戸の前に立つと
「失礼します。夕菜です。お話があります。」と
大きな声で言った。
夕菜は虫の中には刺されば命に係わる虫も
居た事を上げて、
命の保証が得られないのなら、
此の村を出ても同じ事ですから
この村に居たくありませんと言った。
流石に彩夜が長にひっぱたかれた。
もともと目に余る彩夜のお涼に対する行為は
大人で知らない物はいなかった。
夕菜は彩夜と同じ部屋は安心して寝れないと言った。
彩夜が村長に促される様に「もうしない」と言っても
頑として夕菜は「嫌です。」と言い張る。
村長がもうこれで済んだ事だと怒鳴っても
夕菜は顔色一つ変えず、
正座をして座り込んだままだ。
殺すなら殺せと言わんばかりである。
お隅が割って入った。
桔梗に夕菜をお隅の部屋に連れて行かせると
他のくノ一達も加わって、
夕菜の三味線や大道芸の実力があるし、
これからも使えると、それぞれ大人になって来て、
我が出て来る頃だとか、村長の顔を立てながらも、
村長の判断でという形で
3人が別々の部屋で寝る事になった。
お隅が夕菜を引き受けて、
夕菜を説得して何とか村長に
「出過ぎた事を致しました。」
言って頭を下げさせた。
そう言う事の必要性を覚えて行くのも
仕事の内だと教え込んだ。
彩夜は踊りを教えてくれている
くノ一と一緒の部屋になりたいと
父親の長に言ってそうなった。
葵の部屋には6歳の子供が既に入っているので、
元の部屋はお涼が当面一人で使う事になった。
其の内、稲が後1年もしないうちに
其の部屋に入るだろうと言う事で収まった。
やがて、寛太を連れていた芸人一座が戻ってきた。
其の間の事情を聞いて色々判断したお楓達が夕菜を
次に連れて行かれた。
お隅が精鋭と一緒の仕事に入れられた。
此れは多くの人の前で村長に還元したお隅への長の
仕打ちだと夜音はお涼に言った。
夕菜が其れをされるのでは無いかと
直ぐに旅芸人一座の仕事に出したのは
貴重な若い三味線弾きを
失いたくなかったからである。
夕奈が旅に出てから、
寝る前に二人で行った外の女便所に
お涼は一人で行った。
その間にお蔦の家が在る。
いつも明かりがついているので
便所まで明かりを持たないで行けた。
「お涼」と中から声がした。
「其処に干してある糸を持ってきておくれ」と
言われた。
廻りを見渡すと手の届く所に糸の束が
干してある。
まるで戸が開いていて見ていたかの様だ。
お涼は糸を取るとそっと戸をあけて
中をのぞいた。
土間が在ってすぐ板の間が在り
其の真ん中に機織り機が在る。
リンリンと鈴がどこかでなった。
「夜回りが始まったか」とお蔦が言った。
お涼はお蔦の手の届きそうな所へ
糸を持って行く為に土間に上がろうとした。
お蔦はお涼を見ないで言った。
「其処に置け」
お涼は板の間の上に置くと
すーっと上から縄が降りてきて
その先の結ばれて居たかぎ針が
糸を引掛けるとそのまま上がって行った。
其の糸が斜めに下がってお蔦の膝にぽとんと
落ちた。
お涼はぽかんと見ていた。
「お前に良い物をやろう」と
お蔦は言った。
手の横の鈎のついた棒で吊るされた居た何かを
ひっかけて取るとぽんと投げてよこした。
「股の間に挟んで両股で
押さえつけるのじゃ」
「儂の子供の頃のじゃ、
今のお前に丁度よかろう。」
そう言ってお蔦はお涼を見た。
其れは両股に挟めてばねの力で股力を
付ける訓練をする木で作られた物だった。
お涼は其れを手に取ると一礼をして
外に出た。
其れと同じ論理で、相手が締め付けられて刀を
取れない一瞬のすきに隠してあった小刀で
首を斬ります。
何の最中に首の動脈に簪を指すより
確かです。
毒でも縫っていたとしても
痺れ毒ですから、
動脈を切らない限りすぐに殺せません。
その前に気が付いた男に切られれば良くて相打ちです。
人は切られても簡単に死にません。
相手が鍛えられた男だと
簪を抜く時に見つかったらおしまいです。
股に挟んで動きを止める方法も
刀の方に手を伸ばせないで挟んだ股から逃れて刀を取る前に
隠していた小太刀で首を斬ると言う方法です。
お蔦は子供の時から訓練された忍者です。
ちょうどお涼が使うのに良いと思ったのか、
其れともお涼に今必要と思ったのかは謎です。