新世界より
- カテゴリ:小説/詩
- 2012/06/17 08:07:38
ドヴォルザークの音楽のブログを書きたいのではありません^^
貴志祐介さんの小説「新世界より」のほうです。今月、読了しました。
小説の中にドヴォルザークの音楽「新世界より」も登場します。
まだ読んでいない人のために、あらすじを紹介。
呪力を手にした人類の1000年後の世界が舞台。この世界では、文明が技術的に退行し旧来の社会体制は崩壊しています。
呪力保持者は、世界を滅亡させかねなかった一員でもあるため、ある特定の年代になるまでにスクリーニングが行われ悪鬼や業魔となりそうな人間を除去する社会となっています。
悪鬼とは、先天的に人間を殺すという攻撃抑制が機能しておらず、同種である人間への攻撃をなんの躊躇い無く行い殺戮の限りを尽くす存在。
業魔とは、パニック障害に類似した事象が脳内で起こり、呪力が周囲へ漏出して生物、無生物問わず周囲のものに甚大な影響を与え異形化させてしまう存在。
そして下世話な仕事はバケネズミと呼ばれるものたちが従事することで、一見理想の社会を維持しているように見えます。
呪力による生殺与奪権をもつ人間は彼らから神様とあがめられますが、このような社会に疑問を持ったバケネズミと人間との戦いが起こってしまいます。
フランスの小説家ピエール・ブールの「猿の惑星」や人類が2系統化してしまうH・G・ウェルズの「タイムマシン」を連想させるところがあります。
ところで呪力を持った人間は二通りの行動パターンになると思われます。
第一のパターン:ひたすら能力を隠して一般社会に溶け込む
第二のパターン:力を利用して利益を得る
後者の存在は、中世における魔女同様大多数の市民に異形の能力の恐怖を与えます。
その結果、一般人はこの能力を持つ人間を滅ぼそうとします。
それが成功しなかった場合は・・・
この小説では、人間を絶対的に守るために設計された完全な新世界で起こってしまう非人間との戦争という悲劇を描くことで、過去に人類が繰り返してきた差別や戦争、社会改善の根本と暗く静かにつながります。
人間と非人間の境界は明確なようでいて実際は曖昧であり、異質な非人間の権利に対する鈍感さや冷酷さが実は悲劇を連鎖させていくことを言いたかったのでしょうか。
この「新世界より」は、テレビ朝日でアニメ化されるようですが、単なる冒険アニメになりそうな気が・・・
「悪の教典」は、そのうち読みたいと思っています。
『新世界より』 も読んでみたくなりました^^
今、ドラマやっている鍵のかかった部屋の原作も読みたいな~
共存は、人間の嫉妬心や虚栄心などがなくならないと難しいのではと思います。
持てるものと持たざるものの差が実在して、持たざるものがどんなに頑張っても得ることができないとなると、持たざるものは持てるものを羨む。そして恨む。その結果、時に凄惨な暴力を引き起こす。
普通の人たちは、呪力を持った人たちを活用して問題解決する、
そんな形の平和共存って、できないものかしらね~。
アニメ化されるなら、見てみたいです。
小説の世界が、どんな形で表現されるか興味あります~。